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【怪文書】チクショウ・オブ・マッポーカリプス・ニ【二次創作物な】

この怪文書はバーチャルYoutuber「ハシナ」さんの4周年記念企画「全てが嘘の思い出」に投入されたマシュマロ怪文書の拡張版の続編です。前回から一年以上経ってるんですね。

※意図的に原作を改変した二次創作物です、怒られたら消えます。


#1

◆ここまでのあらすじ◆

ムシツボ・ギャングネオサイタマ支部は要人連行クエスト遂行中に謎のニンジャ「アイアンアトラス」と遭遇し壊滅、現地雇用ニンジャのバスカヴィル、ディゾルヴァー、ラットバムは壁に人型の穴を残して殴り飛ばされていった。

「待って!」瓦礫の山からハシナ君は顔を出し、辺りを見渡した。元は廃工場だったとおぼしき支部は半壊し、天井に空いた穴から砕け月が淡く照らしている。「いつの間にか知らないニンジャを雇って知らないニンジャにやられたことになってるんだけど!?」

ハシナ君は外壁の残骸から体を引き抜き、状況を把握せんとした。床には破損したドラム缶がいくつも転がり、中身をぶちまけ不穏なケミカル臭をまき散らしている。ハシナ君は鼻を抑え、風上を目指した。このにおいは恐らく不穏なだけでなく、危険だ。

アジトの端で、何かが震えているのが見えた。ハシナ君は床に転がっていた銃を構え、息を抑えながらゆっくりと近づく。UNIXの光が鼓動めいて明滅を繰り返し、その前で痙攣めいて震える存在を照らし出した。そして実際それは、痙攣していた。現地雇用ハッカーのピーボディだ。「だから誰!?」

自称テンサイ級はタイピング速度で負けて生体LAN越しに攻撃を受け、口から泡を噴いていた。まだ息はあるようだが完全に気を失っている。訝しんだハシナ君は前方のディスプレイを覗き込み、息を呑んだ。画面上に表示されていたのはアジト周辺の地図と、こちらに向かってくる十数個の光点!

「え、え、まさか敵!?」ハシナ君がその一つに指を近づけるとモニターが反応し、詳細データを示した。「オイシイ・スシ」「ほとんどオーガニック」「スシこれが一番」IPを特定した敵対ハッカーによって送り付けられた、大量のスシ・デリバリーである!「アイエエエエ!!」

「ア……ア……に、逃げなきゃ!」ハシナ君は痙攣するピーボディに上着をかぶせ、開封済みの菓子袋をUNIXデスクに置いて身代わりにした。「到着まで45秒ドスエ」一番近いデリバリーバイクがまもなく着弾!

ハシナ君は身を翻し、入り口から死角となる壁に開いた穴から脱出を果たすと、息を切らしながらマグロめいて夜の闇に駆け込んでいった。

#2

「に、逃げ切った……?」どれだけ走っただろうか。ハシナ君は路地裏で膝をつき、荒く乱れた息を整えようとした。遠くに溢れるネオンの喧騒の中、デリバリー・バイクの音は聞こえない。ひとまずは逃げ切ったようだ。

「大体ネオサイタマ支部って何なのさ」今となっては知る由もない。とっさに持ち出せたのは雷神紋が刻まれた拳銃一丁と金額不明の企業通貨素子、それに見るからに強烈そうな黒いガム。上着はウツセミ・ジツめいた偽装工作で消費してしまった。

「フフ」「フフフ」後方で聞こえる微かな、しかし確かに嘲笑めいた声にハシナ君は総毛立ち、銃を抜きながら声のする方へ振り返った。間違いなくニンジャ、それも複数。明らかに危険。そしてハシナ君の目に写ったのは、砕け月を背に刃物を構えた、クローンめいた二人のニンジャだった。

「いけないネ……夜道を一人で歩くなんテ」「そうだよ……俺達みたいな変態双生異常切裂殺人ニンジャの餌食に……なっちゃうんだからネ?(原文ママ」彼らはマサクリストとマサクレンド、路地裏に潜む危険な野良ニンジャであり、ヘッズの間ではネオサイタマのちいかわとして親しまれている。「頭おかしいでしょ」「兄さん、コイツ、ケモノパンクスだヨ」「フフ……」

ニンジャは目視で銃弾をかわすと言う。そもそも瞬時に二人のニンジャを退けることは不可能。「ワ、ワァ……」万事休すか。マサ兄弟はそれぞれの得物を処刑めいて掲げ、その背後を巨大な太刀筋が薙ぎ払った。

「「アバーッ!?」」双子の背から鮮血が破裂水道管めいて飛び散り、新たな襲撃者を覆い隠した。「「サヨナラ!!」」爆発四散と血煙の中、徐々にその姿が明らかとなる。三度笠を被った、長身の女ニンジャだ。「ドーモ、ブライカンです。こんな夜中にふらついてると、危ないですぜ」

ブライカンはズカズカと近づくと、ハシナ君の顔を興味深げに眺めた。非常に危険だが、幸い邪悪寄りなニンジャではなさそうだ。「……!」同時にハシナ君は何か違和感を感じていたが、目の奥のUNIX光で全てを察した。ブライカンは重サイバネニンジャで、人肌に見えるのはオイランドロイド用のオモチシリコンなのだ!

そしてサイバネアイのUNIX光が、唐突にメッセージを表示した。「賞金首ギャングな★★★」「え」ハシナ君はここに来て、自分の立場をようやく理解した!恐る恐る見上げると、ブライカンの背中から伸びた危険なサブアームが、コブラめいて捕獲の構え!「アイエエエエ!!」

「トリプルスコア、今日はついてるねぇ」ハシナ君は咄嗟に逃げようとしたが、見逃すはずもなくサブアームは即座に反応、カワイイキャッチめいてギャングを吊り上げた!「治安警察に突き出せば溜まってるツケ位にはなりやすかね」ブライカンはマサ兄弟の爆発四散跡から、ドッグタグめいてメンポを拾い上げた。「アイエエエ……」ハシナ君はもがくが、猛禽めいたサブアームの爪は決して離さない!

「アイエエエエ!!」近くの路地で悲鳴!!ブライカンは悲鳴の出所を瞬時に聞き分け、ハシナ君を吊るしたまま走り出した。「ヤメロー!ヤメロー!」当然やめない! 

#3

三度笠のニンジャは色付きの風となって路地裏を駆け抜け、ボンボリめいて吊るされたハシナ君にビルの外壁が幾度となく1インチ距離まで迫った。「アイエエエエ!!」そして路地に飛び出した2人はついにニンジャの姿を捉えた!

燃えるようなタテガミ。巨大な鬼の面。両手に構えた出刃包丁と鉈。「それはナマハゲなのでは?」恐怖を塗りつぶす程の疑問が湧き上がり、ハシナ君は訝しんだ。しかしここはネオサイタマであり、関東全域をアメーバめいて覆うこのメガロシティの北には中国地方が広がっている。「地理どうなってんの」

「ARRRGH……ドーモ、オニカーンです」「はじめましてオニカーン=サン、ブライカンです」疑問をよそに、両者は手を合わせて電撃的にアイサツした!オニカーンはアイサツを終えると同時に両手の得物で攻防一体の構えを取り、ブライカンは右腕から危険なミキサーブレードを展開した。その時。

BLAM!!「グワーッ!?」ブライカンの背中で突然爆発めいた発砲音!至近距離から放たれた雷神紋の大口径拳銃は、トクシュ・マニピュレータの一つに無視できぬダメージを与えていた。たまらず拘束が緩み、ハシナ君は脱出!すぐさま他のマニピュレータが自律攻撃で狙うが、まずは迫りくる鬼面のニンジャを優先せざるを得なかった。「ARRRGH!!」「チィッ……!」

ハシナ君は来た道を戻るように全速力で逃げた。マニピュレータに掴まれた痛みをZBRガムでもみ消し、可能な限り遠くに。ここはネオンの濁流が流れるコンクリートジャングルであり、危険な捕食者で満ち溢れている。まずはこの地区を抜けなければ。ネオサイタマは様々な組織が縄張りめいて根を張っている。別の企業支配地区に潜り込めば……。

だが、危険は思わぬところからやってきた。通りに出ようとしたハシナ君の眼前でストリートギャングがカトゥーンめいて殴り飛ばされ、それを追うようにグリズリーめいた巨躯のニンジャがのっしのっしと近づいていったのだ。「え、えっ」唖然とするハシナ君など歯牙にもかけず、さも当然のようにニンジャは気絶したギャングを漁り、財布を抜き取って大声で笑いながら去っていった。

「何、あれ」あれこそがアイアンアトラス。ギャングやカツアゲマンをボーナスマンと称し、殴って金をゲットしては遊び歩いているニンジャだ。カラテは未知数にして青天井であり、市井のニンジャでは全く歯が立たない。

その後ろを、アイアンアトラスの名を呼びながら追っていくモータルの青年が一人。ムシツボ・ギャングネオサイタマ支部が受注した連行クエストのターゲット、コミタだ。「身に覚えがないんだけど」どのみち雇用した事になっているニンジャ達が全滅した今、クエストを続行する術はなかった。ハシナ君は二人が完全に見えなくなるのを確認すると、足早にアジトを目指した。

#4

CRAAAASH!!CRAAAAAASH!!アジトだった場所に戻ったハシナ君は立ち尽くしていた。巨大な象めいた歩行兵器とパワードスーツに身を包んだ集団が、スラム街を破壊しながら進んでいる。もとより半壊していた廃工場跡は更地と化していた。「何……アレ……」

掲げられる無数の雷神幟旗。オムラ・エンパイア系列の機動警察法人ロクハラによる強制立ち退きオペは、有無を言わさぬものだった。先陣を切るモーターマンモスは親企業であるオムラ・エンパイアから不良在庫を押し付けられた決戦兵器であり、持て余したロクハラは不法占拠地域の強制立ち退きオペに投入したのだ。企業抗争を前提にした装甲の前では銃弾もスリケンも無力。ハシナ君はこのカイジュウめいた巨大兵器を伴う大名行列を見守ることしかできなかった。

「君、ここはオペレーション中だぞ」アシガル兵の一人がハシナ君を見つけ、咎めた。同時に赤色の光を顔に向け、IDスキャンをかける。「警護サブスクリプション契約有無を確認……非契約反社会活動市民★★★★★、危険を事前排除します。ウケテミロヨロシク!!」BRATATATATA!!発砲!「アイエエエ!!」

ハシナ君はわずかに残った瓦礫の影に逃げ込み、大口径マグナムで応戦した。BANG!BANG!アシガル兵のサイバネアイはサーチライトを受けて銃身に輝く雷神紋と、艦砲めいた轟音で放たれる銃弾に目を見開いた。「反社会市民による攻撃を確認!オムラ製兵器で武装しており株価に対する重大敵性存在!」たちまち立ち退きオペから黄色いパワード武者鎧の兵隊が、巣を突かれた怒れる蜂めいて襲来!!「アイエエエエ!!」

ハシナ君は破砕されたガレキの煙に紛れ、脇道を目指した。いくら粗暴な警察組織とは言え、市街地に逃げ込めば多少は攻撃を躊躇するはず。だがオムラにその常識は通用しない、通報を受けて飛来した鬼瓦ツェッペリンによる電磁砲弾が背後に着弾!!KABOOOOM!!「アイエエエ!!」ハシナ君は前方にアンタイニューク・シェルターめいた建物を発見、最後の力を振り絞って飛び込んだ。

「ハァ、ハァ……げほっ」ハシナ君は扉を厳重にロックし終えると、力尽き壁にもたれかかった。「何で、こんなことに……」ドアの向こうでは戦争めいた砲撃音。この扉も、あるいは外壁さえも長くはもたないだろう。ロクハラは社の、あるいは顧客の敵とあらば地の果てまでも追いかけて撃滅すると公言してはばからない。重金属強化コンクリートにヒビが走り始めた。取り落とした銃に手を触れる、弾はもうない。破られたらおしまいだ。

KABOOOM!!圧倒的火力の前に合成強化チタン製のフスマが吹き飛び、破片が四散して内壁を直撃した。雪崩れ込んでくる武者鎧の兵隊が、ハシナ君に一斉に銃口を向ける。「も、もうダメだぁ……!」ナムアミダブツ、もはやこれまでと目をつむるハシナ君、だが……。

「え……?」弾丸の嵐は飛来しなかった。キュンキュンという空気を裂くような音が聞こえ、時間が止まった様に静寂が訪れた。顔を覆っていた手をゆっくりと下げると……そこには倒れた無数のロクハラ兵と、黄色いローブをまとった謎めいた存在がいた。「え……???」

ニンジャ……いや、さらに異質な異物めいた存在。気付けば周囲には、荒野めいた光景が重なっていた。遠くには怪異めいた黒いトリイ。ローブの男は少しづつ近づいてくる。男の名はサツガイ。ニンジャの始祖、カツ・ワンソーの化身めいた存在である。「えっえっ……えっ???」

皆既日食めいた圧倒的存在感に、ハシナ君はただただ口を開けて唖然とするしかなかった。目の前まで迫ったサツガイの顔は、フードの奥に広がる深遠めいた暗闇であり、視線を逸らすことを許さない。「ふぅむ……BWAHAHAHAHA!!」サツガイはおもむろにハシナ君の右肩に手を置くと、力を込めた。「アバーッ!?」ニューロンが爆発し、意識が瞬断した。

サツガイは各地でニンジャにランダムに力を授け、混乱をもたらす存在。また、他の化身を取り込んだ際にはニンジャソウルを強制憑依させることすら可能だったという。


ハシナ君、お前はニャンニャになった🐱


「何で!?」ハシナ君はベッドから勢いよく顔をもたげた。すでに窓の外の太陽は高く昇り、ハシナ君の顔面に容赦ない陽光を浴びせていた。顔は土砂降りの中を歩いてきたかのように汗だくだ。「まったくなんて夢なのさ……あれ?」ベッドから降りようとしたところで、背中の下に名刺のような物の感触。「何だろ」背中に手を回し、寝ぼけ眼を擦りながら手に取る。

「サツガイという男を知っているか」

赤黒の禍々しい折り紙に、恐怖を煽る書体でそう書かれていた。ハシナ君は悲鳴を上げた。