書評|yomoyomo『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』

この本『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』yomoyomoさんが2016年11月までWirelessWire Newsで連載したブログ記事をまとめたものです。個人的な話でありますが、その時期にボクは日本にはいなくて、ずっと海外で暮らしていました。自分自身のスタートアップで四苦八苦していた時期ですし、文章を読むよりは手を動かしていた時期でもあります。ボクにとっては情報の空白期間でした。

本書『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』を読むと、2015年から2016年が時代の節目だったことがわかります。すでに楽観的で希望に満ち溢れていたWeb2.0は過去になり、FacebookやGoogleが必ずしもいい奴じゃないと多くの人が気づきはじめた時期。IoTやAIのような新しいテクノロジーに対しても、両手をあげて歓迎するのが少し躊躇されはじめた時期。

ボク自身もこの時期にIoT、ウェアラブルやデータ解析の分野でコンサルティング業務をやって糊口をしのいでいた時期です。稼いだ金はすべてアプリ開発につぎ込んで。個人の行動データを集めて、それが組織や地域にどんな意味があるのか仮説を立ててさらに実験するようなことをやっていました。少なくとも海外ではすでに個人のデータが分析されることに対する抵抗感が生まれていました。よく聞いた言葉が"Creepy"です。メディアではIoTやウェアラブルが喧伝されていた時期ですが、世間ではそれが受け入れられていない感がひしひしと現場レベルで伝わっていました。

yomoyomoさんはそのような当時の雰囲気をしっかりと捉えて、記事としてまとめています。特に印象的だったのが第42章のポール・グレアムの経済的不平等についてです。Y Combinatorもそこから巣立ったAirbnbもDropboxも時代の寵児で「輝かしいスタートアップ」を代表する存在でした。スタートアップは創業者にとって大きなリスクです。カップラーメンが食べれるくらいの利益を作るのに必死になります。プレッシャーも会社員の比ではありません。だって、成功する確率なんて10%もないんじゃないですか。その対価として、成功した場合に巨額の富を得て何が悪い?ボクもそう思います。そう思って、自分でもスタートアップ をはじめたのですから。

リスクの代償として巨額の富は当然だと思います。要するに、それにも限度があるだろ?っと時代は変わっていきました。だって、マーク・ザッカーバーグやラリー・ペイジ、ペイパルギャングたちはもらいすぎだろ。誰だってそう思います。ポール・グレアムは自分のモデルを信じるがため、時代が変わりつつあるのを読めなかったのでしょうね。Y Combinatorは輝かしい実績を作った。その時代に相応しく、その時代に必要だった実績を。でも、時代は変わる。その節目において、ポール・グレアムですら変化ができなかったということなんでしょう。

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