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M:tGArenaで始める電波デッキのすゝめ

前置き

 本記事は、Magic: The Gathering(M:tG)というカードゲームにおいて、真性の電波デッカー(電波デッキを組む者の意)が、『電波デッキとは』から『電波デッキの作り方』や『電波式デッキ調整のススメ』まで、電波デッカーは一体何を考えてこんなデッキを組んでいるのか、その生態や思考回路などをご紹介していく記事となります。
 「勝利以外に興味はないぜ!」という正しいゲームプレイヤーの皆様にとっては見る価値がございませんのでこのままお帰りください。

 また、この記事はM:tGというゲームについて詳しくないプレイヤーを仮想対象として書いているため、既存プレイヤーには少々まだるっこしく感じると思われます。予めご承知ください。


M:tGとM:tG Arenaについての簡単な概要

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 Magic: The Gathering(M:tG)とは、世界で最初のトレーディングカードゲームであり、世界一有名で、世界一人口の多いカードゲームである。

 M:tGは最古のカードゲームであり、全てのカードゲームの起源でもある。そして、今日に及ぶまで着々と新たな拡張パックを出し続けている。その総数は2万枚を超え、今なお増え続けている。
 さらにカードゲームの起源というだけあり、他のカードゲームに存在する効果は、大体M:tGにも存在する。
 つまり、このM:tGというカードは、世界一デッキの自由度の高いカードゲームと言えるのだ。

 そしてMagic: The Gathering Arena(M:tG Arena)は、そんなM:tGを、美しく分かりやすいUIによってオンライン対戦出来るデジタルカードゲームである。

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 M:tG ArenaはM:tGのオンライン版であり、紙のM:tGで新たな拡張パックが出れば、同時に(むしろ紙の発売日より速く)M:tG Arenaにも全く同じ拡張パックが実装される。

 M:tG Arenaのリリース日が2018年と最近であるのに対し、M:tGの初版発売日は1993年と実に25年の歴史の開きがある。そのためM:tG Arenaでは古いカードが使用できないという制限はあるものの、M:tGの最も一般的な遊び方は「スタンダード」というルールで、最新2年のカードのみを使用し、1年毎に使用可能なカードがローテーションしていくというレギュレーションであるため、基本的に紙のMTGとオンラインのMTG Arenaは全く同一のゲームであるといえる。

※現時点では大昔のカードを使用できるレギュレーション(俗に下の環境などと呼ばれる)は実装されておらず、またその予定もない為、そこだけは留意してほしい。


電波デッキとは

 さて、前置きはここまでにして本題に移ろう。

 カードゲームにおいて、デッキは4種類に大別される。
 環境でもっとも強い『メタデッキ』
 メタデッキに対する強さに特化した『アンチメタデッキ』
 そんなメタを無視し、不意打ちからの勝利を目指す『地雷デッキ』
 そして、今回語る『電波デッキ』の4つである。

 4種類のデッキタイプを紹介したが、電波デッキには他の3種と大きく異なる点が存在する。それは『デッキの目的』だ。

 基本的に全てのゲームにおいて、プレイヤーの目的は『ゲームの勝利』である。当然カードゲームにおいても同様であり、全てのデッキは勝利という最大最優先の目的のために存在している。

 ただし、そこに例外がある。それが電波デッキだ。

 メタデッキは「勝つための手段」である。
 それに対し電波デッキは「うるせえ黙って俺のコンボを見やがれ!!!!!」という電波デッカー魂の叫びだ。

 そう、電波デッキは他のデッキとは根本から異なるのである。
 そして、そんな電波デッキを量産し続ける頭のネジの外れたプレイヤー達のことを、電波デッカーと呼ぶのだ。


電波デッカーという生き物

 M:tGの開発部であるR&D曰く、カードゲームのユーザーは、概ね3種類に分類される。

 まずティミー(Timmy)、ティミーはとにかく楽しくゲームがしたいと考える。ド派手で気持ちいいプレイをすること自体が最高に大好きだ。

 次にスパイク(Spike)、スパイクは己の強さを証明したいと考える。大会で優勝を目指したり、プレイングの上手さを競ったりすることを好む。最も真剣にゲームをしているのがこのスパイクとも言えるだろう。

 最後にジョニー(Johnny)、ジョニーはゲームを通して自己表現をしたいと考える。新しいコンボを生み出したり、突飛な発想でデッキを組んだり、今まで誰もやらなかったようなことをしたいのだ。

 そして、そんなジョニーの極致、カードゲームは創作と創造の場であり、作品発表会だと勘違いしている者達。それが電波デッカーという存在である。

 ありとあらゆる手段をもってして勝利を目指す、謂わば最も正しくゲームをしているスパイク達は、我々電波デッカーに対しこう言うだろう。
「なんで強いデッキを使わないの?」と。

 だから我々はこう答えるのだ。
「うるせえ黙って俺のコンボを見やがれ!!!!!」

 電波デッカーにとって、ゲームとは作品発表会であり、評論会なのだ。我々は決して、そこに名画のカラーコピーを持ち込みたいとは思わない。自身で作品を作り上げる事こそが、ゲームだと信じているからだ。


 電波デッカーは決して勝利を目指していない訳ではない。
 しかし、「己の考えた素晴らしき独創的アイディアを披露する」という目的が、勝利の前提として最も高い優先度で存在しているのである。

 電波デッカーはただの勝利を目指さない。美しき勝利を目指している。

 それは最早、病的な美意識といっても良いだろう。
 電波デッカーは、常に美しき独創的な作品を作り上げることを目指している。例え「君のデッキよりこっちの大会優勝デッキの方が強くない?」等と言われようが知ったこっちゃないのである。何故なら、他人の作品をコピーするという行為には創造性の欠片もなく、何よりも美しくないのだから。

 では勝利が目的ではないのか?と言われれば、答えは否である。
 先程も述べたが電波デッカーは基本的に美意識で動いている。そして、確かに勝利とは美しき行為であり、敗北とは美しくないブサイクな行為だ。
 だが、だからと言って勝利のためだけに全てをかなぐり捨てる行為を取るわけではない。何故なら、それ以上に美しき勝利があることを知っているからだ。

 何度でも繰り返し言おう。
 電波デッカーは、常に『美しき勝利』を目指している。
 それが電波デッカーという生き物の、生き様なのだから。


電波デッキの生まれ方

 さてここで例として、現時点(2020/4)での最新パックから、1枚のカードをお見せしよう。

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 ざっくりと説明すると、このカードには「コスト4」「いつでも使える」「特定の能力を持ったカードが墓地にある枚数分だけ、どこかにダメージを与える」という効果が書いてある。

 ごく普通のプレイヤーにとって、恐らくこのカードを見た時の感想は「いつでも撃てるのはいいけど、ダメージは不安定だし何よりコスト4はちょっと重いなあ。」といったような感じだろうか。
 或いはもっと強く、もしくはもっと弱く見えているかもしれないが、大凡はこのような感じだろう。(筆者が完全な電波の為、正常な判断が不能)

 実際に上記のカードについての所感を求めた所、以下のようなコメントが帰ってきた。

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※下環境とは古いカードが使えるフォーマットのこと。M:tg Arena非対応

 概ね想像通りであるが、やはり「コスト4」というのがネックなようだ。


 さて、電波デッカーには、このカードがどうみえるかというと。

「あなたの墓地が20枚以上あればあなたは勝利する」だ。
※M:tGにおけるプレイヤーの初期ライフは20点

 このカードは1枚でゲームを終わらせるポテンシャルを秘めており、そのためだけにデッキを組む価値が大いにあると判断できる。
 つまり電波デッキとは、このような思考回路によって組み上げられるのだ。

その思考回路

 通常のプレイヤーは、勝利の為にデッキを組んでいる。そのためのデッキ構築として「最も強いカード」「強いカードと相性のいい強いカード」をまず詰め込み、その後「弱いカード」を抜いて「抜いたカードよりも強いカード」に入れ替えていく。勝利という目的のために、手段であるデッキを考え抜くのだ。

 一方、電波デッカーは『特定の効果を最大化・完全化する』という意欲に常に囚われている。「完全に機能する」という事象には完全なる機能美が詰め込まれており、何よりも魅力的に見えるからだ。そう、勝利という魅力が霞むほどに。

 電波デッカーのデッキ構築は、まず『最も美しい事象』を発見する所から始まる。
 それはカード同士のコンボやシナジーであったり、秘めたるポテンシャルを持つ単体のカードであったり、使い所のなさそうな1枚の奇妙なカードであったりするが、とにかく電波デッカーはまず一番初めに手段を決める。そしてそれは時として、勝利には一切結びつかない事象であったりもするのだ。

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例)重く出た瞬間何もせず効果が運頼みで使い所の無さそうなカード

 この『美しき事象』はデッキコンセプトと呼ばれ、このコンセプトの発見・開発・研究こそが、電波デッカーにとってのゲームの価値の全てだ。

 電波デッカーがコンセプトの発見の次にすることは、『美しき事象』から、『ゲームの勝利』へと繋げるプロセスの開発である。
 電波デッカーの発見する『美しき事象』は、無限パワー無限ダメージ等の直接的に『ゲームの勝利』に繋がる物である事も多い。
 だが、勝利条件からかけ離れた『美しさ』(例えば「1枚のカードが100回盤面と手札を往復する」等)を見つけてしまった電波デッカーは、その『美しき事象』が引き起こす何かを利用して勝利条件というハードルを満たす必要がある。その為に、さらなる発見を求めて別のカードを探し、コンセプトを十全に満た上で勝利する手段を開発しに征くのだ。

 故に電波デッカーは、まず「美しきカード」を詰め込み、次に「その美しさを勝利へと変換するカード」を詰め込み、最後に「美しさを補強するカード」で残りの枠を埋める。電波デッカーは、手段という目的のために手段を選ばない。

 再三になるが、電波デッカーは決して勝利を目指していないわけではない。何故なら敗北は美しくないからであり、どれだけ美しい構成のデッキでも、それで勝利できなければただのブサイクな紙屑なのだから。

 電波デッカーにとって、勝利とは目的ではなく、目的と同時に達成しなければならない高きハードルなのである。
電波デッカーは、自分がやりたいことをやって勝ちたいのだ。


電波デッキの作り方

 さて、では実際に上記のカードを用い、電波デッキを組む様をご覧いただこう。

 上で挙げたカードには、「特定の効果を持つカードの枚数」というキーワードがある。つまりその効果を最大化するためには、デッキをその特定のカードで埋める事が必要だ。

 その効果を持つカード自体が強い、弱いは関係ない。「特定の効果を持つ」という事が、全てに勝る重要な要素なのだから。

 故にデッキの開発初期は非常に簡単に組み上がる。なにせその「特定の効果」をカードをピックアップするだけでよい。
 更に今回の場合、このデッキコンセプトは直接的に勝利条件に関わるカードだ。勝利に変換する手段を求め、さらなる発見をする必要はない。

 リストは5分で完成した。

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相棒
1 黎明起こし、ザーダ (IKO) 233
デッキ
4 天頂の閃光 (IKO) 217
4 雄々しい救出者 (IKO) 36
4 聖なる鋳造所 (GRN) 254
4 心温まる贖罪 (WAR) 199
4 サヴァイのトライオーム (IKO) 253
4 さまよう怪物、イダーロ (IKO) 141
4 繁栄の狐 (IKO) 13
4 踏み穴のクレーター (IKO) 118
4 ドラニスの刺突者 (IKO) 113
4 ドラニスの癒し手 (IKO) 10
4 切り裂かれた帆 (IKO) 136
4 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
4 インダサのトライオーム (IKO) 248
4 ラウグリンのトライオーム (IKO) 251
4 光り角の海賊 (M20) 141
サイドボード
1 黎明起こし、ザーダ (IKO) 233

 今回のキーワードは「サイクリング」という能力だ。これは記されたコストを支払うことでそのカードを手札から捨てて1ドローに変換できるというものだ。

 この能力自身は元々非常に使い勝手がよい。今そのカードが不要だったら捨てて新しいカードを引けるのだから、弱いわけがない。

 だが、逆に言えばサイクリングをするということは、そのカードは今要らないということでもある。
 常識的にデッキを組む時、このサイクリングは付加価値である。強いカードに付いていたら嬉しい能力であり、特定の状況だけ強いカードに付いていたら採用の可否を考える、といったような具合に。

 電波デッキにそんな常識は不要だ。

 電波デッキにおけるカードの採用基準は、コンセプトとのマッチング率のみであり、今回においてはサイクリングを持っているというだけで採用の余地が十二分にある。

 コンセプトとマッチする強いカード。即戦力だ、直ちに採用したまえ。
 コンセプトとマッチするがあまり使われないカード。なるほど採用だ。
 コンセプトとマッチするが弱いカード。いいだろう、採用だ。
 コンセプトとマッチしないがとても強いカード?不採用だ!帰り給え!

 電波デッキを組む者は、他人の宣う強いカードという概念をまず捨てろ。

 その強さは常識的なプレイヤーが常識なデッキを用いた時に常識に基づいて判断したものであり、我々電波デッカーには不要な知識だ。

 カードの強さは状況に応じて変化する。故にカードの強さは、状況を作り出すデッキによって変化する。
 なればこそ、カードの強さは己で見極める。それこそが電波デッカーにおいて最も大事な事であり、新たな発見を生み出す源なのだ。


 今回組んだデッキにおいて一番特徴的なのは、M:tGというゲームにおいてすべてのリソースの元となる土地カードの割合。「マナ・ベース」と呼ばれるものだ。

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 このデッキは『赤マナ』もしくは『白マナ』が必要なカードで構成されている。従って、「サイクリング」を持ちながら赤と白が両方出る土地であるこのカードはすんなりとデッキに入るだろう。

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 ではこちらはどうだろうか、『赤と白』が必要なデッキで、白しか出ない。通常の土地はアンタップイン(そのターンすぐに使える)なのだが、この土地はタップイン、つまり1ターン動きが遅れてしまうのだ。
 では、『赤と白』が必要なデッキである今回、このカードは通常の白が出る土地の劣化なのか?

 答えは否。

 このM:tGにおいて土地というリソースは何よりも大事だ。大事だからこそ、デッキの非常に大きな割合、60枚のうち4割程度を土地というカードが専有する。

 つまり、この枠に「サイクリング」をギチギチに詰め込むことこそが、このデッキを『墓地20枚=勝利』へと繋げてくれる架け橋となるだろう。

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 後は実際に墓地を肥やす、つまりは手札のカードを捨てて墓地に送るカードなんかも採用し、デッキの草案が完成したことになる。

 今回のこのリストには、デッキ60枚中に「サイクリングを持つカード」が44枚、「サイクリングによって何らかのメリットを誘発するカード」が20枚、「墓地を肥やしたり、サイクリング自体を手助けするカード」が5枚。デッキコンセプトに関連しないカードは僅か4枚となっている。

 また、現環境では最新拡張パックにて新録された『相棒』という能力によって、デッキ構築自体に制限が掛かる代わりにデッキ外のカードを1枚、いつでも使用することが出来る。(リスト画像最左)
 今回採用した相棒は、端的に言えばサイクリングのコストを安くしてくれる。またデッキの構築制限もサイクリングを持っている事自体で解決が可能なため、すんなりと採用できるだろう。これで61枚の、完全にコンセプトだけを詰め込んだデッキリストの完成だ。


電波式デッキ調整のススメ

 さて、これにてデッキが組み上がったわけだが、ではこれでデッキは完成したのか?

 否、断じて否。むしろ、ここからが電波デッカーの腕の見せ所だ。

 はっきり言ってしまえば、基本的に電波デッキは弱い。特に草案段階のデッキはひとしおに弱い。
 強いカードだけを採用しているデッキと、そうでないデッキ。相手への妨害が入っているデッキと、そうでないデッキ。

 これで強いわけがない、つまりは現状まだ勝てないデッキなのだ。

 電波デッカーは美しき勝利を目指している。つまり、どんなに素晴らしいアイデアが詰め込まれたデッキであっても、勝てないデッキには意味がないのだ。

 ではどうするのか。

 ひたすらにデッキを回し、勝てるまで調整するのだ。

 M:tG Arenaというゲームの存在は非常に大きい。何故なら、いつ何時でも無数の対戦相手が居て、あらゆるデッキを相手に自分のデッキを試すことが出来るからだ。

 対戦して、負けて、対戦して、負けて、対戦して、負けて。
 負けた原因は?理由は?その時の相手のデッキは?そういう時に勝つ為に入れるべきカードは?抜くカードは?
 コンセプトを崩壊させないように細心の注意を払いながら、「想像以上に使えなかったカード」を抜き、新たな「ひょっとしたら使えるかもしれないカード」を入れ。試し、また抜き、探し、対戦して、負けて。

 そこから始まるのは地獄のような修羅の道。

 この作業こそが、電波デッキの研究フェーズ。電波デッカーの最も楽しく、それでいて最も辛い時間である。

 電波デッカーのデッキ調整は、常に己の弱さとの対面だ。

 「相手が悪い」「運が悪い」「プレイングミス」「デッキが悪い」。
 負けへの言い訳もある、だが、敗因の全てを他所に押し付けることは出来ない。そのデッキを作り上げたのは、他ならぬ自分なのだから。
 そのデッキを「負ける紙束」から「勝てる芸術品」に昇華出来るのは、自分しか居ないのだから。

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……とまあ能書きはココまでとして。根性論のような事を書いただけでは「調整方法」とは言えないだろう。では、具体的に「何をすれば良いのか」を書いていこう。

 実際に電波デッキを調整する時に一番大事なのは、コンセプトをブレさせない事だ。
 デッキの肝心要である「デッキコンセプト」を完全に無視したカードを入れるのは可能な限り控える。そうしなければ、いつのまにか最後に抜ける不要カードはその「デッキコンセプト自体」になってしまうだろう。

 しかし、限りあるデッキ枚数の中で調整するのは限界がある。どうしても相手の対処に必要なカードであったり、相手への妨害手段を積むことが必須だったりもするだろう。

 そこで大事になってくるのが、コンセプトの圧縮だ。つまり、1枚のカードになるべく複数の意味をもたせる事で、可能な限り枚数を抑え、妨害や除去、ドロー等の潤滑油を入れる余地を残すのだ。
 前述の草案では実際に「サイクリングを持つカード」と「サイクリングによって効果を誘発するカード」という2つの意味を持つカード群や、「サイクリングカードを墓地に落とす」「サイクリングカードを手札に引き込む」「ライフを回復し時間を稼ぐ」といった複数の狙いを持たせたカードが採用されている。
 この圧縮の為には、やはり何度も回して隈なく全てのカードがどれだけ利用できているかを見直すといいだろう。

 「この局面にどうしても欲しいとおもって入れた1枚」は、ノイズになっていないだろうか?「絶対に必要だと思ったパーツ」は本当に上限まで入れる必要はあるのか?あのカードとこのカード、もっと別のいいカードに変えれば枚数を抑えられないだろうか?

 電波デッキは、普通のデッキよりも制限が大きい。勝利への手段を選んでいるのだから、手段を選ばず勝利を目指す相手に勝つのは難しい。
 だからこそ、全てのカードを舐め尽くすようにして、誰よりも丁寧にカードプールを見つめる必要がある。

 研究が行き詰まったら、利用可能な全てのカードをもう一度眺めるといいだろう。もしかしたら、そのデッキの完成の鍵となる、見逃した大事な1枚があるかもしれない。

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 最後に一つ、重要な事がある。

 ドローだ。

 カードゲームは、ドローの質と量で全てが決まる。

 勝利手段があるのに勝てないデッキに足りないものは唯一つ。ドロ―の枚数だ。
 少しでも枠の余裕があれば、「コンセプト」を引き込むためのドロー手段を詰め込め。
 1枚、2枚のドローは神頼みだが、10枚、20枚のドローは決して裏切らない。「コンセプト」を崩壊させずに、かつ速やかに使えるドロー手段を、膨大なカードプールから探し出し、なんとしてでも「コンセプト」を引き込め。

 電波デッカーは、神に祈るな。

 

最後に

 ここまでに約8000文字をかけて、電波デッカーが何考えてこんなものを生み出しているのか、その生態について語った。

 要約すると「電波デッカーは、他のプレイヤーよりも美しき勝利を目指して、苦難の道を歩み続けている」といったところだろうか。わずか40文字に収まってしまった。


 最後に電波デッキの構築順序をもう一度おさらいしていこう。

 まず発見。膨大なカードプールから、最高にクールな挙動をするデッキのコンセプトを見つけ出す。
次に開発。そのコンセプトを、デッキの形に整える。
最後に研究。出来上がったデッキと使わなかったカードを隈なく調べ尽くし、イカレた紙束をイカした芸術品へと組み替える。

 この研究には終わりはない。誰にでも勝てるデッキなんて、例え電波デッキでなくても存在しないのだから。

 そうして研究を続けるうちに、また新たな発見があるだろう。

 電波デッカーのデッキ構築は終わらない。

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デッキ
4 遁走する蒸気族 (GRN) 115
2 山 (THB) 253
4 蒸気孔 (GRN) 257
4 創造の歌 (IKO) 210
1 島 (THB) 251
4 踏み鳴らされる地 (RNA) 259
4 安堵の再会 (IKO) 110
4 死の国からの脱出 (THB) 161
4 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
4 嵐の一撃 (RNA) 119
1 森 (THB) 254
4 最大速度 (GRN) 111
4 舞台照らし (RNA) 107
4 ショック (M19) 156
4 寓話の小道 (ELD) 244
4 胸躍る可能性 (ELD) 146
2 伝承のドラッキス (IKO) 194
2 千年嵐 (GRN) 207

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