【GeoGuessr攻略記事】アジアの言語の見分け方法を徹底解剖

本シリーズはYouTubeで公開している解説動画の内容をベースにして、要点を整理するとともに動画内で説明しきれなかったポイントを補足するための記事です。ぜひ動画本編と合わせてごらんください。

↑元動画はこちら


第7回 アジア編

今回はアジアの言語をまとめて扱います。

基本的には文字で特定できるので、文字の解説がメインになります。
なお、日本語・韓国語・中国語に関しては省略します。


1.ラテン文字表記の諸言語

アジアの言語の中にはラテン文字を表記に用いる言語がいくつかあります。
これらは文字での特定が難しいため、見分けるためには語彙を詰めていく必要がありますが、系統的にも似ている言語が分類されるため非推奨です。

電柱や対面通行・通貨などから見分けるしかないでしょう。

なおキルギス語とモンゴル語は既に東欧編で扱ってしまいましたが、キリル文字表記の言語です。


1.マレー語とインドネシア語

互いに非常によく似た言語で、素人が区別するのはほぼ不可能です。

アラビア文字由来のジャウィ文字(見た目はほぼアラビア文字)が使われる場合がマレーシアを中心にあります。

特殊なアルファベットは特に使いません。
英語とは系統が違うので簡単に見分けられるでしょう。


2.フィリピン語

これも素人がマレー語などと区別するのはかなり難しいです。
言語の差を覚えるくらいなら対面通行で特定した方がマシです。

なお、かつてフィリピンをスペインが支配していたことから、フィリピン語およびその基となったタガログ語ではÑñの文字が使われます。
頻度は低いですが東南アジアではフィリピン語に確定できる文字です。


<コラム:東南アジアのTips>

あまりにも言語の解説が雑になってしまったのでTipsでごまかします。

<言語>
マレーシア:止まれの標識がBERHENTI
インドネシアHATI HATI の標識がよくある
フィリピン:英語もよく使われている

<電柱>
マレーシア:四角形の黒いテープがよく貼ってある
フィリピン:メキシコ式の八角柱の電柱がたまにある

<ナンバープレート>
マレーシア:黒っぽい・バイクにフロントの着用義務なし
インドネシア:黒っぽい・バイクにフロントの着用義務あり
フィリピン:基本は白で商用車が黄色

<道路>
マレーシア:白二本線の中央分離帯
インドネシア:オレンジ色で実線の中央分離帯

<通貨>
マレーシアRM(リンギット)
インドネシアRp(ルピア)
フィリピンP(フィリピン:ペソ) ※本来は€のように二本線が入る

<その他>
マレーシア:道の舗装が比較的しっかりしている
インドネシア:カラフルな謎の旗がよく立っている
フィリピン:~ City という地名がとても多い

密林に落とされたら終わり



3.マオリ語

ほとんど見ないですがニュージーランドの先住民の言語です。

地名によく残っていて、ハワイのような響きがあります。
店名など固有名詞としても見かけることがあります。

マオリ語に限らずポリネシアの言語にはある程度共通して、ラトビア語と同様の長音記号 Ā を使うという特徴があります。
この符号をラトビア語や日本語のローマ字以外で見かけたら、ニュージーランドを筆頭とした太平洋の離島の可能性が高いはずです(広義では日本も太平洋の離島と言えなくもないですが)。



2.ヘブライ文字

イスラエルの公用語であるヘブライ語に使われます。
このゲームではヘブライ文字=ヘブライ語と思って概ね問題はありません。

ちなみにイスラエルではロシア語がまあまあ使われていて、動画内で紹介したアディゲ語以外にも普通にキリル文字を見ることがあります。

以下にヘブライ語の文例を示します。
当記事では全てフランス人権宣言第1条のフランス語原文をGoogle翻訳にブチ込んで出力したものを文例として使っています。

文字の形さえわかればいいというゲームの性質に基づいて、翻訳の正確性は一切考慮していませんのでご了承ください。

.גברים נולדים ונשארים חופשיים ושווים בזכויות
.הבחנות חברתיות יכולות להתבסס רק על תועלת משותפת

真四角に近いシンプルでカクカクした字形が特徴的です。
アラビア文字同様右から左に綴ります。


<コラム:翻訳の原文>

翻訳に使った原文を示します。

Les hommes naissent et demeurent libres et égaux en droits.
Les distinctions sociales ne peuvent être fondées que sur l'utilité commune.

日本語に翻訳させるとこうなります。

人間は生まれてから自由で平等な権利を保ちます。
社会的な区別は、共通の効用に基づいてのみ成り立ちます。

実際の翻訳の精度はこれ以下だと思います。

まるで胎児には人権がないかのような言いよう



3.アラビア文字

ご存じアラビア語の表記に使われる文字です。

アラビア語には口語と文語の違いがあり、標準語としての文語(聖典の言語たる古典アラビア語に基づいたもの)が存在する一方で、口語アラビア語は地域ごとに大きな差が見られるなど特異な性質を持った複雑な言語です。

広義的にはパキスタンやマレーシア、出題範囲外ではイランやインドの特定の州などもアラビア文字圏に入りますが、ここでは狭義のアラビア文字、つまりアラビア語のアラビア文字を扱っていきます。

このゲームで言えば、ヨルダン・UAE・カタール・チュニジア・パレスチナ及びイスラエルがアラビア語圏に当たり、これらの国々は共通してアラビア語圏=アラビア文字を使っていると考えて取りあえず問題ありません。

これと非常によく似た文字(見分けつかないことも多い)が各地のイスラム圏で使われていると考えておくのがいいでしょう。

以下に文例を示します。
よく知られた文字ですので意識しなくても分かるかと思います。

يولد الرجال ويظلون أحرارًا ومتساوين في الحقوق
يمكن أن تستند الفروق الاجتماعية فقط على المنفعة العامة

書体差やフォント差が激しいです。以下に別のフォントを示します。
いろいろな書き方に慣れておくといいでしょう。

Google翻訳の画面です



4.ウルドゥー文字

パキスタンウルドゥー語に使われる文字です。

アラビア文字(厳密にはペルシア文字)を基にしており、広義的にはアラビア文字体系の範疇に含めることもできます。

以下に文例を示します。

مرد پیدا ہوتے ہیں اور آزاد اور حقوق میں برابر رہتے ہیں۔
سماجی امتیازات صرف مشترکہ افادیت کی بنیاد پر ہو سکتے ہیں۔

これだと本来のアラビア文字と大差ないように見えますが、実際のウルドゥー語はこのような楷書体ではなくナスタアリーク体と呼ばれる流麗な筆記体風の書体を好む傾向があり、この書体によって見分けることができます。

これは厳密な文字の違いではなく、アラビア文字内の楷書と行書の差のようなものですが、見分けるうえでは非常に便利かと思います。
以下にナスタアリーク体のサンプルを示します。

ラホール要塞のストビューから拝借しました

パキスタンはこのイメージで覚えておくと非常にわかりやすいです。

ちなみに、最近パキスタンはカバレッジが増えたようで、ラホール以外のテーマパークや施設を出してくるようになりました。無理。



5.デーヴァナーガリー

これより先はすべてブラーフミー系文字などと呼ばれるインド系の文字の一群になります。
しかし、文字ごとに差異が激しく、似ても似つかないような文字もあるため特に気にせず文字ごとに覚えてしまって問題ありません。

なお、インドについては World の出題傾向を基に地域を絞って文字を紹介していますので、実際にはより多くの言語や文字が使われています。
マップによってはそれらの地域が出る可能性がある点は注意です。

このうち、デーヴァナーガリーはヒンディー語など北インドでよく使われている文字で、World では概ねニューデリー確定です。

以下に文例を示します。

पुरुष पैदा होते हैं और स्वतंत्र रहते हैं और अधिकारों में समान होते हैं।
सामाजिक भेद केवल सामान्य उपयोगिता पर आधारित हो सकते हैं।

まず、単語の上部を貫く横線が特徴的です。
字形としては鍵のような形をしており、横線の上から左上方向に直線的、または右方向に弧を描くように飛び出しているのが特徴的です。



6.ベンガル文字

ベンガル語などの表記に使われる文字で、World ではバングラデシュ確定ですが本来はインドのベンガル州などでも用いられています。

以下に文例を示します。

পুরুষরা জন্মগ্রহণ করে এবং স্বাধীন এবং সমান অধিকারে থাকে।
সামাজিক পার্থক্য শুধুমাত্র সাধারণ উপযোগের উপর ভিত্তি করে করা যেতে পারে।

デーヴァナーガリーとよく似ていて、上部を横線が貫いています。
音符のような符号じみた形をしており、横線の上からは湾曲した線が様々な方向に向かって飛び出しているのが特徴的です。



7.グジャラーティー文字

グジャラート語の表記に使われる文字で、World ではグジャラート州、特に中心地のアフマダーバードでほぼ確定です。

以下に文例を示します。

પુરુષો જન્મે છે અને સ્વતંત્ર અને અધિકારોમાં સમાન રહે છે.
સામાજિક ભેદ માત્ર સામાન્ય ઉપયોગિતા પર આધારિત હોઈ શકે છે.

この文字には上部を貫く横線はありません。
しかしそれ以外の字形はデーヴァナーガリーにそっくりです。

デーヴァナーガリーから横線を抜いたような文字、と考えていればほかのインドの文字とは簡単に見分けられるようになるはずです。



8.カンナダ文字

カンナダ語などの表記に使われる文字で、主にインド中南部のカルナータカ州で用いられています。
このあたりはカバレッジが広く特定の都市に確定はできませんが、中心都市であるベンガルールのあたりが安定するかと思います。

以下に文例を示します。

ಪುರುಷರು ಹುಟ್ಟಿದ್ದಾರೆ ಮತ್ತು ಸ್ವತಂತ್ರವಾಗಿ ಮತ್ತು ಹಕ್ಕುಗಳಲ್ಲಿ ಸಮಾನವಾಗಿ ಉಳಿಯುತ್ತಾರೆ.
ಸಾಮಾಜಿಕ ವ್ಯತ್ಯಾಸಗಳು ಸಾಮಾನ್ಯ ಉಪಯುಕ್ತತೆಯನ್ನು ಮಾತ್ರ ಆಧರಿಸಿರಬಹುದು.

横棒の面影もわずかにありながら、急激にまんまるな字形になりました。
後述のシンハラ文字と似ていますが、カンナダ文字は横長でシンハラ文字ほどぐるぐるしていない点、あるいは国が違う点で見分けられます。



9.タミル文字

タミル語などの表記に使われる文字で、インドでは主にタミル・ナードゥ―州で使われているほか、スリランカシンガポールでも公用語の一つに指定されています。

やはりカバレッジが広く安定して高得点を狙うのは難しいですが、よく出題される場所としてはコインバトール周辺が挙げられます。

以下に文例を示します。

ஆண்கள் பிறந்து சுதந்திரமாகவும் உரிமைகளில் சமமாகவும் இருக்கிறார்கள்.
சமூக வேறுபாடுகள் பொதுவான பயன்பாட்டின் அடிப்படையில் மட்டுமே இருக்க முடியும்.

さらに横線の面影が薄くなり、字形としてはかなり独特なものです。
南部インドの文字の中では比較的丸みが少ないのが特徴で、箱形の文字が多く使われています。



10.シンハラ文字

スリランカのマジョリティであるシンハラ語の表記に使われる文字で、インド本土ではほぼ使われていないのでスリランカ確定です。

以下に文例を示します。

මිනිසුන් ඉපදී නිදහසේ සහ අයිතිවාසිකම්වලින් සමානව සිටිති.
සමාජ වෙනස්කම් පදනම් විය හැක්කේ පොදු උපයෝගීතාව මත පමණි.

極めて丸みが強いのが特徴で、渦巻き状の文字が多いです。
字形はカンナダ文字と比べてもかなり複雑で、上部を貫く横線の面影はもはやほとんど感じられなくなっています。



11.チベット文字

チベット語などの表記に使われる文字ですが、このゲームにおいては基本的にブータンの公用語ゾンカ語でしか見ることはありません。

以下に文例を示します。

མི་དེ་ཚུ་ རང་དབང་དང་འདྲ་མཉམ་སྦེ་ སྐྱེས་ཏེ་རང་དབང་སྦེ་གནས་ཏེ་ཡོདཔ་ཨིན།
མི་སྡེའི་དབྱེ་ཁག་འདི་ སྤྱིར་བཏང་ཕན་ཡོན་ལུ་ གཞི་བཞག་སྟེ་ རྐྱངམ་གཅིག་ཨིན།

全体としてはデーヴァナーガリーに似ていますが、非常に直線的で下向きの線が長く伸びているのが特徴的です。
よく言われるのが、刺さったら痛そうなのがチベット文字です。



12.タイ文字

その名の通りタイ語の表記に使われる文字で概ねタイ確定です。
ラオスでもタイ語が使われている場合があるようなので注意が必要ですが、それはまた別の話です。

以下に文例を示します。

ผู้ชายเกิดมาและยังคงเป็นอิสระและมีสิทธิเท่าเทียมกัน
ความแตกต่างทางสังคมสามารถขึ้นอยู่กับประโยชน์ส่วนรวมเท่านั้น

タイ、ラオス、カンボジア三か国の文字はよく似ているだけでなくフォントによって全く違う文字に見えることがよくあるため、基本的には文字プラスアルファの情報から判断したい地域です。

インド本土の文字と区別出来て、典型的なフォントの時にどの文字であるか分かるようになれば言語としては十分かと思います。
以下に追加の判断基準となるTipsを示します。

・左側通行
・四角形で小さな丸い穴がぽつぽつと開いた電柱
・国旗と共に黄色い旗が掲げられていることがある



13.ラーオ文字

ラオスの公用語ラーオ語で使われる文字です。
タイ文字の系統に属し、形もよく似ています。

以下に文例を示します。

ຜູ້ຊາຍເກີດມາແລະຍັງຄົງມີເສລີພາບແລະເທົ່າທຽມກັນໃນສິດທິ.
ຄວາມແຕກຕ່າງທາງສັງຄົມສາມາດອີງໃສ່ຜົນປະໂຫຍດທົ່ວໄປເທົ່ານັ້ນ.

タイ文字に比べたときに文字の縦横比にバラつきがあり、丸みを帯びていて密度が低く見える印象を持っています。

やはりフォント差が大きく全く違う書体も見かけることがあります。
以下にラオスのTipsを紹介します。

・右側通行でタイと同じ四角形の電柱
・黄色いナンバープレートが多い
・ソ連国旗に似た人民革命党の旗がよく掲げられている



14.クメール文字

カンボジアの公用語クメール語の表記に使います。
実はタイ文字の系統では最も古く、原型になった文字とされています。

以下に文例を示します。

បុរសកើតមកមានសេរីភាព និងសិទ្ធិស្មើគ្នា។
ការបែងចែកសង្គមអាចផ្អែកតែលើឧបករណ៍ប្រើប្រាស់ទូទៅប៉ុណ្ណោះ។

このようにして見ると横長で流麗な印象がありますが、フォントによってはギチギチに詰まっていてより密度が高く見える場合も多いです。
末端部分の字形が複雑で、全体的に角張っているのが特徴です。

ラーオ文字よりはフォント差によらず区別しやすいと思います。
以下にカンボジアのTipsを紹介します。

・フランス式の梯子型電柱
・平地が多くブラジルによく似た赤土の景色が多い
・寺院や湖などのトレッカーカバレッジがやたら多い



今回のまとめ

アジアの言語はとにかく文字です。
文字さえ見つかれば国、場合によっては地域の特定までできるため、実はヨーロッパの細かい違いを覚えるよりも重要なテクニックです。

文字の形に関しては理屈で覚えるよりも見ただけで分かるまで見慣れていくのが一番の近道です。

これ以外にもジャワ文字など限られた地域で使われている特殊な文字が多々ありますので、これら以外の文字を見かけたら自分で調べたりしていくと知識も付きますし面白いんじゃないかと思います。



ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
色々な言語を紹介するシリーズはこの記事でようやく終わりです。

とはいえ、あくまでゲームの攻略情報として言語の特徴を説明していますので、言語学的には厳密でない表現を敢えて使っている箇所もあります。
明らかな事実誤認やミスリードはご指摘をいただき次第修正しますが、厳密な言語学の記事でははなくゲーム用に噛み砕かれた記事として読んでいただければと思います。

最後に、当ブログではYouTubeと連動したGeoGuessrの解説記事のほかに、解説担当のcatmanが個人的に公開している文学作品も掲載しています。
興味を持たれた方いましたら、そちらも見ていただければ幸甚です。

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