キツネ

真夜中は彼の領域
視界が青白くぼやける時
山と原野に迷い込む

進めど進めど
道は果てしなく続く
夢と戦っているような感覚

光っては消えていく
音のない閃光
木々は見知らぬ恐怖にも似て

小径は迷宮となって
眩惑したヒナギクを閉じ込める
文明は靄となって消失する

黒いキツネがアンブルでやってきて
草原をぶらぶらと歩き回りながら
獲物を笑いながら見つめている

不吉な毛皮に抱かれて
竜巻のように駆け抜ける
夜明けまでの洒落込んだ駆け落ち

低い声につられて
感情が消え去ると
闇の中から幻覚が現れる

都市の幻想
心地よいリズム
ニヤリと笑うその牙は喰らわない

そのとき大嵐が巻き起こり
飾られた顔が現れる
彼は言う、「冒険の頂点だ」

闇は明るくし
光は暗くする
大通りと夢の亡霊たち

南極のロンドンで
彼が魔法を使うと
境界線があらゆる場所に現れる

彼は自分は孤独なのだと言った
我が家と呼べる場所、この世界の
唯一の住人なのだと

神なる射撃手の
草結いの矢
黒いキツネはこちらを見続けている


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