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02.【虹色キャリアを描く】 キャリア発達理論/スーパー

キャリコン試験の必出学者の一人、ドナルド・スーパー。それまで「人と職業のマッチング」が主流だったキャリア理論において、彼は「人のキャリアは生涯発達し続けるもの」と考え、「キャリア発達理論」を確立しました。本記事では、スーパーの考え方の基礎となる部分を解説いたします。

目次

▼私は私をどう捉えているか?
▼ライフキャリアレインボー
▼まとめ


▼私は私をどう捉えているか?
スーパーのキャリア発達理論の中心には、「自己概念(自分自身をどのように捉えているか)」という考え方があります。

スーパーは「個人の行動は、その人の自分自身に対する認知と自分の置かれている状況に対する認知、および個人が自分の世界を解釈する仕方によって規定される。」と考えました。
つまり、私たちが自分をどう思っているかは、自分が主観的に築いてきた【主観的自己】と、他者からの客観的な意見や指摘を取り込んで築かれた【客観的自己】が重なり合って形成されるというのです。

ここで注目すべきは、自己概念は主観と客観の両方で形成されるのだという点。
私たちは、一人一人が生まれ育った環境、関わりあってきた人、社会構造、色々な外部要因などに影響されて作られた「色眼鏡」をかけて生きています。だから、一つの同じ事実に対しても、捉え方が一人一人違ってくる。ついつい自分のことは自分が一番分かっているように考えてがちですが、自分自身が持つ自分のイメージだけでは、自分を捉え切れないのですね。

そして、自分の身を置く環境や自分の経験値などが変われば、それに応じて自己概念もアップデートし続けていくのです。

スーパーは「キャリア発達は、自己概念の実現過程である」を述べています。そして、自己概念にかなう方法で働けるような職業を選ぶことが大切だと言いますが、そのためには、肯定的自己概念を高めていくべきだと指摘します。

「肯定的自己概念」とは、自分に対する肯定的な認知のことを指します。かみ砕くと「自分の良いところ」ですね。

では、どのように肯定的自己概念を高めるのか?

スーパーがお勧めするのは「他人からフィードバックをもらうこと」だそうです。ここでまた「客観的自己」が活躍するのです。

自分は当たり前だと思ってやっていた行動を、ふと他人から褒められて「あ、これって自分の長所なんだ」と気づくことってありますよね。これは、客観的自己を自分の中に組み込んで、自己概念をアップデートするプロセスの一例と言えます(ここではアップデートにより肯定的自己概念が広がりました!)。

キャリアコンサルタントとして、目の前の方が肯定的自己概念を醸成できるような支援って、そういう意味ではとても大事なことなのだと感じます。

▼ライフキャリアレインボー
スーパーと言えば最も有名なのが「ライフキャリアレインボー」。人の人生を「虹」に例えたこの理論は、私たちに示唆を与えてくれるだけでなく、前向きな気持ちにさせてくれます。

スーパーはキャリアを「長さ」と「幅」の観点から捉えました。
そして、「長さ」はキャリアの段階を表すライフステージ、「幅」はキャリアにおける役割を表すライフロールと定義づけます。

ライフロールは「人生における自分の役割」と置き換えて頂けると腑に落ちやすいかな、と思います。
スーパーは、私たちが一生を通じて果たす役割を「子ども」「学ぶ者」「余暇人」「市民」「働く者」「配偶者」「家庭保持者(家事炊事や家周りのお仕事を担うことを指します)」「親」「年金受給者」の9つに分類しました。

この図を見ると、キャリアが単に仕事の連続ではなく、その時々の年齢や場面における、様々な役割の組み合わせで成り立っていることがよく分かります。

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▼まとめ
振り返ると私自身、20代前半の頃、キャリアにおける成功=仕事における成功と考え、そればかりを追い求めていて、その他の全ての役割は完全に蔑ろになっていました。

もちろんある時期に仕事をがむしゃらにするって、それだけ主体的に仕事に打ち込める情熱があるということで、それ自体はとても意義深いことであると思います。
ただ、根っこの部分で、ライフキャリアレインボーの概念を持っておくことは重要ではないかな、と考えます。この理論を通じて「自分にとっての拠り所は一つではない」という感覚を持つことは、私たちにとってリスクヘッジにもなるのかもしれません。

仕事をする自分だけに価値を置いて生きていると、仕事でうまくいかなくなった時、仕事上で自分のキャリアに悩んでいる時、他に行き場がなくなってしまう気持ちに陥りやすいのではないでしょうか。
そんなとき、子どもとして親に話を聞いてもらう、市民として自分が得意なことでボランティアをしてみる、そんなことが気軽にできる環境にいると、救われることも多いように思います。

虹の描き方は人それぞれですが、一つの色だけで一生を描ける人なんていないのだと、スーパーは教えてくれました。

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