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イチョウの樹の下に眠る2匹の猫

寒さが厳しくなり、雪国でなくても初雪の知らせを聞くようになりました。
うちの庭にも先日雪が舞っておりました。本格的な冬が到来です。

秋は短い。
毎年思うのですが、一年の半分は冬ですよね。少なくとも5ヶ月は冬です。
今から3ヶ月前は夏服で過ごしていたんですが、3ヶ月後は多分今と同じ服装で過ごしているでしょう。3ヶ月で夏から冬に変わったのに、この先3ヶ月は寒さが続く。これが何よりの証拠です。

田舎に住んでいるので冬の到来を告げるのは、イルミネーションとか街の雰囲気とかそういう洒落っ気のあるものではなくて木です。樹木。

木って書くと地味ですが、紅葉や落ち葉ですね。
庭の紅葉の色が変わり、そしてもみじの絨毯が出来上がる。
それをホウキで掃除する。けっこう好きな時間です。

風景が殺風景に変わる。その瞬間に冬を感じます。

うちの近所に大きなイチョウの木があります。
12月1日には鮮やかな黄色だったのですが、今は葉っぱも落ちきって黄色い絨毯が広がっています。なんともあっけない。
この葉っぱのないイチョウの木をみると冬の訪れを実感します。見た目がすでに寒い。




10月の下旬、散歩している時に不審な段ボールを発見しました。
というか子猫のミャーミャーいう鳴き声の出所を探していたら、その段ボールに行き当たったのです。

段ボールの上に石でフタがしてあり、子供の書いたバランスの悪い字で、

「子猫が入っています。育ててください。」

と書いてありました。
どうすればこういう状況になるか、あえてここでは書きませんがそういうことです。
怒っても無駄です。生まれてきた猫に全く罪はない。

開けてみると2匹入っていましたが、1匹はすでに息絶えていました。
もう1匹が「開けてくれ、出してくれ」と必死の叫びを上げていたのです。

さて、どうしよう。
うちにはすでに2匹の猫がいて面倒を見れる状態ではない。

ヨチヨチ歩きでミーミー可愛い声をあげながらついてくる。手のひらサイズの仔猫。

か、可愛すぎるっ。

頑張ってここで生きてくれと見放すことも考えましたが、とりあえずウチまで連れて帰りました。ミルクをあげ、体力を回復させました。

亡くなっていた子も連れて帰りイチョウの木の下に埋葬しました。
10月の下旬、まだイチョウが色づく前のことです。

もう片方の子は一緒に散歩していた連れが面倒を見てくれる人を探してくれるとのことで連れて帰ってくれました。ひと安心です。それから一週間くらいでしょうか、一生懸命お世話してくれました。

残念ながら、その子も旅立ちました。
容態が急変し、病院に連れて行ったのですがそこで息を引き取ったそうです。
彼も彼なりに自分の寿命を生ききったと思います。
段ボールの中から自力で脱出しただけでも立派。あの雄叫びは立派だった。
彼も同じ場所に埋葬されました。

街を見下ろす小高い丘の上の大きなイチョウの木。
その下に静かに眠り続ける小さな2匹の猫。
兄弟仲良く、安らかに眠っています。

来年も再来年も、年号が変わってもその事実は変わらない。
このイチョウの木がある限り永遠に変わらない。
ただの季節の到来を告げる木ではなく、僕にとって大きな意味を持つ大切な木になりました。

決して怒るな、そのエネルギーで問題を解決せよ。

それが彼ら2人からのメッセージだと僕は考えるようにしています。

全ての猫が幸せに暖かい家で暮らせますように。
願わずにはいられません。

ありがとうございます。有意義なことに使います。