書評|成沢理恵『お人良し』

拝啓

本を書く人(著者)や編集する人(編集者)と友達はいっぱいいるのですが、友達の本について書評を書く機会ってほとんどありませんでした。それは、本家ブログの「カタパルトスープレックス」が日本未公開の作品を紹介するからです。もちろん、海外の著者の友達もいますが、タイミングが合わず、書評を書くに至っていません。

一方で、こちらのブログ「カタパル」は日本語の情報をメインに扱っています。そのため、知人の書籍を書評する機会はくるだろうなと思っていました。しかしですよ。まさか、知人の書評の一番最初が成沢さんの『お人良し』になるなんて。よりによって、一番書評を書きづらい本ですよ。書きづらいのだけど、書かずにはいられない。だから、これは書評というより、成沢さんに宛てた個人的な手紙なのかもしれません。

ボクは日本に帰ってきてそれほど年月が経っていないこともあり、あまり友達は多くありません。ボク自身はあまり人付き合いが得意でないのもあります。リアルなボクを知っている人にとっては意外と思うかもしれませんが。ボクはすごい人見知りなんです。人付き合いがすごく苦手。成沢さんはその中でも日本に帰ってきてから最も仲良くしてもらっている大切な友達の一人です。

『お人良し』はほとんど成沢理恵のモノローグです。20年続いているブログ『メシクエ』をはじめるに至るまでの学生時代。そして、社会人となり『メシクエ』をはじめてから大切にしていること。成沢さんは自分をしっかり持っている人で、ブレることがありません。だから、「食」に関してもすごく敏感です。カクテルにヒノキの要素を見出すとか、訳わからない。よく分かるな!バーテーンダーもビックリするくらいの味に対する敏感さ。

その反面、成沢さんは「ブレない」が自分の限界を設定しているのも知っている。ストライクゾーンがめっちゃ狭い!針の穴を通すコントロールが必要。だからこそ、自分の殻を破ろうとしている。新しい領域への冒険を求めている人でもあります。常に冒険。クエストが目の前に広がっている人。

今回の書籍『お人良し』を作っているスタッフはスゴイです。帯の紹介文がドラクエの堀井雄二さん。編集も『ファミ通』スタッフ。中のイラストもゲームや漫画を知る人ぞ知るのすごい人たちです。これも、成沢さんの人柄が為せる技だと思います。何処かへ行くたびに、お土産をくれたり。なんか、いつももらってばかりで申し訳ないです。

この本のハイライトはミシュラン一つ星レストラン『シンシア』のオーナーシェフ石井真介さんへのインタビューだと思います。食に関わる人には素敵な人が多い。そして石井真介さんもとても素敵な人です。石井さんたちがはじめた「スマイルフードプロジェクト」。コロナ禍で飲食業は未曾有の危機に瀕しています。これは過去の話でなく、現在進行形の話です。絶対に辛いはずなんですよ。それなのに、医療関係者を食で支援しようという姿勢。しかも、最終的に4万食以上!口ばっかりの人が多い中、石井さんの実行力には本当に頭が下がります。そして、それを伝えようとする成沢さんはやっぱり素敵です。

敬具


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