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ナナメさん #011 読書家の長尾さん

地方の町で、代々続く家の長男として生まれた長尾さん。様々な職歴を経て、現在は正社員として地元の企業で働いているそうだ。通信制高校を卒業後、フリーターとなった長尾さんは、どのようにキャリアを築いてきたのか。バイタリティあふれるお話を聞かせていただいた。

読書家の長尾さんのプロフィール

・34歳・男性・兵庫県姫路市出身

・通った学校について
 日本航空高等学校 通信制 普通科
 デジタルハリウッド オンラインスクール

・部活動
 中学校:バレーボール
 高 校:通信制で部活がなかったのでバンドでボーカルをやっていた

・好き(得意)だった教科:国語・保健体育

・嫌い(苦手)だった教科:算数・社会など暗記系

・卒業後の略歴を教えてください
1.高卒
2.フリーター(パチンコ屋・ゲームセンター・居酒屋など)
3.家電量販店 販売スタッフ
4.Web系派遣スタッフ
5.ネットショップ店長
6.フリーランサー(Web制作しながら職業訓練などの講師業)
7.5と並行してベンチャー法人の役員(常務取締役)を兼任
8.会社員(一般社員)

・現在の家族構成:祖母・父・母・妻・娘1人・息子1人

・趣味:読書・Twitter・会食

・休日の過ごし方:主にワンオペ育児

・好きな音楽:ヘヴィメタル・テクノ・ハウス など

・おすすめの本
世界の哲学者に人生相談 スペシャルエディション(高田純次・小川仁志)
白いネコは何をくれた?(佐藤義典)
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(岩崎夏海)

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通信制高校を選んだ長尾さんの、一味違う高校時代とは

――本日はよろしくお願いします。早速ですが、高校は通信制をお選びになったんですよね。なぜ通信制の高校にしようとお決めになったのですか?

通信制を考え始めたのは中学3年生の時でした。勉強自体がすごく苦手で、特に数学は受験勉強の段階で「もうこれ以上ついていける気がしない」と感じてまして。
そんな時に、ある通信制の学校からダイレクトメールが送られてきたんですよね。調べてみるとその学校は単位制を採用していて、数学がダメでも他の教科で単位を取れば卒業できるシステムだった。高校卒業の資格は欲しかったので、これだ!と思いましたね。

――通信制の高校に行きたいと言った時、親御さんの反応はいかがでしたか?

うちの両親はもともと、放任という程ではないですが「基本的に本人の意思に任せる」というスタンスだったので、特に反対はされなかったですね。学校説明会に参加したり、変な学校じゃないかどうか調べたりはしたみたいですけど。

――通信制の高校では授業はどのように受けるのですか?

僕の場合、授業はオンラインや、家から通えるところにある「サポート校」の授業に出席する形で受けていました。本校は山梨にあるんですが、一度も行ったことないんですよ。スクーリングも関西で開催されてましたし。出席と、レポートやテストで単位が認定されるシステムでした。

――時間の使い方は、一般的な高校生と比べてどうなるのでしょうか。

全然違いますね。ほぼ自由です。単位に必要な分だけ出席してればあとは何をしてても自由なので、僕はバイトしながらバンド活動をしていました。
バイトに使える時間も多いので、ある程度まとまった金額が稼げるようになってすごく嬉しかったですね。バイト代は楽器や機材を買ったり、スタジオを借りたりするのに使ってました。

――バンドをやりたいと思っていたんですね。

中学校の頃からギターを弾いていて、これでもう少し遊びたいなと思っていたんですよね。19とかゆずとかが流行っていた時代で、僕もそこから入ったんですけど、気づいたらヘビーメタル歌っていました(笑)

――アルバイトはどんな仕事だったんですか?

高校の時は工場のラインで働いていました。学校の授業に合わせてシフトを出せるので都合が良かったんです。高校生の頃はそれなりに楽しくやってたんですが、ひたすら同じ作業を延々と続けるというのは元々あまり向いていないので、今はもうやりたくないですね…

――その頃は将来についてどんな考えを持っていましたか?

具体的なことは全く何も考えてなかったです。早く社会に出たいというだけで、その後のことはそれから考えようと思っていましたね。
ただ、最終的には実家を継ぐことになると分かっていたので、自由になるうちは自由にしたいと思っていました。何でも経験したい欲が強いので、高校の時はバイトでがっつり稼ぎましたし、外でひとりで暮らした経験がないまま終わるのは嫌だったので卒業後は家を出ました。

20歳で考え始めた、これからの生き方と働き方

――高校を卒業されてからは、どんなお仕事をされたんですか?

しばらくフリーターをしてました。パチンコ屋やゲームセンターなんかで働いていましたね。当時は非正規雇用というのが世の中に浸透してきた時期で、僕の周りにも派遣社員やフリーターがたくさんいたんですね。バンド仲間にもフリーターが結構多くて、自分もフリーターになる事に抵抗はなかったですね。当時は自分の都合で休みを取ったりできることの方に、よりメリットを感じていましたし。

――そんな生活が変わるきっかけになったことは?

二十歳を越えた頃からバンド仲間が結婚し出したことで、自分も結婚を意識するようになったんですよね。バンド仲間には年上が多かったのですが、自分としては「友達がどんどん結婚していく」感覚でした。「ゲームセンターのバイトの人」では結婚はできないよなぁと思って、どうするか考え出した感じですね。

――そしてお選びになったのが家電量販店ということですか?

そうです。ずっとそこで働くつもりはなかったんですけど、とりあえず「何かを売った経験」だと思ったので。新しくオープンする家電量販店の準社員として働き始めました。初めは倉庫に配属されたのですが、自分としては物を売る経験をするために行ったわけなので、早く売り場に出してくれ出してくれと言い続けて、出してもらいました(笑)

――それで売り場ではいかがでしたか?

とてもいい経験になりました。お客さんと直接話をして金額交渉までするという経験は、今のキャリアのベースになっていると思います。

――そこではどれくらいの期間働かれたのですか?

一年くらいですね。働き始めてから半年くらいして、「このキャリアをベースにどこに行こうか」と考え始めて。会社員として働くなら伸びている産業に入りたいと思い、IT関係の就職に有利になるよう、デジタルハリウッドのオンラインコースでホームページの制作などを学びました。

派遣から店長業、そしてフリーランスへ

――技術を身につけられたわけですが、就職はうまくいったのでしょうか。

正社員での就職はなかなか見つからなかったんですよ。あまり景気がいい時期ではなくて、未経験者がいきなり正社員で雇ってもらうのは難しいと感じました。それならとにかく実績を作ることを優先しようと、派遣スタッフとして働き始めることにしました。

――派遣でのお仕事はいかがでしたか?

待遇的には結構よかったと思いますよ。それ一本で生活できるくらいの給与はありました。
その派遣会社はネットショップを得意にしていて、僕も派遣先でネットショッピング用のホームページの制作や商品管理を担当しました。そこでも家電量販店で物を売っていた経験が役に立ちましたし、倉庫にいた経験も物流というものをイメージする上で大きかったですね。

――IT業界でのキャリアがスタートしたわけですね。その後はどうなさったのでしょうか。

とある建築会社が、ネットショップを開設するにあたって求人を出していたんですね。仕入れた建築資材を自分が使う他に、販売もしようということで。たまたまその求人を目にして応募して、採用していただきました。そこでも販売の経験は役立ちましたし、楽天に出店していたので、楽天の中の人と人脈ができたというのがよかったですね。勤め先が楽天の神戸支社と近くて、近所のコンビニで顔を合わせることや、一緒にご飯を食べに行くこともありました。

――それは貴重な経験になりましたね。

そうですね。フリーランスで独立するときに、楽天の社員さんからお客さんを紹介してもらえたりもしましたから。

――素晴らしい…!その後フリーランスとして独立された経緯を教えていただけますか。

独立を考えたのは24か25くらいの時でした。結婚を考え始めた時で、それなら地元に戻って独立しようかと。楽天の社員さんからお客さんを紹介してもらえたことなど諸々の準備が整ったこともあり、地元で独立開業しました。

フリーランス時代に築いた、確かな経験と人脈

――開業当初からうまくいきましたか?

実家に戻って家賃がかからない状態で開業したので、結構ギリギリではありましたが食べるのに困らないくらいの収入は得られていました。結婚して一年くらいして子供も生まれて、今思えば不安定ではありましたが。

――仕事の内容としては変化はあったのでしょうか。

幅広く、色々な仕事をするようになりました。「自分はWeb制作しかしないんで」とか言ってたら仕事が来なくなってしまいますからね。自分にできそうなことなら何でもやりました。
それから営業や会計なども自分でやらなくてはいけないので、フリーランスって大変だなと実感しました。
特に苦労したのは営業ですね。僕の場合は、色々な集まりに顔を出してお友達になって仕事をもらう形でやっていたので、交流会とかめちゃくちゃ行きました。相手の印象に残ることが大事なので、インパクトのあることやろうと思って、ガチャピンの着ぐるみを着て参加したことも何回かありました。

――すごい度胸ですね…!そういうのはためらわずに行動に移せるんですか?

そうですね、多少緊張はしますけど、必要だと感じたらやります。気が向かなくてもやったほうがいいと判断すればやりますし。その辺はある程度割り切りができてると思います。

――すぐに行動できるんですね。私は結構グチグチ考えてしまって動けなくなるんですけど…

僕の周りにはそういうタイプの人も多くて、そういう人が止めてくれるのでうまくバランスがとれているんだなと感じてます。

――そういう人たちにとっては、長尾さんの行動力が背中を押してくれることもあるんでしょうね。

そうかもしれませんね。ある程度持ちつ持たれつなところはあるかと思います。

――ベンチャー企業の役員をするようになったのも、そういう繋がりからですか?

はい、交流会で会ったことがきっかけでした。あるサービスを立ち上げるためのウェブサイトの開発をしてほしい、と声をかけてもらえて。
その後、その事業が軌道に乗ったので、そちらに注力しようと思って個人で受けている仕事をかなり減らしていたんですが…

――何かあったのでしょうか?

代表の個人的な事情から会社が解散してしまったんです。これは困ったと思っていたところ、別の交流会で縁のあった企業から、エンジニアとして来てくれないかと話があって。それで今の会社に入ったんです。

ついに理想の環境を実現。今後に向けて思うことは

――窮地から一転、よかったですね!フリーランスから会社員に変わって、どのようにお感じですか?

やはり安定していると感じますね。収入としても今が一番高いです。フリーランスの頃は収入の振れ幅が大きかったですから…。経費もかかりますし、人脈を広げるための出費もありましたし。
それから営業や会計事務は会社に任せて自分の得意なことに集中できるという点も、ありがたいと思っています。

――安定とやりがい、両方を手に入れられたわけですが、今後の展望は。

フリーランスに戻ることはないだろうなと思います。会社勤めを続けながら、個人としても発信していけたらと思っています。

――「読書家の長尾さん」としてですか?

そうですね。子供の頃から本が好きで、色々なジャンルを読んできたのですが、最近は行動科学や哲学など、人間に関するものをよく読んでいて。人間について知ると、一見不条理なことにも納得がいったり、仕事でもマーケティングへの理解が深まったり、色々な面で気づきがあるんです。
そうやって得てきた知識を人に伝えるようなことは、やってみたいと思いますね。

独立開業に興味のある人へのアドバイス

――なるほど。これまで色々な経験をされてきたわけですが、振り返って「これは失敗した」と思うことはありますか?

フリーランスをやってる時ですね。もうちょっと楽に稼げないかと思っていたところ、「フィルムカメラを海外に輸出する」というビジネスがあると知って、セミナーを受けに行ったんです。結構高い受講料を払ったんですが、やってみると話と違って、全然稼げないんです。今思えばよくあるセミナービジネスだったんですが、見事に嵌められてしまいました。

――やはり、初めのうちは分からないものですか。

そうですね、やっぱり夢見ちゃいますよね。今だとユーチューバーになろうとか、ブログとかアフィリエイトに関するセミナーで騙されるケースも多いと思いますので、気をつけて欲しいですね。

――そういうものに引っかからないようにするためには、どうしたらいいのでしょうか。

まず即決しないことですね。あとは誰かに相談する。自分一人だといい面しか見えなくなってしまうので、他人の意見にきちんと耳を傾けることが、騙されないためには必要だと思います。

――フリーランスという働き方に魅力を感じる人も多いと思いますが、経験者として、独立する際の注意点などがあれば教えていただけますか。

独立開業する人って、大体僕みたいなタイプが多いと思うんですよね。エイヤ!と行動しちゃう。失敗する事なんて考えていない。「失敗することを考えてたら成功できない」みたいな精神論もあるくらいですからね。でも本当にそれをやっちゃうと、失敗した時に借金で首を吊ることになってしまう。
そうならないためにはどうしたらいいかと言うと、まずはいきなり開業しないで、小さく始めることです。会社勤めなどで安定した収入がある状態を作って、その収入の中から投資に回せる分を捻出する。それを原資に、副業としてビジネスを始めてください。そうすればリスクの少ない状態で自分のビジネスの可能性を測ることができます。

――なるほど、小さく始める。

それに、独立すればお客さんを集めたりお金の管理をするのも全て自分になりますから、そういうことまでできそうかどうか、試すことができる。
今は飲食店の休業日に他の人にお店を貸すシェアリングサービスや、個人が作ったものを販売するフリマアプリなんかも用意されていますから、そういうものを賢く利用して、自分のビジネスを育てていくのがいいと思いますね。

――実感のこもったアドバイス、ありがとうございました。長尾さんの一層のご活躍をお祈りしています!

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地方出身の学生や若者は特に、実家を継ぐことを考えて「やりたいことへ真っすぐに進めない」と感じている人も多いだろう。
周囲からの期待を背負った上で、自分のやりたいこともやる。長尾さんのチャレンジにあふれた生き方は、そんな人たちの背中を押してくれるかもしれない。

長尾さんのTwitterはこちら。

https://twitter.com/wildwest_kazya



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