ビートルズを知らない人にこそ観てほしい映画「Yesterday」

久しぶりに良い映画を観ました。
ダニーボイル監督のYESTERDAY。ビートルズを題材にした作品です。

世界規模の大停電をきっかけになぜかビートルズの存在が消えてしまった世界。
その中で1人のミュージシャン志望の青年が成り上がっていく物語。
彼の頭の中にだけビートルズの楽曲が残っていた・・・

もうこの設定だけでも惹かれますね。
Back BeatやI am Samなどビートルズを題材にした映画はけっこう観てきましたが、その中でも抜群の完成度を誇ると断言できます。ファッショナブルに仕上げているところも、さすがダニーボイル監督といったところです。

■この映画の見所
1 楽曲の使われ方にビートルズに対する愛とリスペクトがある
2 とにかくヒロインが可愛い
3 登場人物がみなさらっとしていて「悪役」がいない
4 笑えるシーンが多い

気楽に見始め、気がついたら引き込まれ、観終わったら感動していた。そんな映画。カップルでも、家族でも、1人でも楽しめる作品です。
マニアックなシーンもあるので、ビートルズに対する予備知識があればさらに楽しめますが、知らない若い世代でも全然普通に楽しめます。

個人的には知らない世代に鑑賞してほしいです。
この映画でビートルズに興味を持って、楽曲を聴くようになる。そして数年後にもう一度この映画を観た時、さらなる発見や感動があると思います。

■個人的オススメシーン
ここから先はネタバレがあるので未鑑賞の方はご注意ください。

主人公が事故に遭う前に招かれたラティテュードフェスでのシーン。フェスの現実きっちりと再現していて感心しました。何万人も観ているビッグステージで演奏できるミュージシャンがいる一方で、閑散としている小さなテント内で演奏するミュージシャンも存在する。
外国はどうか知りませんが、日本はこの場合自腹を切っての出演です。大きいフェスだと10万円請求されるケースもあります。何かが間違ってますね。

事故で入院している時に見舞いに来てくれたヒロインに、「僕が64歳になっても・・・」
と問いかけます。「なんで64歳?」と返されたことからこの世界の異変に気づき始めます。
When I’m Sixty-FourはSgt.Pepper's Lonely Hearts Club Bandに収録。

退院後、仲間の前でのYesterdayを演奏するシーン。改めていい曲だなと痛感します。仲間たちはこの曲を知らないので、めちゃくちゃ感動している。ここも良いシーンです。

「これはビートルズの曲だよ」って伝えても誰も信じてくれない。この辺りから主人公は本当に自分以外はビートルズを知らないことを確信し始めます。
その時に仲間の1人が言い放った言葉。
「ミュージシャンってやつはマイナーなバンドを誰もが知っていると思っている」
これ名言ですね。

ネットで検索してもビートルズは出てこない。
BEATLESは元々BEETLEとBEATを掛け合わせて作った造語だったので出てこないのは当然かもしれません。

ついでに検索したオアシスも出てこない。オアシスはビートルズの影響をもろに受けたバンドだと自ら公言しています。そのあたりも再現されていて、両方のファンには嬉しいですね。
現実にはありえないことですが、砂漠のオアシスの写真ばかりが登場する検索画面は笑えました。

うろ覚えのビートルズ曲の歌詞を思い出すために壁に次々と付箋を貼っていくシーン。
カラフルな付箋がなんだかオシャレなアイテムに感じました。付箋の理想的な使い方を見たような気がします。

両親の前でのレットイットビー演奏シーン。
これもあるあるなので笑ってしまいました。人はわずかのあいだすら静かに聴くということができないのです。

レコーディングのシーン。
I saw her standing thereのロック曲としてのカッコ良さが前面に出ていて好きです。

そしてここでついにエド・シーラン登場。急展開を見せます。一気に彼をスーパースターへと押し上げます。

モスクワ公演でBack To The USSRを演奏。
この曲もロック曲として普通にかっこいいんだなと再認識できました。

作曲能力を競うエドシーランとのバトル。
ここでのThe Long And Winding Roadは反則でしょう。

この映画の中で強烈なキャラ、デブラ。金の亡者みたいな描かれ方でしたが、決して悪役ではなく多くの笑いを生み出してくれたので、この映画を面白くしてくれたのはある意味で彼女の演技かもしれません。

LAでの会議。ここは完全に笑いのシーンですね。
拍手多過ぎ問題。このあたりはアメリカ文化への英国人からの皮肉なのでしょうか?笑わせてもらいました。

そしてついにビートルズを知っている人が現れます。
その中の1人の女性が言った
「ビートルズのいない世界は退屈」

今後の身の振り方に悩んでいた主人公。彼女たちに渡されたアドレスを頼りに向かった海辺の家でとある老人に出会います。

■この映画最大の見所、78歳の老人との会話
美しい場所に1人で住んでいる画家。
ビートルズが存在しない世の中では、船乗りになって世界中を航海していた。

ついにジョンレノンが登場します。
「幸せだった。それ以上の勝ちはないさ」
「複雑な事情があった、別れ出会い、偏見やプライド、それでも振り返れば・・・幸せだった」

実際のジョンも志半ばではあったがきっとそうだったはずです。。

主人公の迷いを払拭する一言
「愛する女に愛を伝え、ウソをつかずに生きることだ」
ここは本当にいいシーンでした。

Ob-La-Di, Ob-La-Daの歌詞に合わせたエンディング。
この映画の雰囲気を象徴するような清々しい終わり方。そして本物のヘイ、デュードでエンドロール。

ビートルズへのリスペクトに満ち溢れた素晴らしい映画。
泣いて笑って大満足です。

ありがとうございます。有意義なことに使います。