【GeoGuessr攻略記事】西ヨーロッパ諸言語の見分け方法を徹底解剖

本シリーズはYouTubeで公開している解説動画の内容をベースにして、要点を整理するとともに動画内で説明しきれなかったポイントを補足するための記事です。ぜひ動画本編と合わせてごらんください。

前回の記事でロマンス系言語について特集したので、今回はゲルマン系言語を始めとして西ヨーロッパのその他の言語について扱います。

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第3回 西ヨーロッパ編 ゲルマン諸語など

当記事では第2回で紹介したロマンス語に対して、ドイツ語の仲間であるゲルマン諸語と、それら以外の言語を扱います。

ロマンス諸語では定冠詞や前置詞が有効でしたが、ゲルマン諸語においても同様の文法事項が活用できます。

一方で、ゲルマン系の言語においては特徴的な単語や綴りを覚えていることがより重要になり、文字による判別もロマンス諸語に比べて有効です。
覚える量は前回より圧倒的に少ないのでそこは安心してください。


1.英語

英語が英語であることすらわからん、という人はあまりいないとは思いますが、定冠詞 the前置詞 to, for, on など単語が特徴的ですので、覚えるのにそこまで難儀しないとは思います。

いかんせん学校で日常生活で、普通に英語を勉強してきた身なので、その経験がない方に向けて英語の見分け方をどうアドバイスするか、というのは案外難しいのかもしれません。

centre, colour, Ghana's got a black tape. はイギリス英語
center, color, Ghana has a black tape. はアメリカ英語
みたいな違いもあるんですが、アメリカにも centre あったし…


2.ドイツ語

ドイツ、スイス、オーストリア、ルクセンブルクの公用語です。
オーストリア語と標準ドイツ語は分けて考えることもできますが、このゲームの性質上その二か国で悩むケースは少ないので同一として考えます。

ドイツ語単語集

<~通り>  Straße / Strasse / gasse / weg など
<売出し中> Verkauf
<注意>   Achtung
<A and B>  A und B

・名詞は文頭でなくても必ず大文字で書き始めます
・Attensam は attention の方言ではなくオーストリアの企業の名前


<コラム:ドイツ語圏の通り>

ドイツ語圏は通りの名前で国まで絞り込めます。

・Straße はドイツかオーストリア
・Strasse はスイスの可能性が高い
・-gasse はほぼオーストリア

スイスの動物園でも Strasse でしたので結構使えます。

スイスの動物園をBRで出すな


ドイツ語の文法

定冠詞は der, die, das, den, dem, des の六種類です。

ドイツ語は名詞の分類が非常に複雑でどの名詞にどの冠詞を使うかが決まっています。格変化も異なるので覚えると大変らしいのですが、このゲームでは形さえ分かっていれば何の問題もありません

ところどころにロマンス諸語の縮約形との同形があるので注意です。

前置詞は nach, von, zu, ab, im などです。
これらの前置詞はドイツ語に確定することができます。

縮約形はロマンス諸語ほど決まったルールはなく、zum などの縮約形が使われる場合もある、程度に考えておけばいいと思います。


ドイツ語の文字

ß はドイツ語確定の文字です。
ギリシャ文字の β に似ていますが周囲の文字から判別は容易です。

これはスイスでは用いられず、ss と綴られます
コラムで紹介した Strasse がスイス濃厚なのはこのカラクリです。

また、ドイツ語では ä のようなウムラウト記号を非常によく使います。
ドイツ語で使われるのはÄä, Öö, Üüの三種類です。

ウムラウトは西欧ならドイツ語ほぼ確定、北欧まで含めればスウェーデン語やフィンランド語、エストニア語でも使われています。

スイス・ドイツ語ではウムラウトの大文字を使わず、文頭や名詞の頭にこれらの文字が来る場合 Ae, Oe, Ue で代用します。

ただし、これら代用の綴りがあるからスイス確定にはなりません。
外国人向けあるいはドイツ語圏外でのドイツ名の表記において、特殊な記号の使用を避ける目的で上記の綴りを用いることがあるからです。
シェーンベルクがアメリカで Schoenberg と名乗ったのがいい例です。


ドイツ語の見分けポイント

・ゲルマン系言語の特徴を理解する
ウムラウトなど特殊アルファベットはもちろん、ロマンス語やスラヴ語とも比較してゲルマン系言語に特有の綴りを感覚的に理解しましょう。
例えば、tzch のような複数の子音、eieu のような複数の母音、そのほか aus--en などの特徴的なパーツが例として挙げられます。
そのゲルマン系の中でも最も「尖っている」のがドイツ語です。

・ゲルマン系の中でのドイツ語の位置づけを理解する
正直、ロマンス語やスラヴ語、あるいはそのほかの言語とゲルマン語を区別するのはそこまで難しくありません。
その中で最も典型的なのがドイツ語ですが、具体的にはÜüの使用や独特な語彙群が判断のポイントになるかとは思います。

・とにかくドイツ語の表記を数多く見る
ドイツ語は文字でも文法でも「これなら確定」という明確な特徴づけをするのが難しく、初心者に厳しい言語のひとつではあります。
しかし、周りのどの主要言語とも大きな差がある言語ですので、慣れてくれば必ず見分けられるようになります。信じて経験を積むのみです。


<コラム:ドイツ語の語彙集>

追加で語彙を紹介しますので、参考にしてください。

Schule 学校
Stadt 町
Haus 家
Polizei 警察
Autobahn 高速道路
Morgen 朝
Faust こぶし
Krieg 戦争
Jäger 狩人
Löwe ライオン
Hummel マルハナバチ
Streichholz マッチ棒
Schaufensterpuppen マネキン
schwartz 黒い
weiß 白い
Spandau 地名・シュパンダウ
Weißensee 地名・ヴァイセンゼー
Wolfgang Mozart 人名・モーツァルト
Karlheinz Stockhausen 人名:シュトックハウゼン

クラウトロックを聴きましょう



3.ルクセンブルク語

ルクセンブルクは、前後黄色ナンバーにフランス語があってもドイツ語があっても確定できるうえ、ボラードも特徴的なのでわざわざルクセンブルク語を極める意味があるかといえば、薄いと言わざるを得ません。

その中でも重要と思われる事項をいくつか紹介します。

まず、ルクセンブルクでは通りを strooss という単語で表します。
ドイツ語とフランス語を足して2で割ったようなこの表現はルクセンブルク語に特有な単語の一つで、よく見かけるので覚えておきましょう。

加えて、ルクセンブルク語ではドイツ語では使われず、フランス語でもめったに使われないËëの文字をそれなりに使います。
これを最も使っている言語はアルバニア語ですが、西ヨーロッパでこの文字を見たらルクセンブルク語を疑ってみましょう。


4.オランダ語

オランダとベルギーの公用語です。
気にしなくてもいいですがキュラソーでも公用語の一つです。

オランダ語単語集

<~通り>  straat
<売出し中> te koop
<貸出し中> te huur
<注意>   aandacht
<A and B>  A en B

・売出し中貸出し中はよく見かけるので覚えておきましょう
・en はスペイン語などの前置詞でもあるので慣れないうちは注意


オランダ語の文法

定冠詞は de, het の二種類のみが現存します。

ドイツ語と違ってオランダ語の定冠詞は格変化しません。
古いオランダ語では den や der のような格変化があったため、地名や姓名にはそれらが使われていることがあるようです。

前置詞は特徴的なものでいうと naar, van などです。
ドイツ語と比較しながら覚えましょう。

オスマン帝国陸軍の改革に携わった von der Goltz や第一次世界大戦で同軍の元帥を務めた von Sanders はドイツ人で、画家の van Dyke や元ソフトバンクの van den Hurk はオランダ人(ないしオランダ語圏出身の人物)というように、人名にもこの違いは現れています。
歴史に詳しい人はこういう切り口から覚えていくのもいいでしょう。

ちなみに画家 Vermeer も von der Meer の省略形らしいです。


オランダ語の文字

オランダ語は特殊な文字をほとんど使いません。

アキュートアクセントやトレマ符号(ウムラウトと同形)を使う場合もあるようですが、まず滅多に使われていません。

一方で、オランダ語には IJ という特殊な文字があります。
小文字では ij となり、「エイ」の音を表す単一の母音字として扱われます。

この ij の綴りが比較的頻繁に使われているのがオランダ語の特徴です。
ドイツ語でも J 自体は使いますが、オランダ語の IJ とは明らかに異質な使い方なので、ゲルマン語圏内での区別は容易です。

ただし、クロアチア語でもこの ij の綴りが頻繁に登場するので、特に固有名詞の場合は周りの景色にも注意した方がいいでしょう。
Rijeka はクロアチア、Kortrijk はベルギーですよ。


オランダ語の見分けポイント

・特徴的なスペル
オランダ語はこの一点に尽きます。

細かい文法事項はどうでもいいので、以下に示すオランダ語正書法の特徴を身に着けさえすれば、オランダ語は極めて簡単に特定できます。

・同一母音の連続
オランダ語を区別するうえで最も分かりやすい特徴です。
straat や meer、 koop や huur のように様々な母音・単語において普遍的にみられる綴りの特徴で、ゲルマン語圏に一定程度共通する特徴ではありますが、特に英語とオランダ語において顕著に表れる傾向です。

・IJ の多用
上述の通りです。西欧であればまずオランダ語でしょう。
ウムラウトなど他の特殊アルファベットはほとんど使いません。

・oe の綴り
「ウ」の音を表す oe の綴りもオランダ語に特徴的です。
フランス語などにもないわけではないですが、やはりオランダ語での使用頻度が高い綴りだと思われます。
ベルギービールのブランド Hoegaarden はゆえにとてもオランダ語らしい綴りだと言えるでしょう。


<コラム:世界のビールTips>

人類酒が大好きなのは世界共通。
お酒の広告で国が絞り込めるので言語とは関係ないですが紹介します。

Angkor カンボジアの国民的ビール
Beer Lao ラオスの国民的ビール
Corona メキシコのビール
Guinness アイルランド発祥のビール
Estrella Damm スペインのビール
Carlsburg デンマークのビール、ヨーロッパ中にある
Hoegaarden ベルギービール、世界中にある
Heineken オランダのビール、世界中にある

ワインの広告は、パブの入り口や道端の食料品店に広告がありがちなビールに比べて、数が少なく絞り込みには使いづらいです。
南米ではチリとアルゼンチンが有名で、幹線道路沿いにワインの広告を出しがちなのはチリとペルーという印象があります。

カールスバーグ本社の象のモニュメントを出すな


<コラム:母音の連続について>

同一母音の連続は、ゲルマン語圏共通の特徴でもあります。

ドイツ語にも Haar(髪), Meer(海), Saar(ザール・地名)などの例があるので、一概にオランダ語確定とは言い切れない部分があります。
デンマークにも Aarhus や Aalborg のような地名があります。

オランダ語の特徴というのは、あくまで長母音を書き表すときに母音字の繰り返しを用いる頻度が高いという点にあります。具体的には直後に子音がある(閉音節)長母音を表すときはほぼ必ず母音字を重ねるようです。
「イー」のみドイツ語同様 ie と書かれるため ii にはなりません。

ドイツ語では mehr や Mähren のように h を挟むことで長母音を示したり、Baumkuchen のように単一の母音が長母音になる場合もあります。
英語でも book や moon のように同一母音の連続が高い頻度で現れますが、それらが表す発音は語によって違います。

実際に経験を積めばわかりますが、ドイツ語のそれよりもオランダ語や英語の母音字の繰り返しの方が圧倒的に見る頻度が高いです。

フィンランド語とエストニア語でも同様に同一母音の連続が高い頻度で現れますが、これも正書法上のルールの問題で、やはり長母音を表しています。

トルコ語でもまれに同じ母音字が連続します。
これについては Siirt(スィイルト)のように長母音ではなく単独の母音がたまたま同じ母音を持つ音節の直後に来ているだけという感じがあります。

まとめると、同一の母音が連続して綴られるのはオランダ語、英語、フィンランド語、エストニア語の可能性が高く、ドイツ語である場合もあるので注意が必要、ということになります。

ヨルダンにも Ma’an があります

5.アフリカーンス語

南アフリカの公用語の一つで、オランダ語に類似した言語です。

旧ケープ植民地に最初に入植したオランダ人入植者(ケープ植民地の建設者は Jan van Riebeeck、オランダ語らしい名前ですね)の子孫が受け継いできた言語で、基本的にはオランダ語の特徴をよく残しています。

アパルトヘイト政策下でのソウェト蜂起などアフリカ人による抵抗の歴史に加え、英語が共通語としてよく浸透していることから、公用語として見かけることは少ないですが、アフリカーナーのコミュニティでは今もこの言語が第一言語として話されており、南アフリカ各地の地名を中心として今でも目にする機会は多いです。

見分け方はオランダ語と同じ方法が通用します。
南半球かつ左側通行ですので、極端に言えば「英語ではない」「ドイツ語っぽい」だけでも分かる場合があります。Johannesburg がいい例ですね。

ちなみに New Zealand もオランダの Zeeland 州が語源ですが、そのあとイギリス人が入植したのでオランダ語系の地名はあまりありません。

以下にアフリカーンス語の語彙をいくつか紹介します。

rooibos ルイボスティーのルイボス、赤い灌木の意味
rooikat カラカル、赤い猫の意味
meerkat ミーアキャット、湖の猫ではなく語源は諸説あり
Bloemfontein 地名・ブルームフォンテイン


6.ケルト諸語

イギリスやアイルランドで限定的に使われている言語の一群です。
ロマンス系でもゲルマン系でもないケルト語派に分類されます。

ケルト語が使われている地域では英語やフランス語が第一公用語となっており、それ単体で見るケースはあまりありません。
標識などに使われていても、文章で見かけるケースは少ないと思います。


アイルランド語

アイルランドと北アイルランドの公用語です。
話者数は少なく、アイルランド語を母語とするアイルランド人よりポーランド語を母語とするポーランド系移民の方が多いと言われいます。

しかし、アイルランドの標識にはほぼ例外なく英語とアイルランド語を併記するのが決まりになっています。

北アイルランドやウェールズの可能性もあるので、本当はリアプレートなどから国を特定したいところですが、英語の標識にケルト系の言語が併記されていたらアイルランドの可能性が高いといえます。

このとき、英語表記がすべて大文字で書かれるのに対し、アイルランド語表記は語頭のみ大文字で残りは小文字で書かれ、細いイタリック体が使われるという特徴があるので、アイルランド語そのものに対する知識はあまり必要ではありません。


<コラム:イギリスとアイルランド>

イギリスとアイルランドは、田舎の景色がよく似ていて難しいですが、交通の面で大きな差異を持っています。
茂みの中に落とされたらどうしようもないですが、丘陵地なら抗えることも多いので、ここでいくつか見分け方を紹介します。

・リアのナンバープレート
よく知られている通り、イギリスのリアプレートは黄色です。
マン島ではキルギスやアルバニアと同様の、左に赤い縦縞が入ったプレートを使っているので、この点も覚えておきましょう。

・警戒標識の形状
アイルランドの警戒標識はアメリカ風のダイヤモンド型です。
ヨーロッパでは他に例がないので、イギリスとの択に限らず使えます。

・単位系の違い
イギリスではアメリカと同じ帝国単位を使っていますが、アイルランドは少なくとも標識ではメートル法を使うことになっています。
混乱を避けるため、km/h などと明記されているのも特徴です。

・交差点の優先表示
イギリスでは Give Way を、アイルランドでは Yield を使っています。
優先道路を示す停止線も、イギリスでは破線二本線ですがアイルランドでは実線と破線の組み合わせが使われています。

・車道外側線の色
アイルランドは車道外側線がオレンジの破線になっています。
しかし両国とも、狭い道路では車道外側線がない場合が多いです。

これだけ覚えていても森の中に落とされたら終わり


スコットランド・ゲール語

スコットランドで使われているケルト語の一種で、アイルランド語(ゲール語)によく似ています。
イングランド語(英語)によく似たゲルマン系のスコットランド語もありますが、これは英語から分岐して独自の発展を遂げてきたもので、ケルト系のスコットランド・ゲール語とは異なります。

アイルランドの標識にアイルランド語が併記されているのに対し、スコットランド・ゲール語の表記を街中で見ることは稀です。

スコットランドを言語で特定するなら、スコットランド・ゲール語よりもスコットランド語あるいはスコットランド英語に特有の言い回し、Edinburghの -burgh(イングランド語では -borough)や教会を表す kirk などが使えるかもしれません。


ウェールズ語

ウェールズの公用語で、ゲール語とは違いも大きい言語です。
とはいえケルト語どうしの見分け方まで勉強するのはコスパ的にも微妙なので、わざわざ語彙を覚えたりはしなくてもいいと思います。

ウェールズ語で知っておくべき点は、主に2点です。

第一に、イギリスのケルト語ではもっとも街中の看板や地名において見られる可能性が高い言語であろうことです。

一般にウェールズ人は特に郷土愛が強く、連合王国よりもウェールズに強い帰属意識を持っていると思われていますが、実際にウェールズ政府はウェールズ語の復興・普及に熱心で、ウェールズ語による教育や道路標識への使用を奨励しているようです。

ウェールズ道路標識の多くがバイリンガル表記と書いてある記事もありますが、このゲームの体感としてはウェールズ語の標識はあまり見ません。

第二に、LL で始まる固有名詞が多いということです。

動画内でも取り上げた Llandudno のほかに、ディラン・トマスの子供の名前 Llewellyn などウェールズに極めて特徴的な綴りです。

スペイン語の Llama などほかの言語にもありますが、地名で LL から始まるものがあれば高い確率でウェールズであるといえるでしょう。

なお、ウェールズ語の LL は発音が難しいことで知られており、「シュ」や「スル」など日本語訳でも表記揺れが見られます。


<コラム:ケルト語の比較>

以下にゲール語の文例を、Celtic Woman の歌詞から引用します。

'Si do mhaimeo í, 'si do mhaimeo í
'Si do mhaimeo í, cailleach an airgid
'Si do mhaimeo í, ó Bhaile Inis Mhóir í
'S chuirfeadh sí cóistí
Ar bhóithre Cois Fharraige


これをGoogle翻訳にブチ込んでスコットランド・ゲール語にすると

Is i do sheanmhair, is i do sheanmhair
'S i do sheanmhair, a' bhana-bhuidseach airgid
’S i do sheanmhair, ’s ann à Inis Mòr a tha i
Agus chuireadh i coidsichean
Air rathaidean Seaside


さらにウェールズ語にすると

Hi yw dy nain, hi yw dy nain
Hi yw dy nain, y wrach arian
Hi yw dy nain, mae hi'n dod o Ennismore
A byddai hi'n anfon coetsis
Ar ffyrdd Glan y Môr


正確性はお察しですがだいたいこんな感じだそうです。
ウェールズ語が全然ゲール語と違うことがわかるかと思います。

以下に原曲のリンクを用意しています。
全然書いあることと耳に入ってくる音が違いますね。

Celtic Woman " Sí Do Mhaimeo Í "より


ブルトン語

フランス・ブルターニュ地方のケルト語です。
ほとんど書き言葉で見ることはないと思います。

ブルトン語は地名に特徴があり、フランス語ではめったに使われない K から始まる地名、特に Ker- がブルターニュ地方に多く存在しています。

例えばフランス語では Quimper と綴られるカンペールは、ブルトン語名ではKemper となります。
オランダ語やドイツ語の可能性があるので、ベルギーやルクセンブルクとも共通する特徴ではありますが、フランスの地域当てに使えます。

小さな地名ほどブルトン語の名前がそのまま生きているケースが多く、また K から始まるものでなくても、フランス語にしてはやや違和感のある地名であることが多いです。
フランス語の正書法でブルトン語の地名を綴る際には、多少無理をしている場合も多いらしく、トレマの登場頻度も高めです。

フランス語に馴染んでるフシもあり、イギリスのケルト語ほど独特なわけではないので気持ち程度ですが、ブルターニュ地方の地名にはこのようにクセがありますので、地域当ての一環で覚えてみてもいいかもしれません。


7.バスク語

スペイン北部とフランスの一部にまたがるバスク地方の公用語です。

ロマンス語ともゲルマン語ともケルト語とも異なる、「孤立した言語」の代表格として知られている特異的な言語です。

それゆえに判別するのが難しく、地名や断片的な文章から「これがあったらバスク語」という特徴を抽出することが困難です。
見ればわかりますが、ロマンス語やゲルマン語と比較できそうな気配すら感じないのがバスク語の特異たるゆえんです。

それに加えて、バスク語には特徴的な文字がほとんどありません。
x の使い方が独特ですが、それだけでは特定できません。

そのため、バスク語のポイントはスペインやフランス、あるいはそのあたりの地域に見える場所で謎すぎる言語に出会った場合にバスク地方を疑うことができるかどうか、という点に尽きると思います。

以下にバスク語の単語をいくつか紹介します。
近隣の言語からの借用語と思われる単語もありますね。

kale 通り
eskola 学校
arreta 注意
hiri 町
izan ezik ~を除いて
bide bakarra 一方通行
aite zaitut わたしはあなたを愛しています
ez kezkatu 心配しないで
Espainian zaude. あなたはスペインにいます
Bilbotik gertu dago hemen. ここはビルバオの近くです
Euskaraz bakarrik hitz egiten dut. わたしはバスク語しか話しません
Egia esan, zortzi marra dituen oinezkoen pasabideko seinale hau Espainiaren berezitasuna da.
実際、この縦縞が8本の横断歩道標識はスペインに固有のものです
Europako herrialde guztiekin baina Suitzak bost marra edo gutxiago dituztenak erabiltzen ditu, hori gehiegi da, zoramena. 
スイスを除いてほかのヨーロッパの国は5本以下のものを使っているのに、これは狂気的なほどに多すぎです

語順からしてもおかしいですし、固有名詞も変化しています。
なぜかトルコ語やハンガリー語っぽく見えることもあると思います。


8.マルタ語

その名の如くマルタの公用語です。
と言っても、マルタでは英語の方がよく見ると思います。

アラビア語に非常に近い言語で、イタリア語からの借用語が多いです。

見分け方としては文法や語順などが「アラビア語っぽい」という点が重要になってきますが、マルタは言語ではなく街並みと英語圏または左側通行で特定できるので、そんなことを練習する必要はないです。

街中では通りを表す triq を頻繁に見かけるので、マルタであることを確定させるという意味でもこれだけ覚えておきましょう。

ちなみに文字体系も独特で、Ġġ, Ċċ, Ħħと確定文字が3種類、Żżもポーランド語との二択なので景色も合わせればほぼ確定文字と言えます。
よく似た文字がラトビア語やクロアチア語、セルビア語のキリル文字表記にあるので、下手に覚えてそれらと混同しないように注意です。


今回のまとめ


1.まずはドイツ語感を感じるところから

いきなりヤバイことを言っていますが、そう難しいことではないです。

北欧でも使えますので、今のうちから身に着けておくのが吉です。
慣れれば「ドイツ語っぽいけどドイツ語じゃないからオランダ語かノルド語(次回扱う北欧のゲルマン語)かな?」なんて思えるようになります。

2.綴りの特徴が攻略の鍵!

ゲルマン諸語攻略のポイントは綴りです。
ドイツ語に関しては文字でも似た言語と区別するポイントがあります。

オランダ語の母音字の重ね、ドイツ語特有の綴り、そういった点をしっかり押さえていれば、次回に扱う北欧ゲルマン語との区別も極めて感覚的にできるようになるはずです。
その土台の上で文字Tipsを重ねるのが非常に有効な手段です。

3.西ヨーロッパはほぼロマンスかゲルマン!

その他の言語も合わせて紹介しましたが、ケルト語やバスク語など限られた場面、地域でしか使われていない言語ばかりです。

これらは言語Tipsというよりも純粋に国当て・地域当てのTipsとして理解した方が健全で、西ヨーロッパの主要言語はロマンス諸語とゲルマン諸語に二分することができる、と考えれば頭の中でも整理しやすくなるでしょう。

西欧に限らず、言語を体系化して整理することは、数ある言語を理解して攻略に生かしていくうえで、とても有効な手段となります。
結果として、バスク語のような例外にも気づきやすくなるでしょう。



ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
結構ガッツリ調べて誤りのできるだけないように書いているので、少しでも参考になった部分、新しい知見があれば幸いです。

最後に、当ブログではYouTubeと連動したGeoGuessrの解説記事のほかに、解説担当のcatmanが個人的に公開している文学作品も掲載しています。
興味を持たれた方いましたら、そちらも見ていただければ幸甚です。


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