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The Outcasts of 19 Schuyler Place

 カニグズバーグの14冊目。邦訳版の題名は「スカイラー通り19番地」。2004年の作品です。この15冊Boxセットも残るはあと1冊となりました。

 物語の語り手はマーガレット・ローズ・ケイン。そうです。前作のSilent to the Boneの主人公コナーの腹違いのお姉さんです。しっかりした頼れるお姉さんでした。このお姉さんが、自分の12歳の時の出来事を語ります。前作の続編ではありません。テーマも異なります。


 ボクのこの年頃には(これらのカニグズバーグの作品の対象年齢とされる10〜14歳の頃には)、とてもじゃないですがこんな高等な物語を読む実力も気力もありませんでした。もちろん日本語で、です。中学生の頃に読んだのは国語の教科書くらいでした。あとは漫画です。
 高校生になって、やっと大藪春彦や平井和正や豊田有恒や司馬遼太郎を読み始めました。

 このBoxセットを読みはじめて思ったのは、こんなに難しい(読解力のみならず、描かれる風流な情景に共感する能力を要求する)本を読む子どもは居るまいということです。多分に嫉妬めいた感情からくるものです。

 でも徐々に考えが変わってきました。こうした本が出版されるということは、そうした子どもは現に居るということです。だとすると、そうした成熟した感性というか、風流さを身に付けた(または身に付けかかっている生意気な)人にとっては、むしろ、あるレベル以上の内容のものでないと面白くないだろうなと思いました。つまり、セックスや暴力に関する場面が無いだけで、普通の大人向けの文学作品と同等のものですね。

 そうは言っても、カニグズバーグの読者は、同年代では少数派だろうと思います。この物語でマーガレットが味わったのと同じような仕打ちを受けやすい人々かもしれませんね。

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