5分でわかる!武満徹―2021年メモリアルイヤーの彼の、代表作と派生する文学作品や映画を知る
今回の記事は、今年がメモリアルイヤーの一人、武満徹(没後25年)を紹介する。武満自身のことから、関連する文学作品や映画などまで。
夏休みの映画鑑賞・音楽鑑賞・勉強のネタにしてみては?
(ちなみに、サン=サーンス(没後100年)も今年)
武満の生没年
武満徹は、1930年(昭和5年)に生まれ、1996年(平成8年)に亡くなった(享年65)。
今年2021年は、没後25年のメモリアルイヤーである。
(武満徹は教科書に載る歴史上の人物のイメージが強いため、実は25年前まで生きていたってことに毎度びっくりする…)
武満ってどんな人?
武満は、清瀬保二に師事した時もあったが、実際には殆ど独学で作曲を学んだ稀有な人。
武満がどんな作曲家であったかを知る一つの手立てとして、彼が若手芸術家集団「実験工房」の結成メンバーであったことが挙げられる。
この実験工房は、当時の欧米の芸術をいち早く日本に紹介し、また、当時の新しいテクノロジーを芸術に取り入れていこうと活動したグループである。湯浅譲二も所属した。(「実験工房」についてさくっと知るにはartscapeのArtword「実験工房」がおすすめ)
つまり、作曲や芸術に対して、武満は実験工房と似た考えを持っていたのだろう。
武満の作品は独特な響きであり、それが「タケミツ・トーン」と呼ばれ海外でも評価された。
武満の映画音楽
武満は100以上あると言われるほど多くの映画音楽を手掛けた。
この映画音楽の作曲の際に、様々な楽器や技術を試してみていたと言われている。
以下に武満が音楽を担当した映画のうち、個人的に面白いと思うものをいくつか挙げよう。
・小林正樹監督『切腹』(1962年)
滝口康彦の小説『異聞浪人記』を映画化。橋本忍が脚本を担当した。
第16回カンヌ国際映画祭にて、審査員特別賞を受賞
[ちょっと脱線: 滝口康彦『異聞浪人記』って?]
プロ集団による書評サイト「ALLREVIEWS」の書評(こちら)によると、
この作品は、
「組織の犠牲となってしまう武士の悲哀を描いた士道」
「苦難に直面した侍たちの、壮絶な生き様を描く」
「短編ながら、…(略)…驚くべき物語が次々に展開され、時代と人間を見通す筆が冴え渡る。だから古びることがない。」
ようである。
うん、面白そう。
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ついでに、Youtubeにあった予告編をご紹介。
音楽の感じもわかるので武満の音楽を知るにもおすすめ!
・勅使河原宏監督『砂の女』(1964年)
安部公房の長編小説「砂の女」を映画化。安部公房自身が脚本を担当した。
武満の音楽も非常に素敵で、武満の映画音楽の代表作との声もあるほど。
[ちょっと脱線: 安部公房『砂の女』って?]
ストーリーは以下。
突然、砂穴の家に閉じ込められた男がそこからの脱出を何度も試みる。
だが、脱出への失敗を繰り返し、やがて、その生活に順応していく。
終いには、脱出の機会が訪れるが、逃げない様が描かれる。
1962年に刊行された。
第14回読売文学賞を受賞。
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こちらも、予告編らしきものを発見。
音楽の感じもわかるので武満の音楽を知るにもおすすめ!
・小林正樹監督『怪談』(1965年)
小泉八雲の短編集「怪談」を映画化した作品。
[ちょっと脱線: 小泉八雲『怪談』って?]
小泉八雲はギリシャ生まれ、出生名がラフカディオ=ハーンである。後に、日本で作家として活動した。
この『怪談』は、八雲が見聞きした日本の古典や中国の説話をもとにした怪談が19編ほど収録された短編集。
全19編の原作うち映画化された作品は、
「黒髪」(原題は和解)
「雪女」
「耳なし芳一の話」
「茶碗の中」
の4編。
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ついでに、作品の解説記事がシネマトゥディにあったのでご紹介。
「日本各地に伝わる民話や怪談をまとめた、小泉八雲の同名短編集を映画化した『怪談』。四季を題材に原作から4話を選んでオムニバス映画として構成された本作は、ストレートな恐怖を目指す近年のホラー映画とはひと味違う、幻想的な世界が味わえる。」
個人的には、第3話の「耳なし芳一」の話と音楽が好き。
これは、平家物語の弾き語りを得意とする若き琵琶法師である芳一が平家の怨霊に取り憑かれる物語。
映画の中の琵琶を演奏するシーンには、プロ演奏家の実際の演奏を流しているとのこと。
こちらも予告編があったので、以下に載せる。
(54秒あたりからが第3話「耳なし芳一の話」の予告だろう)
武満の代表曲
映画音楽以外の代表曲として、以下の2つを挙げよう。
・琵琶と尺八、オーケストラとによる協奏的作品『ノヴェンバー・ステップス』(1967年)
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団から委嘱されて作曲したもの。
西洋のオケと日本の伝統楽器を綺麗に一つにするのではなく、異なるものとして対比させることを通して、「日本の伝統楽器そのものが持つ魅力を損なうことなく、オーケストラを伴奏・背景として描いた」(らららクラシックより)そう。
彼はこの作品に対し
「オーケストラに対して、日本の伝統楽器をいかにも自然にブレンドするというようなことが、作曲家のメチエ[注釈: 美術家・文学者などがもつ、その分野に特有の表現技法のこと] であってはならない。むしろ、琵琶と尺八がさししめす異質の音の領土を、オーケストラに対置することで際立たせるべきなのである」
と書いている
(『武満徹全集 第1巻 管弦楽曲』小学館)
・『弦楽のためのレクイエム』(1957年)
来日したストラヴィンスキーよって絶賛された。武満徹の名を世界に知らしめることとなった作品ともいえる。
武満の功績
彼の功績の大きさは、以下の二つのように、武満の名がつくものがあることからよくわかる。
・東京オペラシティの「タケミツ・メモリアル」
武満が芸術監督として晩年監修を務めたコンサートホールであることから名が借りられている。
(詳細はホールのHPへ)
・「武満徹作曲賞」
新人作曲家に与えられる作曲賞。
上記のオペラシティを運営する公益財団法人 東京オペラシティ文化財団が、武満徹の意志を引き継ぎ、主催している。
「祈り・希望・平和」と「未来への窓 Window to the future」をテーマに、若い世代に新しい音楽作品の創造を呼びかけるためであるそう。
(詳細はこちら)
終わりに
以上、さくっとであるが、武満の作品とその作品にまつわるものを紹介してきた。
この記事が、夏休み、あるいは、自粛中のお家時間において、武満の作品にでも、武満の作品にまつわる作品にでも触れるきっかけになれば幸いである。
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