To a God Unknown
Kindle版スタインベック全集の3個目、単行本では1933年初版発行。邦題は「知られざる神に」となっています。あまり面白くはありませんでした。でも、興味深いです。
時代は20世紀のはじめ、主人公ジョセフ・ウエインは自分の土地を求めてカリフォルニアへやってきます。死んだ父親の霊を宿すと見た大木の下に家を建てて、牛を飼います。やがて兄弟も呼んで大農場を経営するのですが、干ばつに襲われ、山の清水が枯れると同時に自分も死ぬというお話です。
西部劇みたいなドンパチはありません。主人公は土地、というか自然に神性を感じている人です。山や木や岩を神として祭る日本人の一人として、ボクはそれほど無理なく読めました。
妻が死んだのは、神様の宿る岩に登ろうとしてバチがあたったということでしょう。当然ですね。これをジョセフがそばにいて止めなかったのが不思議です。強烈な個人主義というか個別主義を感じます。
近くの村の教会はカソリック。村人がジョセフの農場に来てお祭り騒ぎをします。彼らが神父の作ったマリアの像を拝むのを、ジョセフの兄弟はプロテスタント(?)なので、偶像崇拝だと言って嫌い、納屋に閉じこもって出てきません。ジョセフは父の霊を宿す木を拝むので、この両方から異端だからやめろと言われます。折伏ですね。ジョセフは気にしません。
ジョセフの自然崇拝とボクたち日本人のアニミズムと、前者が個人主義である点が決定的に違います。岸田秀の受け売りをすれば、自己放棄の衝動は神にだけ向け、人には向けずに独立しています。ジョセフは自分の息子にも執着しません。唯一、山の海側に居た隠者とは交流できました。最後に、ジョセフが神の宿る岩に登って手首を切ったのは自己放棄の完結と見ます。
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