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モロッコ旅行記⑥ 4日目「要塞の村アイト・ベン・ハドゥ」

要塞の村「アイト・ベン・ハドゥ」

2日間のマラケシュ自由行動が終わり、この日からは日本語が堪能なベルベル人のガイドさんが、私たちを案内してくれることに。

ガイドさんの名は、モハンマド。通称、モハさん。
運転手さんの名は、オマル。

自己紹介を終えて、9:00にホテルを出発。
初日の目的地は、映画「グラディエイター」のロケ地になったことでも知られる要塞村「アイト・ベン・ハドゥ」だ。


マラケシュの赤い町並みを後にし、オマル自慢の四輪駆動車は一路、アトラス山脈を横断する。

モロッコにおけるアイト・ベン・ハドゥの位置(白地図専門店さま)

アトラス山脈とは、モロッコを南北に分断する山脈のことで、「モロッコのコンプレックス」と呼ばれている。
モロッコの発展は、国を両断するアトラス山脈のせいで遅れたと言われているのだ。

旅の仲間との出会い

青い空と裸の山々、深い緑と、サボテン。それらを見渡す崖の上で、四輪駆動車のそばで運転手のオマルとガイドのモハが煙草を吸っている
映画の登場人物のような二人

途中、眺望のいい場所で休憩をとる。
左が運転手のオマル。右がガイドのモハさん。二人とも最高に楽しい旅の仲間となってくれた。

雪をかぶったアトラス山脈と緑豊かな大地
雪をかぶったアトラス山脈と土壁の家々
雪をかぶったアトラス山脈と木のない山々、それらの間を抜ける山道
木のない山々は、日本の山とはまったく様子が異なる

モロッコ人にとってはコンプレックスでも、やはり観光客の私にとってはアトラス山脈はただただ美しい。
曲がりくねった山道を、オマルは的確なハンドルさばきで制覇していく。
さすがに雪をかぶった山脈、窓を開けると冷たい風が入りこんでくる。

岩場にひっそりとたたずむロバ
岩場にひっそりとたたずむロバ

オマルは60歳を超える、陽気なおじいちゃん。渋い笑顔にほれぼれする。
道ばたにロバを見かけると、必ず手を挙げ、「ダンキー!」と挨拶をする。オマル曰く「ロバは友達」だそう。

門のそばで寝そべり、昼寝をする黒茶色の犬
すやすやと心地よさそうに眠る犬

途中、アルガンオイルのお店に立ち寄りながら、アトラス山脈の頂きを越えて、いよいよモロッコ南部へと突き進んでいく。
あっという間に気温が上がり、強い日差しが目を刺す。しかし1月ということもあり、それほど暑くはない。

荒野を彩るアーモンドの白い花

青い空と耕作地のそばで白い花を咲かせるアーモンド
アーモンドの白い花があちこちに咲いている

本格的な花の季節はまだ先だが、道端にはあちらこちらにアーモンドの白く可憐な花が咲いている。

ガイドのモハが平べったい石の上に載せて石で叩きわったアーモンドの実を見つめている
アーモンドの実を石で叩き割るモハさん

モハさん、アーモンドの実を見つけて、石で叩いて殻を割り、食べてみる。まだ早かったようで、苦みのある味がした。
ちなみにモハさんは、日本に滞在経験があり、日本語はかなりペラペラ。偶然にも同じ誕生日だったため、車中で大盛りあがりした。
気のいいお兄さんといった感じで、初日にすっかり打ち解けてしまった。

アララララライッ!

車道のそばに「AITBENHADDU」6Km←と書かれた看板
「アイト・ベン・ハドゥ」まで6キロ

「アイト・ベン・ハドゥ」と書かれた手書きの看板が現れる。
「ここから先はオフロードに入るよ。しっかり捕まっているんだよ!」

真っ青な空と赤い大地、一時停車する黒い四輪駆動車
舗装されていない荒野を進む四輪駆動車

礫砂漠と言うべきか、荒野と言うべきか、道なき道を突き進むオマル自慢の四輪駆動車。でこぼこ道に、しょっちゅう車体が跳ね上がり、冒険大好きな私は大興奮。

「アラララララライッ!」

オマルが叫ぶ。私と友人も「ヒャッホーッ」と歓声を上げて大笑い。
日本人では珍しい反応だったようで、オマルもモハも「笑顔が一番! まだ早いけど、今までで一番いいお客さんだよ!」と手を叩いて褒めてくれた。お世辞かもしれないけれど、嬉しさに、さらにテンションが上がる。

ふたたびのプロポーズと昼食

赤い壁のレストランの外観。門の看板には「HOTEL-RESTAIRANT LABARAKA」
昼食に立ち寄っただけだがホテルでもあるようだ

間もなくアイト・ベン・ハドゥ……というところで、いったん昼食。
ここでも店員のモロッコ人に「結婚しよう」「愛してる」と口説かれる。
本当に熱い民族だなあ!

レストランの内部。赤と緑の格子模様の天井、壁。ピンクのテーブルクロスがひかれた四角いテーブルが並んでいる
壁や天井の可愛らしさにときめく

砂漠の中にあるとは思えないほどお洒落なお店。

浅い銀の丸皿いっぱいにオムレツが盛られている
モロッコオムレツ
湯気をたてるタジン鍋には、いんげん、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、オリーブ
野菜ベースのタジン鍋

店員曰く「モロッコオムレツ」と、毎度お馴染みの「タジン鍋」。それから「モロカンサラダ」。
毎度お馴染みといっても、「タジン鍋」の具材はいつも違う。最初に食べたタジン鍋は、鶏肉を煮込んだもの。こちらは野菜ベースのタジン鍋だ。
三角形の蓋付きの鍋を「タジン鍋」というのだが、三角の形が水蒸気をうまいこと具材に還元するらしく、旨みの逃げない煮込みができるらしい。

腹がいっぱいになったところで、いよいよ徒歩で「アイト・ベン・ハドゥ」へ。
古い町並みを抜けると、一筋の川が現れる。そして、川を挟んだ目の前に、お碗型の山と、その斜面に築かれた土壁の集落とが現れた。
1987年に世界遺産に登録された古の要塞村「アイト・ベン・ハドゥ」だ。

要塞の村「アイト・ベン・ハドゥ」

丘から麓にかけて築かれた土壁の集落群。目の前には細い川とヤシの木
要塞の村アイト・ベン・ハドゥの威容

1987年に世界遺産に登録された「アイト・ベン・ハドゥ」は、ワルザザードとマラケシュを結ぶ隊商交易の中継地として栄えた要塞都市。
その素晴らしい景観から、「アラビアのロレンス」や「ナイルの宝石」など、数多くの映画が撮影された。今回のモロッコ旅行で、とても楽しみにしていた場所のひとつだ。

青い空、カスバ、白いアーモンドの花
四つの塔を持つ土壁の家カスバとアーモンドの花
アイト・ベン・ハドゥの前を流れる川には飛び石が置かれ、友人とガイドのモハが渡ろうとしている
川に置かれた飛び石をこえ、要塞へと向かう

川に置かれた飛び石を越えて、要塞村の入り口へと向かう。
この川を流れる水は、塩水だという。雨季に入ると増水するため、そのときにはロバに乗って渡るらしい。
最近、近くにコンクリートの橋ができたとも言っていたけれど、ここはやはり徒歩かロバで行きたいところ。

堅牢な要塞都市の入り口に向かうガイドのモハ
アイト・ベン・ハドゥの入り口へと向かう
アーチ型の門の中にたたずむ門番の男性
白黒の衣装に身をつつんだ門番

入場料は、10DH(約100円)。
現在も修復中のため、修復費・維持費に使われる。

門の内部の天井は木造。門番が見守る中、ガイドのモハが天井を見上げながら解説
カスバの材料について説明をしてくれるモハさん

カスバと呼ばれる日干し煉瓦づくりの要塞。
煉瓦の素材は、土と石、藁。雨が降ると石がむき出しになってしまうため、毎日修復している。

土壁のカスバと門番の男性
壁の色の差が老朽化を物語っている

通常、窓は2階のみにある。1階にも窓があるカスバは、新しい時代のもの。

土の道にちょこんと座る白と黒のぶち猫
光と影と猫と

ここにも猫がいる。兄弟か親子だろうか、似た模様の猫がいっぱいいた。
孤高の猫といったたたずまいが、たまらなく美しい。

表面が崩れかかったカスバの土壁の様子
崩れかけた壁を見れば、カスバがどのように造られたのかがわかる
ガイドのモハが木組みの鍵について説明している
道ばたにはさまざまな古道具が転がっている。これは鍵
カスバの上で話をするガイドのモハと友人
日干し煉瓦の壁とは思えないほど素晴らしい彫刻

「バルコニーがあるのは、ユダヤ人の家だよ。パティオ(中庭)があるのは、アラブ人の家」

家の形には、住んでいる民族の特徴がはっきりと出ている。

カスバの屋根にたたずむ白黒のぶち猫
カスバの猫は悠然としている
真っ青な空と崩れかけたカスバ群
両脇に壁の迫る細い路地階段

複雑に入り組んだ狭い道をぐんぐんと登って、丘のてっぺんを目指す。

路地の壁の向こうに、丸いはげ山が見えてくる

途中、不思議な形の丘が見えた。あれはなんだろう?

丸いはげ山と耕作地、カスバの屋根を高台から見下ろす
ひときわ目につく丸い丘

昔は、都の門前に広場があり、この要塞都市を訪ねる人はまずそこで身の証を立てたという。住民に認められなければ、都市の中に入ることもできなかった。
私の大好きな映画「グラディエイター」も、あの丸い丘の麓で撮影されていた気がする。

高台から見下ろすアイト・ベン・ハドゥの街並みと、緑豊かな耕作地、荒野を流れる川

丘に登る途中から眼下を見下ろすと、素晴らしい景観が広がった。

そしてこの頃から、故障気味だったカメラがいよいよおかしくなり、なぜか撮る写真のほとんどがトイカメラで撮ったような写真になってしまった。
それも……まあ、かわいい……?(前向きに)

四角い形をした土壁の倉庫
集落共同の穀物管理庫

ついに丘の頂きに到着する。早足だったこともあり、息が上がる。
てっぺんには小屋が建てられていた。災害や不作が起きても住民が生きていけるよう、共同の穀物管理庫になっていたという。

集落を囲う土壁の外には三角屋根の立派な墓が見える
裏手にハドゥ家の墓が見える。
高台から見下ろすワルザザードの大地とはるか遠方に雪をかぶったアトラス山脈
地下水脈が流れているところには緑が生えている
アーチ型の門を枠にして撮影したアイト・ベン・ハドゥの街並みと山々
アラビアンナイトの絵本に使われそうな風景

頂上を後にし、階段をどんど降りていく。
途中、ベルベル人が経営する宝石店に立ち寄り、銀のブレスレットを2つ購入する。ひとつは母親への土産に、もうひとつは同行の友人へのお誕生日プレゼントに。2つで400DH(約3800円)だ。

赤い布の上に置かれた銀色のブレスレット。中央の台座にはトルコ石がはまっている
繊細なつくりのブレスレット

写真には撮らなかったが、カリブの海賊に出てきそうな宝箱から宝石を出してきたときには驚いた。現実の世界で、宝箱から宝が出てくるところをはじめて見た!

青い空の下にたたずむアイト・ベン・ハドゥ
遠くから見渡すアイト・ベン・ハドゥの姿

アイト・ベン・ハドゥは本当に素晴らしい場所だった。
旅行シーズンではなかったのか、観光客がほとんどいなかったのもまたよかった。出会ったのは、山頂で会ったヨーロッパ人の個人旅行客と、日本人の少人数ツアーぐらいだ。しかし本当に、日本人はどこにでもいる。

アイト・ベン・ハドゥのあるワルザザードは、歴史遺産が多いため、映画産業が発展している。途中、立派な映画スタジオも目にした。

赤ワインとプールと欧米人

笑顔のボーイさんが赤ワインのコルク蓋を開けてくれたところ
陽気な店員さんがワインを用意してくれる

さて、本日のホテルは、ワルザザードの可愛らしい外観のホテル。
プール付きのレストランがあり、非常に居心地はよかったのだが、料理はイマイチだった。が、モロッコ特産の赤ワインは美味しかったので、よしとする!

赤ワインと「KSAR」と書かれた緑色のワイン瓶
KSARと書かれたモロッコ産の赤ワイン

夜はなかなか冷えこむ。ところが、レストラン付きのプールを眺めていると、欧米人がいきなり裸で走ってきて「ヒャッホーッ」と叫びながらプールに飛びこんでいった。
呆気にとられていると、あがってきたずぶ濡れのその人に「写真撮って!」と言われる。
友人がプールに飛びこむ瞬間を撮ってあげたのだが、タイミングがずれていたようで、「これ俺? ぼけててよくわからない……」と不満顔。
こら、お礼ぐらい言いなさーい!
モハさんも日本語で「アホや!」と叫んでいた。(日本での滞在地は神戸だったそう。笑)

次回予告

モロッコ旅行記⑦ 5日目「カスバ街道をゆく」

高台の岩場にたたずむガイドのモハと、眼下に広がるヤシの木群やカスバ群
モロッコの雄大な景色を高台から眺める

カスバ街道を通って、トドラ渓谷に向かい、サハラ砂漠のメルズーガ大砂丘を目指す……。

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