東京やなぎ句会

小三治師匠がお亡くなりになって、最後にお目にかかったのが「東京やなぎ句会」と気づきました。
2008年7月17日のことです。
また日記から転記します。



楽しみにしていた「東京やなぎ句会」に行って来ました。
宗匠の入船亭扇橋師匠を始め、小三治師匠、永六輔さん、小沢昭一さん、加藤武さんなど、舞台上には大好きな方々ばかりです。
今回は吉行和子さん、冨士眞奈美さんが涼しげな浴衣姿で登場。
吉行さんはいつもながらの美貌で、私の胸をギュッとつかみます。
冨士さんも今でも充分にお美しいのですが、若い頃の美しさは天下一品、そのエキゾチックなお顔は脳裏に深く焼き付いています。
それでもとにかく残念なのは、ここに岸田今日子さんがいらっしゃらないことです。
悲しみが癒えることはないでしょうが、冨士さんもお元気そうで安心しました。
この句会では、江國滋さんも神吉拓郎さんも鬼籍に入られて寂しくなりましたね。

盃に夜が溶けゆく志ん生忌 滋酔郎

もしかしてこのしづけさは夜の雪 同


滋酔郎は江國さんの俳号。
江國さんの作品の中でも大好きな句でした。

もっと好きなのは変哲こと小沢昭一さんの句。
東京やなぎ句会とは関係ないものもありますが、数々の不朽の名句が思い出されます。

スケートや今転びしは宮殿下 変哲

校長満悦洋裁学校潮干狩 同

きのう餅二臼ついたサロンパス 同

閉経の妻と散歩す鰯雲 同


遊び心や軽みも俳句の魅力だと判ります。
でも再度読み返してみると、ペーソスや人生の機微がごく自然に伝わって来ますから、今さらながら俳句の奥深さに気付かされます。
そして今回も小沢さんのハーモニカが聴けて大満足です。
事情があって数年前に移してしまいましたが、我が家の墓所は小沢家のほぼ正面にありました。
その意味ではご近所さんだったので、小沢さんにはとても親近感が湧くのです。
縁もゆかりもありませんが、墓参のたびに合掌させていただいていました。

米朝師匠はご健在ですが、ご高齢ゆえ、もうご登場を願うのは無理でしょうか。
そんな中で、今回はやはり窓鳥こと吉行さんの句が秀逸でした。

夕立やずっと一緒にいたいわね 窓鳥

俳句の達人たちが名句を揃えて居並ぶ中、本当に素晴らしい句でした。

舌耕の小沢昭一さん、話芸の名人扇橋師匠、小三治師匠、そして話術の練達さんたちが居並ぶ中でも、永さんが時折発揮する、仕切りならぬ交通整理が見事でした。
永さん好きが高じて、どうしても贔屓目になってしまうからでしょうかね。

余談ですが、東京やなぎ句会には会則があり、つとに有名な第九条第三項を記して終わりにしましょう。
憲法九条に遜色のない、立派な文言です。

以下に該当する者は即刻除名する。
(1) 会則に違反した者
(2) 書記嬢に手を出した者
(3) 句友の女に手を出した者


未だ除名者は出ていらっしゃらないようです。

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