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(george)

 カニグスバーグの4冊目です。邦訳版の題名は「ぼくと<ジョージ>」となっています。1970年の作品です。解釈が少し難しいのですが、8〜12歳向けに書かれたものとすれば、統合失調症や二重人格などではなく、主人公のベンの中には本当に別人のジョージが居るというファンタジーとして読むのがよかろうと思いました。子どもだましではなく、適度にリアルなファンタジーとして。

 プロローグの部分で、ベンとジョージは”concentric twins”として生まれたとあるし、弟が生まれる前の、おそらく4歳くらいでベンはジョージに気付いていたとあります。しかも、ベンが物語を語るかたちではなく、客観的に語られています。つまり、ベンが自分の記憶を偽っているわけではありません。

 そして、ヒトデの部分では、幼稚園児のベンをジョージがリードしています。両親が離婚するのはその後です。親の離婚がきっかけとなってベンの人格が二つに分裂したのではありません。

 それに、精神障害の二重人格では、二つの人格が会話することがあるのでしょうか。


 物語では、学校の化学実験器具が少しずつ無くなるという騒ぎが起きます。そして、ベン、というかジョージが疑われます。すったもんだの挙げ句、ベンとジョージと弟のハワードで悪巧みを食い止めます。悪くすると新聞ざたにもなりそうなところを、未成年でもあり、精神障害とみなされているベンを利用して穏便に済ませ、かつ、悪巧みをした者には相当の報いがありました。

 よくできたお話でした。

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