同人誌印刷をお願いした印刷所まとめ

これまで小説同人誌をお願いした印刷所について雑多に情報をまとめる。垢バレが嫌なので発行した本の写真は載せない。思い出したことがあれば随時追記していく。

【多い本の仕様】文庫/オンデマンド本文印刷/モノクロ表紙/フルカラーカバー(PP加工有)


ポプルス(オンデマンド、ジェット)

( 利用回数:1 )

・インターネット上のフォーム(会員ページ)でやりとりができる。進捗を確認できる。

・カラーに強い。オンデマンド印刷と言われているが、カラーは「ジェット印刷」を使用している。RGB印刷対応の印刷機かは分からないが、このジェット印刷はRGB入稿したデータの色褪せがほとんどなかった。さらに印刷の網点が目立たずとにかく綺麗。カラー印刷の黒がイエロー寄りに感じた。

・製本がかっちり。カバー巻きは機械なのか、驚くほどしっかり折り目がつく。カバーだけで一冊本の数を誤魔化せるレベル。

・波打つ、というイメージとは違うが本全体が弓なりに反る。

・本文用紙の淡クリームキンマリは黄色味が強い。コシも強く、平滑性が高い。厚い本に使用すると手が疲れる。本文の使用フォントはウエイトが太め寄りに出る。


しまや出版(オンデマンド)

( 利用回数:2 ※豆本)

・対応が丁寧。表紙含む16Pだったからか、中身の文章校正、体裁の細かな確認までしてくれた。原稿の作り方、入稿の仕方、連絡の取り方などがわからない初めて本を作る人にはここがおすすめ(ってくらい確認してくれた)

・カラーの仕上がりは並のオンデマンド印刷という感じ。ベタ部分の白抜きが気になる人は気になるかもしれない。

・本文用紙のクリームキンマリは書籍用紙と説明に書いてあるが、作ったのがA8の豆本だったためやわらかく捲りやすいかは不明。ただコシが強い印象を受けた。

・文字が太めに印刷される。


プリントキング(オンデマンド)

(利用回数:1 ※フランス製本)

・カラー印刷がオフセットに迫る勢いの綺麗な印刷。本当にオンデマンド印刷か?CMYKのデータのはずだが青が鮮やかで綺麗に印刷されていた(気がする)。

・紙の品ぞろえは同価格帯のポプルスよりも多い。本文用紙にはコミック紙を使ったが、書籍用紙70kgもある。書籍用紙は薄いし捲りやすい。ここのコミック紙は少し固めに感じた。べタがテカらない。波打ちもしない。本当にオンデマンド印刷?

・フランス製本は、表紙の折り返し部分に2枚の遊び紙のうち1枚を巻き込むため、上製本のような感覚を楽しめる。また遊び紙を巻き込むため、遊び紙はすべて小口側が数ミリ短く裁断されている。

・製本がかなりしっかりしている。

・本を10~11部ずつくらいに小分けにし、さらにPPフィルムでパッキングしてダンボールに詰めた状態で会場に搬入された。ここまで丁寧な搬入は見たことがなくて驚いた。また、PPフィルムの内側に何部の塊かを記したカードも入っているため在庫管理に重宝した。本当に。ただ大きいダンボールに全部詰めてくるので腰を痛める。

・印刷すると線が細くなりがち、という評価を見かける。たしかに細い。明朝体によってはウエイトの太いものを選ぶ必要がある。

・資料請求すると三種類の冊子が来る。一つが製本・印刷見本。自費出版の流れなどが初心者向けにまとめてある。『文字印刷見本』には何種類かのフォントを使用して組版例が記載されている。少ししか載っていないが、フォントをどれにすればいいかさえもわからない状態から始めた頃は助けられた。

・カートに仕様を入れて注文するという、発注形式が同人印刷所の中でも異色な印刷所。


プリントオン(オンデマンド、デジタルオフセット)

(利用回数:2 ※A5カバーなし&別本のカバー)

・みんな大好き特殊加工の印刷所。レポが多いのにレポをし尽くせない印刷所。私がわざわざ語ることはない気はする。マイページ内に問い合わせフォームがあり、テキストでの連絡が可能。

・カラーは普通のオンデマンド印刷というクオリティ。ただしめちゃくちゃ反る。本棚に仕舞わなければ、わざわざ本全体をブレーキプレスで曲げたのかと思うほど反る。6色印刷が綺麗な仕上がりになりそうで興味がある。

・メタル紙にデジタルオフセット印刷したものは本に巻いていれば反ることはない。カバーのみ発注したときはカバーを丸めたり折ったりせずに納品される。がっちり梱包されていたため「そういえば薄手のベニヤ板を頼んだんだっけ」と思った。

・淡クリームキンマリ72.5kg。上質紙だと思うが表示斤量の割に薄い。文庫で作ってみたことがないのでめくりやすさや手の疲労感は分からず。

・各ページで併用できない加工の説明がなされているが、マイページにはそれが反映されないこともあるようなので加工の併用ができるかどうかは問い合わせるべき。

・余裕があると早めに製本を終えるだけでなく、自宅納品にしていた場合は納期より早く納品してくれる。不在票を入れられるか否か、宅配業者との戦いの火蓋が切られる──。


ブロス(オンデマンド、オフセット)

(利用回数:4)

・カラーは苦手という評判を見るがどういう意図かは不明。AMスクリーンは網点が目立つもののFMスクリーンを指定すれば問題ない。カレイド印刷をオプションでつけたら彩度が高い絵柄の印刷もこなせて満足した。

・淡クリームキンマリ62kgはそれなりに薄い。美弾紙ノベルズはラフな紙ざわりでやわらかく、めくりやすい。ちなみに美弾紙を使うとオンデマンドでもあまり波打ちがない。

・オフセット印刷はオンデマンド印刷のときと同じフォントとウエイトを使用していてもかなり細るので使うものに注意すべき。

・スピン栞は硬めの糸で商業本のものより解れづらいと感じた。解れるは解れる。ベルベットPPはかなりしっとりめ。製本も噂通りかっちりきっちりしている。ただノンブルが動かなかったかはよくわからない。積んでも崩れないのは本当。

・本文と表紙がオンデマンド印刷でも、オプションでつけられるフルカラーカバーはオフセット印刷。たしか自動見積にはなかったが「本文オンデマンド+表紙オフセット」の組み合わせもできる。口絵はオンデマンドとオフセットどちらも選択できる。

・早割で入稿すると翌日とかにデータチェックを完了されてしまう。謎の敗北感を味わう。製造過程はマイページでも確認できるがメールでも届く。

・細かなところまでデータを確認してくれる。少し変わったことをするときは仕様だとあらかじめ伝えておくとあちらに優しいかもしれない。電話に出られなかったときにとても丁寧に状況説明したメールが届き、電話に出られなかったのを申し訳なく感じた。電話対応はもちろんのこと、メール対応でも同等の説明能力があるのはすごい。

・過去の自分へ。特殊紙にマットPPかけるとめちゃくちゃ可愛いが捲ったときの疲労はめちゃくちゃ可愛くないです。覚えておけ。


サンライズ(オフセット)

(利用回数:1 ※中綴じ本)

・かなり厚口のミランダ紙の表紙とかなり厚口のトレーシングペーパーに2色印刷の組み合わせ。トレーシングペーパーがかなり厚いため事前に入手して色味を想像しやすくしておくといいかもしれない。

・本文用紙はコミックルンバ84kgのクリームを使用。軽いが書籍用紙と比べるとコシがある。美弾紙に近い感覚。

・かなりマットなオフセット印刷。


コミックモール(オンデマンド)

(利用回数:7)

・文字の使用フォントはウエイトが細め寄りに出る。

・本文用紙が最高に薄くてやわらかい。書籍用紙クリーム62kgは上質紙70kg相当の厚みがありながらもやわらかい。少しラフで、美弾紙ノベルズのもっと軽くて薄い版だと認識すれば良い。ライト書籍用紙クリーム55kg、50kgは商業紙レベルの薄さとやわらかさで平滑性が高い。透けにくい。

・いつもカバーの余りをたくさんくれる。折り筋までついている(しかも二か所)。たまに本に巻かれたカバーのPP内部に気泡が入っているときがあるのでこれを使って交換できる。再版するときにも使える。

・カバーは標準でコート110kgだが、個人的には非常に心許ない薄さ。多湿だと上下が反ることも。価格は変わらないのでマシュマロ135kgにするのがいいかもしれない。

・カラーの表現は苦手。解像度350dpiで入稿しても網点が目立つ。解像度400dpiで入稿しても大差なかった。だがホログラムPPをかけるとホロの偏光で気にならなくなる。同様の工夫で、キュリアスやシェルリン等の偏向する特殊紙を使用することでカバーできると思われる。

・和紙PP、トワイライトPP、エンボスPP、ジュエルPP(現在取り扱いはないが以前あったらしい)という風変わりなPP加工が楽しめる。ベルベットPPも取り扱っているが、ベルベットPPはオンデマンド印刷した紙に加工すると剥離がひどいらしいとの記事を見たことがあるので使ったことはない。

・背幅を自動で計算し、テンプレートを作ってくれる便利機能がある。便利すぎて「他社のテンプレート使用OK」な印刷所ではコミックモールのテンプレートを使うこともある。このテンプレートには自動で背幅や断ち切り位置にガイド線が作成されるが、ClipStudio製品はこの機能をサポートしていないため表示されない。

・カラー印刷の黒ベタを中心に全体的に印刷がマゼンタ寄り。

・製本に弱いという評価をよく見る。利用当初はまったく意味がわからなかったが「背幅の糊付けが苦手」という意味(3回目で理解した)。表紙に糊が糸引いてたり、表紙と一ページ目の間に余剰がついてたりするものがある。体感、厚い本では起こらず、背幅3mmなどの薄い本で発生する。

・他社利用時と同じ組版で入稿したが、全体的に1mmいかない程度縮小されているかのような印刷になっている気がする。(天地左右の余白が多く、フォントもわずかに小さい)


総評

小説本を作る際は、やはりページ数が嵩むため価格を優先的に考える。そのためオンデマンド印刷になりがちだが、イラスト表紙にするのであればやはりカラー印刷もそれなりにこだわりたい。オンデマンド印刷機も性能は上がってきているようだが、まだカラーのクオリティには限界を感じる。良し悪しで一概にここだとは言えないが、価格を抑えつつも表紙や装丁に少し配慮した結果おすすめするのは「ブロス」だ。早割を使えば、かなり価格を抑えた上で実はこだわったオフセットカラーの本ができる。

とはいえ、私は小説本において「読みやすさ」を二番目に重視しがちだ。本文用紙は薄いかやわらかいか捲りやすいか裏写りしないか。長編になるほど読了までにかかる時間も増える。長時間本を持ち続けるならば手にかかる負担に配慮したい。この点にこだわっておすすめするならば断然「コミックモール」だ。だがこの印刷所はクセが強い。気力があったら別記事でまとめたい。

※利用回数は再販含む

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