【GeoGuessr攻略記事】ロマンス諸語の見分け方法を徹底解剖

本シリーズはYouTubeで公開している解説動画の内容をベースにして、要点を整理するとともに動画内で説明しきれなかったポイントを補足するための記事です。ぜひ動画本編と合わせてごらんください。

クソ長いので目次も活用してね。

↑元動画はこちら


第2回 西ヨーロッパ編 ロマンス諸語

西ヨーロッパで使われいている主要な言語は大別すると
ロマンス語とゲルマン語の二種類に分類することができます。

当記事で扱うのはラテン語の仲間である「ロマンス語」

文法上の共通点が多く、使われる文字や綴りも似ているため見分けるには慣れも必要ですが、定冠詞や特定の単語・綴りを比較することで簡単に区別することもできます。

経験を積めば、固有名詞や断片的な文章からでも直感的に分かるようになると思いますので、そこを目指していきましょう。


<コラム:格変化について>

ロマンス諸語には格変化が多くはありません。

格変化とは、簡潔に説明すると名詞が動作の対象か主体か、場所を示すのか所有関係を示すのかなどの役割によって形を変えることをいいます。

ゲルマン諸語や東欧のスラヴ諸語などでは重要な文法事項で、このせいで名詞の形が文章中で変化したり、あるいはトルコ語のように接尾辞がくっついたりすることが頻繁に発生します。
固有名詞の語尾が変わることも言語によってはあります。

このためこのゲームで文法を考慮せずに単語を覚えるときは、文章中では格変化が起きている可能性があることを考慮しないといけないのですが、ロマンス諸語や英語においてはその必要性は薄いと言えるでしょう。
ただし、単数複数の違いなどロマンス諸語であっても名詞の形が変わるケースはありますので、ある程度幅をもって判断する姿勢が大切です。

引用ではなくただのコラム欄です

1.イタリア語

イタリアとスイス、およびサンマリノの公用語です。
例外的にヨーロッパの外で公用語としている地域はほとんどありません。

イタリア語単語集

<~通り>  strada / via
<売出し中> vendesi
<注意>   attenzione
<学校>   scuola
<町>    città
<A and B>   A e B

・略称Str.が英語のstreetやルーマニア語のstradăなどと同じ
・英語における接尾辞 -tion は -zione と綴られます


イタリア語の定冠詞

イタリア語の定冠詞は種類豊富で、7種類あります。

il 男性名詞単数
l' 
母音で始まる男性名詞と女性名詞の単数
lo zまたはspなどで始まる男性名詞単数
i 
男性名詞複数
gli 
l'またはloを使う男性名詞の複数
la 
女性名詞単数
le 
女性名詞複数

このうち頻繁に使われるのは il, l', la です。

また、il と gli はイタリア語の可能性が高い単語です。

定冠詞に限れば lo と i もイタリア語に固有ですが、lo は男性単数の代名詞でよく使われるほかスペイン語の中性定冠詞でもあり、i もカタルーニャ語における and に当たるため、単独では判断できません。


<コラム:定冠詞について>

定冠詞とは英語の the に相当するパーツで、主にかかる名詞がすでに話題に上ったもの、または文脈上特定の何かであるときに使われる冠詞で、不定冠詞と区別されます。

ロマンス諸語とゲルマン諸語に顕著な文法事項で、特にロマンス諸語においては極めて頻繁に使われます。
性数ごとに形が決まっており、言語ごとに違いがはっきりしているため、ロマンス諸語の区別において極めて重要な要素であると言えます。

lo spaghetto は特定の1本のスパゲッティ


イタリア語の前置詞

イタリア語の前置詞は a, di, in, da などです。
このうち英語の of に相当する di はほぼイタリア語確定です。

また、ロマンス諸語では定冠詞の縮約と呼ばれる現象が起こります。

これは前置詞と定冠詞が合わさって一つの単語となる現象で、イタリア語はポルトガル語と並んでこの縮約形の使用頻度が高い言語です。

イタリア語ではa, di, in, da, suなど主要な前置詞とすべての定冠詞の組み合わせに縮約形が用意されており、なおかつ前置詞単体よりも縮約形として使われることの方が多いです。

具体的には以下の通りです。
al, alla, all', allo, ai, agli, alle
del, della, dell', dello, dei, degli, delle
nel, nella, nell', nello, nei, negli, nelle


al と del を除いてほぼ全てがイタリア語確定なので、是非覚えましょう。
フランス語やスペイン語では a la や de la と書かれるので、そのように書かれていたら逆にイタリア語ではないと言えるでしょう。

ただし地名には定冠詞がつかないので街中では "Terme di Saturnia" のように前置詞単体で見ることも多いです。文章中では縮約形がよく使われます。
この場合でも前置詞 di からイタリア語の地名だとわかります。


イタリア語の見分けポイント

・ロマンス諸語の中でも特に母音が多い
スペイン語やポルトガル語に比しても母音過多の傾向が強いです。
特にほぼすべての単語が母音aieoで終わることがイタリア語の特徴です。

・特徴的な定冠詞および縮約形
男性単数の一般的な定冠詞 il が固有なので分かりやすいです。
alla や dell' など特に la や l' の縮約形が分かりやすいと思います。

・方言差に注意
標識や看板はほぼすべて標準イタリア語表記ではありますが、ローマ方言など方言差の大きい言語のひとつです。
特にサルデーニャ島には独自の言語が残っており、地名において本土との差が顕著です。動画内で紹介しているように u で終わる地名はイタリアならサルデーニャ島を疑ってみるのがいいでしょう。

<コラム:サルデーニャ語>

サルデーニャ語はイタリア語の方言ではなく、古いラテン語の特徴をそのまま残した特異なロマンス語として知られています。

地名以外であまり見ることはないと思いますが、簡潔に紹介します。

例えば定冠詞が su / sa / sos / sas と非常に特徴的で( su はイタリア語の前置詞でもありトルコ語で「水」を表す単語でもあります)、過去分詞がイタリア語の -ato / -uto / -ito に対して -adu / -idu / -idu だったりします。

基本イタリアのくせに地名が U で終わってるとかで判断してます。

ほぼ Wiki の受け売りです



2.スペイン語

スペインを始めとして中南米の多くの国の公用語です。
カリフォルニア州やテキサス州にもスペイン語の地名が多くあります。

スペイン語単語集

<~通り>  calle
<売出し中> (se) vende
<注意>   atención
<学校>   escuela
<町>    ciudad
<A and B>   A y B

・学校については形容詞の escolar もよく見るので注意
・英語における接尾辞 -tion は -ción と綴られます


<コラム:スペイン語圏の通り>

スペイン語圏は通りの名前で地域を判別できる場合があります。

たとえば Jr. と冠した通りは(もちろん英語の junior でなければ)ペルーに特徴的で、略さずに jirón とも言います。

コロンビアでは calle に加えて carrera という通りの表現を使います。
英語における street と avenue の関係性に似ているようです。

のちほど説明しますが、スペイン国内には carrer という表現があり、これは標準スペイン語ではなく、カタルーニャ語圏に特有のものです。

スペイン国内でポルトガル語風の rúa という道があれば、ガリシア州である可能性が極めて高いです。これも後ほど説明します。

なお calle は一般には「カジェ」と読まれますが、標準スペイン語の首都方言では素直に「カリェ」と発音します。
こうした発音も地域ごとに特色がありますが、書き言葉しか扱えないゲームですのでさしあたり関係ありません。

ajillo はアヒージョなのに paella はパエーリャ


スペイン語の定冠詞

スペイン語の定冠詞は非常に単純です。

el 男性名詞単数
los 男性名詞複数
la 女性名詞単数
las 女性名詞複数

la を除いて定冠詞としてはスペイン語確定の形です。
イタリア語同様男性単数の el が非常にわかりやすいですが、カタルーニャ語でも使われるのでヨーロッパの場合は注意が必要です。

このほかに中性定冠詞 lo がありますが、使われる場面は限定的なうえスペイン語確定ではないので、気にしなくていいと思います。


スペイン語の前置詞

スペイン語の前置詞は a, de, en などです。

主要な前置詞の中で直ちに確定するものはありませんが、ポルトガル語と見分ける際には en, con などが使えます。

勘違いされがちですが、de la という前置詞+定冠詞はスペイン語確定ではありません。イタリア語なら della、ポルトガル語なら da となるのでこれらは排除できますが、フランス語にもある形です。
しかし、ポルトガル語との区別には有用といえるでしょう。

スペイン語はロマンス諸語の中では縮約形が少ないです。
具体的には a + el の al および de + el の del の二種類です。

いずれもイタリア語と共通なので、これら二つを見たときはイタリア語確定と思わないようにするのがポイントです。
女性定冠詞の la が縮約形を作っていた場合高い確率でイタリア語です。


スペイン語の見分けポイント

・and が y になっている
y
という単語は and の対訳に限らずスペイン語を特徴づける単語です。
スペイン語の and は必ず y になるわけではなく、他の言語に y がないわけでもないですが、ロマンス系でこの単語があればスペイン語と判断できます。

・特徴的な定冠詞
男性単数の el が特徴的ですが、カタルーニャ語に注意。
縮約形をあまり作らないという点も頭に入れておきましょう。

・特徴的な綴り
-ciónという接尾辞はスペイン語である可能性が高いです。
escuela や puerto など訛ったような ue の綴りもユニークで、これらは次に紹介するようにポルトガル語では escola, porto になります。

・Ññ を使っている
特殊な文字は少ないですが、Ññ はスペイン語確定の文字です。
逆にこれを nh と綴っていたらポルトガル語などの可能性が高まります。


3.ポルトガル語

ポルトガルとブラジルの公用語で、しばしばブラジル語とも言われます。
スペイン語とよく似ているのでその区別を中心に練習しましょう。

ポルトガル語単語集

<~通り>  rua
<売出し中> vende など
<注意>   atenção
<学校>   escola
<町>    cidade
<A and B>   A e B

・スペイン語やカタルーニャ語との違いを重点的に覚えましょう
・英語における接尾辞 -tion は -ção と綴られます


ポルトガル語の定冠詞

ポルトガル語の定冠詞も単純で、また特徴的です。

o 男性名詞単数
os 男性名詞複数
a 女性名詞単数
as 女性名詞複数

スペイン語と比べて L が脱落したような形です。

定冠詞としてはいずれも固有ですが、単数形は分かりづらいです。
全体を見て、あるいは縮約形で確定させるのが基本です。


ポルトガル語の前置詞

ポルトガル語の前置詞は a, de, em などです。

特にスペイン語と比較して、em や com など綴りの m が特徴になります。
これも単体で直ちに特定できるものは少ないです。

一方で、ポルトガル語はイタリア語と並んで縮約形が多い言語です。
やはり主要な前置詞と定冠詞すべての組み合わせに縮約形があり、イタリア語とは異なった組み合わせの縮約形もあります。

具体的には以下の通りです。
ao, aos, à, às
do, dos, da, das
no, nos, na, nas

pelo, pelos, pela, pelas

特徴的な形が多いですが、特に分かりやすいものは aodo などです。
これらがあったらポルトガル語確定と言っていいでしょう。

一方で、イタリア語の前置詞 da、ドイツ語の定冠詞 das、スラヴ諸語の前置詞 na など紛らわしいものも混在しています。
他の要素も合わせて判断するようにしましょう。


ポルトガル語の見分けポイント

・鼻母音ãõ
鼻母音を表す文字 Ãã と Õõ はポルトガル語に特徴的な文字です。
Ããはポルトガル語確定、Õõはポルトガル語またはエストニア語です。
São Paulo や atenção のように極めて頻繁に使われる文字です。

・定冠詞と縮約形
ロマンス系の主要言語では唯一 L の音が抜けた定冠詞や、それらから作られる特徴的な縮約形を覚えると、特定の幅が一気に広がります。
特に do は使える場面が多いので是非覚えましょう。


<コラム:スペイン語との区別>

上述したポルトガル語自体の見分けポイントに加え、是非押さえておきたいのがスペイン語と区別するためのポイントです。

スペイン語とポルトガル語は綴りの全体感がよく似ているため、
ある程度感覚でロマンス諸語が見分けられるようになっても区別が難しい
というのが第一の理由で、さらにラテンアメリカが確定している場合、
この二言語さえ区別できればブラジルを一瞬で特定できる
というのが第二の理由です。

・ポルトガル語に特有な文字
例えば Çç はポルトガル語を含むヨーロッパ全域の様々な言語で使われていますが、スペイン語では使われません
カタルーニャ語の可能性があるので確定はできませんが、特に南米の場合カタルーニャ語は考えづらいので、ブラジルの可能性が高くなります。
またサーカムフレックス^がついた文字もスペイン語では使わないので、フランス語やルーマニア語でなければポルトガル語に推定できます。

・定冠詞や前置詞
スペイン語かポルトガル語のどちらかである可能性が高い場合、これらの事項でも確定する幅が格段に広がります。
例えば aldel でもスペイン語に確定できますし(ただし南米にイタリア語の表記がないとは言い切れない、理由は前回の補足参照)、そもそも定冠詞の形がこの二つの言語ではすべて異なっています

・一部の単語の綴り
ciudad と cidade、「ニャ」の音を nh で綴っているなど、定冠詞と同じように他の単語による区別の幅も広がります。
法則的に理解すれば、universidad と universidade のような単語を、知っている単語からの類推によって区別することができます。
他にも、and を e と表記している場合スペイン語の可能性が(ゼロではないですが)低いと判断するといったこともできます。

ブラジルもポルトガルもナンバーと電柱が特徴的なので助かる


<コラム:ポルトガル語の音韻>

ポルトガル語の発音は(このゲームでは関係ないですが)かなり特徴的でスペイン語ともかなりの差異があります。

その一つがすでに紹介した鼻母音の有無ですが、それ以外にもポルトガル語は語頭などの R を「ハ」行のような音で読むという特徴があります。母音の発音にも(これはポルトガル語に限らずですが)癖があります。
Rio de Janeiro は「ヒーウ・ジ・ジャネイル」という風に読むのです。

アラビア語の音韻の影響とのことですが、音声版GeoGuessr(悪夢!)があったらスペイン語とポルトガル語は容易に区別できるのかもしれません。

???「この園内放送はタロンガ動物園の迷子アナウンスですね」

4.フランス語

フランス・モナコ・ベルギー・ルクセンブルク・スイスの公用語で、他にもカナダのケベック州、セネガルやチュニジアなどでも使われています。

フランス語単語集

<~通り>  rue
<売出し中> à vendre
<注意>   attention
<学校>   école
<町>    ville
<A and B>   A et B

・読み方も意識しながら覚えるのがいいかもしれません
・英語における接尾辞 -tion は -tion とそのまま綴られます


フランス語の定冠詞

フランス語の定冠詞は少し特殊です。

le 男性名詞単数
la 女性名詞単数
l' 母音で始まる男性名詞と女性名詞の単数
les 男性名詞および女性名詞の複数

どれも他のロマンス諸語の何かしらと共通する形なので、定冠詞のみから確定させることは難しいです。

ただし、le はイタリア語の女性複数、les はカタルーニャ語の女性複数とのみ重なるため、フランス語の可能性が高いと言ってもいいでしょう。


フランス語の前置詞

フランス語の前置詞は à, de, enなどです。

これもポルトガル語の a + a だったりスペイン語の前置詞だったりと共通部分が多く、単体の前置詞のみから特定することはやはり難しいです。

フランス語の文法で特筆すべきは縮約形の形です。
縮約を起こす組み合わせは決まっていて、以下の通りです。

à + le → au
à + les → aux
de + le → du
de + les → des

des がカタルーニャ語の縮約形でもある以外フランス語確定の形です。

特に du はポルトガル語の do と合わせて覚えたい表現です。
前置詞単体の de はイタリア語以外で使われるので気を付けましょう。


フランス語の見分けポイント

・特徴的な縮約形
フランス語は上述の通り縮約形が特徴的です。
定冠詞も頻度を考慮すれば推測に使えることもあります。

・綴り字が非常に複雑
フランス語はロマンス系言語の中では飛びぬけて綴り字と発音が一致しない言語です。英語と違って法則性は強いですが、子音母音共に発音しないものも多く、全体としてかなり複雑な綴りという印象を受けます。
冒頭で読み方を意識した方がいいと書いたのもそのためで、この特徴的な綴り字を攻略することがフランス語を判断する近道のような気がします。

・英語に近い単語が多い
感覚的な基準ではありますが、ロマンス系の中でもっとも英語に近い印象を受ける言語がフランス語です。
実際、綴り字の複雑さも共通しており、英語の語彙にはフランス語からの借用語が多くあります。子音で終わる単語が多い(多くは発音されないが綴りに残っている点が特異)という点も共通しています。


<コラム:ロマンス諸語の文字>

ロマンス諸語に関しては、文字での特定が困難です。
不可能ではありませんが、複雑な場合分けを覚えていく必要があるので、困難かつ間違えるリスクも高くなると言えるでしょう。

ここではロマンス諸語の表記に使う文字について特集します。

一般的なアルファベットのうち、k と w はロマンス諸語の表記にはあまりに使いません。j はイタリア語ではほとんど使われず、代わりに gia, giu, gio の綴りを使います。Buongiorno と Bonjour はいい例でしょう。

ダイアクリティカルマーク(発音区別符号)付きの文字(この記事では特殊アルファベットと総称します)については、特定に役立つものはすでに紹介しています。他にも以下のような文字があります。

まず、共通してアクセント符号がどの言語でも頻繁に使われます。
á のようなアキュートアクセントは東欧などでも使われますが、àのようなグレイヴアクセントはロマンス諸語に特有の符号です。

â のようなサーカムフレックス付きの文字を使っているのは、主にフランス語とポルトガル語、東欧編で扱うルーマニア語の三つです。

ç はロマンス諸語の中ではフランス語・ポルトガル語・カタルーニャ語において使われています。
スペイン語で使っていないというのがポイントになるでしょう。

ï のようなトレマ符号の使用は限定的ながらフランス語やカタルーニャ語などを中心にイタリア語を除く各言語に認められます。
この符号は基本的にはゲルマン諸語のウムラウトであることが多いです。

文字が本領を発揮するのは東欧

5.カタルーニャ語

アンドラの公用語であり、スペインのカタルーニャ州、バレアレス諸島でも使われている言語です。バレンシア州で使われているバレンシア語も、カタルーニャ語の方言と見なすことができます。
スペイン語との区別を中心に覚えていくことになりますが、ポルトガル語などと混同しないように気を付けていきましょう。

カタルーニャ語単語集

<~通り>  carrer
<注意>   atenció
<学校>   escola
<町>    ciutat
<A and B>   A i B

・スペイン語との違いを意識して覚えましょう
・英語における接尾辞 -tion は -ció と綴られます


カタルーニャ語の定冠詞

カタルーニャ語は定冠詞が独特です。

el 男性名詞単数
l' 母音で始まる男性名詞と女性名詞の単数
els 男性名詞複数
la 女性名詞単数
les 女性名詞複数

el がスペイン語と、les がフランス語と、la がポルトガル語を除く他のロマンス諸語と重なるので判断が難しいです。
els のみがカタルーニャ語に特有の定冠詞です。


<コラム:定冠詞の方言差>

カタルーニャ語においては定冠詞に強い方言差があるようです。
以下、カタルーニャ語版 Wiktionary 等のソースからのガバ翻訳に基づいた内容ですので、誤りがある可能性があることを念頭にお読みください。

主な特殊形は以下に示す通りです。

es 男性名詞の単数および複数
sa 女性名詞単数
s' 母音で始まる男性名詞と女性名詞の単数
ses 女性名詞複数

コスタ・ブラーバやバレンシア州の一部で使われる「サラート」という方言に見られる特徴のようですが、口語的なものでもあるらしく、書き言葉において見かけるケースは Sa Riera のような地名を除いて稀みたいです。
そして定冠詞 sa はサルデーニャ語にもあります。

文語では標準語と同じ el / la / els / les が用いられるそうです。

また、バレアレス諸島方言においても特殊な定冠詞が存在します。

en 男性名
na 女性名
n' 母音で始まる人名
so 前置詞 amb に続く男性名詞単数(イビサ・マヨルカ方言)
sos 前置詞 amb に続く男性名詞複数(イビサ・マヨルカ方言)
ets 母音で始まる男性名詞複数(マヨルカ・メノルカ方言)

人名定冠詞以外は口語表現のようです。
しかし人名定冠詞も形が紛らわしいので役に立つかは微妙です。

通常の定冠詞は標準語のものを使う場合が多いようですが、口語レベルではサラート方言のものが使われることもあるようです。これについては確実な情報が得られていないので参考程度に留めておいてください。

les で一度だけ敗北しました


カタルーニャ語の前置詞

カタルーニャ語の前置詞はスペイン語とほぼ同じです。

縮約形は男性定冠詞のみが作ります。
複数形も縮約形を作る点でフランス語に類似しています。

a + el → al
a + els → als
de + el → del
de + els → dels

複数形 els の縮合形はやはりカタルーニャ語確定です。
al と del がカタルーニャ語にも存在することも覚えておきましょう。


カタルーニャ語の見分けポイント

・スペイン語とフランス語のハイブリッド
基本的にスペイン語によく似ているのですが、違う点も多いのでスペイン語かフランス語かわからない、という印象を受けるようになります。
スペイン語かフランス語(かポルトガル語)で迷ったらカタルーニャ語も選択肢に入れてあげるといいでしょう。

・国がスペインまたはアンドラであることを確かめる
言語としてはかなり判別が難しいので、怪しいと思ったら国をスペインに絞ったうえで、標準語なのかカタルーニャ語なのかを判断して地域当てに生かしていくというのも戦略の一つです。
フランス語やポルトガル語と間違えることも多い言語なので、そういった意味でも言語によらない国特定が重要と言えるでしょう。


<コラム:スペイン語との区別>

カタルーニャ語は最初から意識しすぎるとスペイン語やポルトガル語の判断を鈍らせるだけだと思いますので、まずは主要言語から覚えていく、というスタンスでいいかと思います。

ある程度分かるようになってきたら、カタルーニャ語を見た時に違和感を覚えるようになると思いますので、そうなったらスペイン語とカタルーニャ語を見分ける細かいポイントも覚えていきましょう。

・and の変化
スペイン語:y カタルーニャ語:i ポルトガル語:e
・-tion の変化
スペイン語:-ción カタルーニャ語:-ció ポルトガル語:-ção
・-dad の変化
スペイン語:-dad カタルーニャ語:-tat ポルトガル語:-dade
・-ue- の変化
スペイン語:puerto カタルーニャ語:porto ポルトガル語:porto

バルセロナ一点読み決めると気持ちいい

6.ガリシア語

スペイン北西部のガリシア州の公用語です。
ポルトガル語によく似ているのでよく事故死します。

ガリシア語単語集

<~通り>  rúa
<注意>   atención

・ポルトガル語との違いを意識して覚えましょう
・英語における接尾辞 -tion はスペイン語同様 -ción と綴られます


<コラム:ガリシア語の文法>

ガリシア語の文法は慣れないうちに覚えるとスペイン語やポルトガル語の判別に多大な混乱を来しそうなのでコラムに入れました。

定冠詞はポルトガル語と同じ o / os / a / as ですが、特定の語の後で使われるスペイン語風の第二形式 lo / los / la / las が存在します。

前置詞のみスペイン語に似て、con や en を使っています。

縮約形はポルトガル語同様多彩に用意されています。
ó, ós, á, ás または ao, aos, á, ás
do, dos, da, das
no, nos, na, nas
polo, polos, pola, polas

ポルトガル語とよく似ていますが差異もあります。

ガリシア語は人称代名詞も縮約を起こします。
これはポルトガルのポルトガル語と共通する点だそうです。

間接目的語を作る三人称代名詞 el / eles / ela / elas が前置詞と縮約します。
del, deles, dela, delas
nel, neles, nela, nelas
原形の時点でスペイン語の男性定冠詞 el が、縮約形に del や nel が出現していますが、構造が異なっているので注意すれば区別できます。

ポルトガル語の場合は ele / eles / ela / elas ですので
dele / deles / dela / delas となり独特の形を取ります。
スペイン語ではおそらくですが縮合しないはずです。

弱形代名詞どうしの縮合もポルトガル語同様起こります。
mo, mos, ma, mas(一人称単数)
cho, chos, cha, chas
(二人称単数)
llo, llos, lla, llas
(三人称単数)

これも(というより代名詞自体が)ポルトガル語と異なった形ですが、組み合わせが多いのであまりに気にしなくてもいいと思います。

代名詞は定冠詞に比べて街中での使用頻度が低いので、気にしすぎるのも返ってよくないです。本編で触れていないのもその理由からです。

出典:http://sjsrom.ec-net.jp/studrom/049/studrom_049_003.pdf など


ガリシア語の見分けポイント

・ほぼポルトガル語、たまにスペイン語
文法的にはスペイン語の影響も強いようですが、見かけだけでいえばほとんどポルトガル語にしか見えないことが多いです。
ポルトガル語とスペイン語の語彙が混ざっていたらガリシア語を疑うというのが基本的なスタンスかとは思います。

・鼻母音を使わない
ポルトガル語との最大の差別化点です。
明らかにポルトガル語の語彙があって -ción とか言っていたらガリシア語の可能性が高いと思っていいはずです。

・スペイン語とポルトガル語との相互比較
ポルトガル語:-ção ガリシア語:-ción スペイン語:-ción
ポルトガル語:rua ガリシア語:rúa スペイン語:calle
ポルトガル語:cidade ガリシア語:cidade スペイン語:ciudad
ポルトガル語:plaia ガリシア語:plaia スペイン語:playa



今回のまとめ

ロマンシュ語?スペインの変な言語の調査で力尽きたのでまたの機会に…


1.定冠詞や前置詞・単語で見分けるのが基本!

似ている言語が多いので、特定の単語や定冠詞などを比較して見分けるのが確実かつ楽な方法です。

カタルーニャ語やガリシア語などは最初のうちは考えないのも手です。
イキってバルセロナ一点読みしてパリだったら嫌ですからね。

2.綴りや全体感で見分けられるようになろう!

共通する単語も多いのでちゃんと覚えようとすると大変です。
詰まるところ、手っ取り早いのが「勘」と「感覚」です。

世界史を勉強したことがある人は、そういった感覚を掴むのに苦労はいらないと思いますが、特に理系出身者には厳しいかと思います。
食べ物や有名人の名前からも案外勉強できるかもしれません。

綴りの特徴などから言語ごとのおおまかな感覚を身に着けると、実生活においても結構役に立つのではないでしょうか?

3.特に似ている言語の区別を練習しよう!

スペイン語とポルトガル語、スペイン語とカタルーニャ語、ポルトガル語とガリシア語と、感覚だけでは区別が難しい言語もあります。

それらの言語の区別を重点的に覚えていくと、コスパよく技術を上げていくことが可能になりますね。
プロは南米のスペイン語の方言差を勉強してるとかしてないとか…


クソ長い記事でしたが、ここまで(断片的にでも)読んでいただいた方、ありがとうございます。

最後に、当ブログではYouTubeと連動したGeoGuessrの解説記事のほかに、解説担当のcatmanが個人的に公開している文学作品も掲載しています。
興味を持たれた方いましたら、そちらも見ていただければ幸甚です。

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