おもんばかるって何?

イチロー選手の現役引退会見、ようやくフルバージョンをYoutubeにて視聴することができました。本当に良い時代になりましたね。

活字の記事とは違って記者の質問も含めて様々なニュアンスが伝わってきます。

イチローさんも女性の記者には優しいなあと感じました。(女性の記者が淑女的な態度を取っているというのもある)優しさには優しさで打ち返す、さすが通算安打世界一の男です。
声の小さい記者を一喝するシーンも見応えがありましたね。アナウンサーは滑舌が良くハキハキ喋るし、いわゆる「記者」はぼそぼそしゃべって何を言っているかわからない。悪く言えば「ネクラっぽさ」みたいなものが伝わってきました。
人前で何かを喋る時はきっちりと声を意識しないとダメだなと改めて思いました。

台湾の女性記者への返答は表情を含めて本当に心を打つものがありました。あれをみるだけで癒される変な自分がいます。

■会見から伝わってくるイチロー選手の超高性能情報処理システム
普段よく喋る人は、伝えたい情報が多いのか基本的に早口で要点がまとまってない印象を受けることが圧倒的に多いです。
情報ばかりが多くて、処理に疲れる。そんな感じでしょうか。
質問者にもそんな人何人かいました。

その点、イチロー選手の返答は常に冷静沈着。頭に浮かんだことをそのまま話すのではなく、脳内で多くの情報を超高速で処理しながら、必要な言葉だけを話しています。話すペースもスローで、要点もまとまっていてメチャクチャ聴きやすかったです。
聞いていて疲れないリズムで話していますね。

わかりやすくいうと、
「ゆっくり話すこと重要」
ということになります。

頭を使う野球と常々言っていたイチロー選手。
最後の最後まで頭を使う会見で見る人に刺激を与え、鼓舞し、さらに癒しまで与えてくれました。

体はもちろんですが、頭脳あってのイチロー選手の大記録。
間違いないです。

■ネット言語との決定的な差
最後の最後に名言が待っていました。

「外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね」

ここから先は全て記憶したいくらいの名言なのですが、この慮る(おもんばかる)という言葉が個人的には妙に沁みたのです。

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ちょっとネットを覗いてみると他人の揚げ足をとることに命をかけている人ばかり。リアルでもそうかもしれません。そういう人は概して語彙がないですよ。だからネット言語に依存する。

何度も書いてますが揚げ足取りなんて小学生、幼稚園児でもできるような人としては初歩中の初歩の行動。本来大人になるに連れて卒業していくものです。
好きな女の子をけなすことしかできなかった子も「褒めること」や「認めること」ができるようになって初めて女の子にモテるようになるのです。

女の子にモテるかどうかは別としても、社会に出てもけなしてばかりの人は信頼されません。おもんばからない人々。
正しいことを言いたがる人に限ってその傾向があるから厄介です。

自分の信じる何かを肯定するために、他の何かを否定する。
常套手段ではあるのですが、やはり何か引っかかるものがある。それをせずに済む方法は探せばあるはずです。

この人は揚げ足を取らない、揚げ足をとることに命かけてない。その空気を出す。この人は大丈夫だと思ってもらうこと。それが人としての信頼につながると思います。
そういう人からは必ずそういう言葉が出てきます。
慮るという概念が脳内にない人からは決して慮るという言葉は出てきません。

インターネットはおもんばからない。便利ですが慮るには向かない空間です。

■語彙力は覚えるのではなく育てるもの
語彙を増やしてもそれを人を罵ることに使っては意味がない。
イチロー選手のようにこの引退会見という大一番の最重要シーンできっちりと、
「おもんばかる」
という心に響く言葉をさらっと言ってのけるあたり、相変わらず最高だなと思いました。

日本中を狂喜乱舞させたWBC2009での最後のあの一打に匹敵する。クリティカルヒットだったと僕は感じました。

慮る(おもんばかる)という感性がない限り、決しておもんばかるという言葉は出てこない。語彙力というのは記憶して覚えるものではなくて、感性を磨いて身につけるものだなと再認識しました。

おもんばかる(おもんぱかる)改めて良い言葉だなと感じました。
イチローさん、最後の最後に素敵な言葉をありがとうございました。

ありがとうございます。有意義なことに使います。