見出し画像

夏の夢

打ち上げ花火の一瞬の光が、彼の横顔を照らし出す。
銀色の前髪。見慣れたはずの横顔は、やけに白く、知らない空気を纏ってまた闇に消えていく。
赤い隈取りの施された目元に、長い鼻梁と薄い唇が、まるでさっき屋台の隅で見かけた狐面のようで、私は闇の中で瞬きを繰り返した。
再び、乾いた音と共に空高く打ち上げられた花火が、私達を照らし出す。
黒い髪、紺の浴衣に光沢のあるグレーの帯。
「どうしたの?」
瞬きを繰り返す私を、その唇が気遣う。
こちらを振り返った彼の顔はいつもの、愛想のない地味な顔立ちの青年のものだった。

読んでいただきありがとうございます! サポートは創作の糧にさせていただきます。 是非、よろしくお願いします。