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「すべらない話」がすべらない理由

和芸の達人と呼ばれる人は確かに存在しますが、それらの方々が「どう凄いのか」に関しては語られることは少ないのではないでしょうか。

勿論、話し方に関するビジネス書は数多く出版されていますが、それらの多くは「コミュニケーションを円滑に進める」ことに主眼を置いており「人を楽しませる方法」を重点的に解説したものではない、と私は考えています。勘違いされがちなのですが、ビジネス書に対して、私は比較的ニュートラルなオタクです。寧ろ同世代の中ではめっちゃ読んでる方だと思います。読んだ上で合う合わないを判断しています。

以上、関係のない話も挟みつつ、この記事の存在意義について色々と書いてきましたが、以下に書いてあることは僕が「すべらない話」や「にけつッ」を視聴しつつ、また上野広小路の劇場で落語家の話を聞きつつメモしたただの雑記となります。つまり、自分は話し方に関するプロではないですし、残念ながら少し話芸に興味を持った程度の素人です。

そんなことはどうでもよくて、さっさと話芸について語らせてくれ。

工夫の方法

1.「一般的な常識の水準を超える単語」には意味の説明を加える

入門レベルの授業(大学1~2年生に行う授業)にて、こういったことを意識できていない教員は多々います。オタクにも多いです、非オタの困り顔をみて自分が言葉の意味を説明をしたことなんて、カイリキーの指でも数えられないほどあります。突然皮肉を挟みましたね、気分を害したらすみません。

実際に落語やバラエティ番組においても、話の本筋からずれてでも語句の説明をされる方は多くいらっしゃいます。聞き手を置いてけぼりにすると、聞き手の関心を失せさせてしまいますから。

2.感情の入れ込み具合

感情を込めなさ過ぎてもダメ、感情を込めすぎてもダメなのだと思います。
下に、感情を込めなさ過ぎた場合のデメリットと、込め過ぎた場合のデメリットを記しておきます。

込めなさ過ぎた場合 : 単純に棒読みの状態、面白みが薄れる
込めすぎた場合 : 話が嘘っぽくなるので、聞き手側としては面白みが薄れる

少し抽象的になってしまいますが「いい塩梅を見つけましょう」としか言えませんね。売れないビジネス書みたいなこと言ってるよ。

3.日常的に話のネタを探している

例えば、千原ジュニアさんの話で「わ ね ろ る」というものが存在します。要点だけ説明すると「ね」は「わ」より複雑なのに五十音順で「ね」の方が先なのはおかしい。「る」と「ろ」にも同じことが言える、というものです。また、千原ジュニアさんは「一石二鳥」や「七転び八起き」といった慣用句・ことわざに関する話のネタも数多く持っています。

こういったことを考えてみると、如何に日常的に話のネタを探しているかがわかってきます。麒麟の川島さんも同じような話のストックをもっていますね。大正時代の嫁よりも健気に、ネタを探していらっしゃいます。最近の潮流的にたたかれそうな例えですね。

4.オチの強さと話し方

「強いオチってどんなオチだよ」と突っ込まれることが想定されるので、先制カウンターとして私のお気に入り記事を紹介しておきます。リンク先ではオチの種類について解説されています。

昔ながらのオチ分類 その1(考え落ち) – 【令和版】でっち定吉らくご日常&非日常 (detchisadakichi.com)

また、号泣の島田秀平さんはオチから考えて、話をスリムにまとめ上げるみたいですね(下の記事参照)。島田秀平さんは笑い話も怪談も本当にお上手です。

話がうまい人は「オチから逆算」どうやるか?:日経xwoman (nikkei.com)

また、オチにインパクトをつけるため、オチの前後で声量や声のトーンを上げ下げしている方が多いです。勿論多くの場合はオチで声量や声のトーンを上げる場合が多いのですが、オチの種類によっては逆パターンを採用することも十分にアリだと思います。


5.途中の小笑い

オチがある程度強ければ面白い話になるのかというと、必ずしもそうではありません。強いオチの前には「場を温めておく」方が多いです。つまり、オチの前に細かい笑いどころを作っておき、オチで激しく笑える状況をつくっておくわけですね。

「場が温まり、クライマックスにつながる」ことは1つの話の中でも起こり得ることですが、1つの番組や劇の中でも起こり得ることです。例えば、2022年M1でいうとゆにばーすさんや真空ジェシカさんが場を温めることでお客さんが笑いやすい状況をつくり、オズワルドさんが強いネタで高得点をゲットしたわけです。そう考えるとトップバッターで優勝の中川家さんってすげ~です。

6.適切な間をとる

場面が切り替わるシーンで間をとることは勿論、聞きやすさに資する間であれば、どのような場面でも間をとりましょう。この一文で「間」という言葉を三度使っています。

間といえばスリムクラブさんの漫才を思い出しますね、あの間は「適切な間=話を聞きやすくするための間」ではなく「独特の雰囲気を作るための間」ですが。この一文ではなんと「間」という言葉を五度使っています。

7.題材興味

漫才におけるツカミと同じで、題材興味は聞き手のモチベーションに影響を与えます。といっても他人が興味を引くような、オリジナルな題材を多く見つけるのは難しいです。

そこで芸人さんたちがよく使っている方法が「部分的なオチの先バラシ」です。これだけでは「部分的なオチの先バラシ」とは如何なるものかが通じないと思うので、例を示します。

ケンドーコバヤシさんの「大谷翔平に飯を奢る方法」で例示します。
「部分的なオチの先バラシ」をしない場合 :
 「後輩女芸人と大谷翔平をどうにかして結婚させる⇒兄貴面をして大谷翔平に飯を奢る」という順序で話を進めます。
「部分的なオチの先バラシ」をする場合 : 
「尊敬する人に飯を奢れたら気持ち良くないですか?」と話を切り出し、その後「後輩女芸人と大谷翔平をどうにかして結婚させる⇒兄貴面をして大谷翔平に飯を奢る」という順序で話を進めることになります。

このように、話に先立って、オチを抽象的にばらしてしまう訳ですね。こういったことをすることで、聞き手の注意を話し手に向けられるのではないでしょうか。

8.キーパーソンやキーになる場所、場面の描写を詳細に

上に書いた通りで、全くその通りなんですよね。また千原ジュニアさんを例にして説明させてください。

千原ジュニアさんの話で「サンライズ出雲で旅行に行く話」があり、その話のキーパーソンは三又又三さんと乗車してきた一般の女性です。「すべらない話」にて話されているので実際に見てほしいのですが、三又さんやその女性の言動や表情、またサンライズ出雲の車内について詳細に説明されています。これらについて説明することで、聞き手の脳内で情景を思い浮かべさせることに成功している訳です。加えて、自身のインパクトのある心理的な描写を追加することで、より面白さを増大させています。

このように、キーパーソンやキーになる場所、また自身の内面についての説明を加えることで聞き手側のリアクションを増大させている訳です。

9.ある程度台本を作る

落語なら当然にされていること。ですが、話し上手な芸人さんも台本を作っていることが多々あります。粗品さんのYoutubeを見ていると、オールナイトニッポンで話したエピソードを使いまわしていることも多々あるのですが、そのエピソードの語り方が語句レベルで同じなんですよね。つまり、オールナイトニッポンで話したエピソードを1か月後にYoutubeで話したとしても、単語レベルで同じように話せるということです。こういったことを考えてみると、粗品さんの記憶力が余程良くない限りは、台本をある程度作っていると推察できます。「すべらない話」でMVSをとっている兵頭大樹さんは、台本を作ってから話していると公言されています。

総括

なんかの授業のレポートとして出しても良くないですか、これ。





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