こころすなほに御飯がふいた

数年前の11月の話です。


兼業農家の関根さんから新米を分けて頂いた。
天日干しのお米である。

稲穂を下にして干すと、茎からの栄養が下がって、より美味しくなるのだそうだ。

長いこと日本人やってるのに、稲架掛けの本当の理由を初めて知った。

当然だが、研ぐと真っ白な研ぎ汁が出て、もったいないので庭(レンギョウが咲く予定の場所)に撒いた。
牛乳か豆乳と思うくらいの白さだった。

最近は精米機の性能が向上してほとんどの糠が取れ、だから懸命に研がなくてもいいらしい。
要するに、数回、洗うようにすればOKで、昔のようにカシャカシャ研ぐと、米粒が割れるんだそうな。
(機械乾燥のお米は特に割れやすいそうです)

でもしっかり研いだ、渡された時にそう言われたから。
研ぎ汁が薄くなるまで、およそ4回か5回、水を替えた。
水だって沢から引いた天然水である。

30分ほど浸け置き、竃に薪をくべ、始めチョロチョロ中パッパは難しいけれど、微調整のためにお釜とにらめっこしながら薪やら燠の世話を焼き、無心で待った。
(煙い! 今回は団扇とゴムホースで対応したが、火吹き竹を作りたい)

こころすなほに御飯がふいた 山頭火

まさに、その通りにご飯がふいた。
本物の竈炊きである。

あたたかい白い飯が在る 山頭火

炊き上がりも上出来で、湯気は上質な加湿器かとも思われ、ご飯の匂いには幸せの成分が凝縮されているようだ。
佃煮と野沢菜だけで、お茶碗2杯も頂いた。

新米の湯気ありがたや里の朝 山の人

お米の品種は訊かなかったが、今まで食べたお米の中でもベストの味だった。
(冷めても美味しかった)

作る人よし、米よし、水よし、お釜よし、研ぎよし、竃よし、薪割った人よし、割った薪よし、水加減よし、着火した人よし、火加減よし、焚く人よし、食べる人よし…。(汗)


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