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中国四川省の鉄道「芭石鉄路」①

四川省「芭石鉄路」

親戚が鉄道カメラマンなため、これまで中国のあちこちに「蒸気機関車撮影の旅」に連れて行ってもらった。
名目上は、一応、「通訳」兼「ぽんこつ撮影アシスタント」だ。

これは、そのうちのひとつ。
2009年に訪れた、菜の花畑の中を走る鋼鉄の男爵、中国四川省の鉄道「芭石(ばせき)鉄路」の記録。

中国四川省の位置(白地図専門店さま)

躍進駅のC2型蒸気機関車

2009年2月末。
親戚の兄貴――通称「哥哥(グーグ / 中国語で、兄の意)」とともに訪れたのは、中国四川省・成都の南約200キロにある「犍為(けんい)」だ。

ここに敷かれているのが、全長約20キロの炭鉱専用線「芭石鉄路」。
C2型蒸気機関車が現役で走る、狭軌(ナローゲージ)である。

煙をはきながら走る蒸気機関車

朝、成田空港を出発し、中国四川省の省都「成都」に到着したのは、夕方。
中国の鉄道に詳しいガイドの陳さんと合流し、その日のうちに「犍為」へと向かい、一泊。

翌日、まず向かったのは「躍進駅」だ。
駅には炭鉱を所有する嘉陽集団の事務局があり、まずは所長にご挨拶。

実はわざわざ挨拶に行ったのには、わけがある。
実は今回、なんと芭石鉄路の蒸気機関車を「包車(チャーター)」することになったのだ!

線路を走りさっていく列車と、開けた踏切のバーをおろそうとしている黄色い服の女性
躍進駅を出発した蒸気機関車と、踏切のバーを手動で開閉する女性

踏切のバーは手動。バーを上げるために、踏切横には踏切番人小屋がある。

人でいっぱいの客車
人でいっぱいの列車

石渓駅での撮影

つづいて向かったのは「石渓駅」。
ここでの最大の目的は、「机務段(きむだん / 機関区のこと)」の見学だ。

急な階段と、その周囲にたつ古びた集合住宅

階段をのぼって、高台にある「石渓駅」に向かう。

ホームの隅で、包子や豆乳の入った鍋が湯気をたてている。ホームには列車と、たくさんの乗客、見送る人、車掌さん
おいしそうな湯気のたつ包子(バオズ)

小さな大衆食堂や、簡単な便利店が並ぶ、駅のホーム。

湯気をあげる車輪

駅にはすでに蒸気機関車が停車している。

運転席を外から見た様子。運転席内の壁に、上着がかけられている。外側には「No.09」という文字
運転席の壁にかけられた上着が、いい味を出している

机務段見学の前に、駅長さんにご挨拶をして、まずは停車中の蒸気機関車を撮影。

ホームに停車中の蒸気機関車

蒸気機関車の文化的価値

「芭石鉄路」は、炭鉱専用線だ。
けれど近年は、この蒸気機関車を観光の目玉として、大型休日や菜の花の時期になると、立派な客車をつけて観光客を乗せることもしている。

以前訪ねた別の鉄道では、現地で働いている人たちに「なんで機関車なんて撮影するんだ? こんなみっともないものを」と何度も言われた。
彼らにとって、蒸気機関車は「文明の遅れ」を象徴する乗り物でしかなかったのだ。

ホームを包子をかじりながら歩く駅員さんと、足元にまとわりつく二匹の犬

だが、ここ「芭石鉄路」では、蒸気機関車の文化的価値に早くも目をつけ、積極的に観光客を誘致していた。
鉄道員もそのことを誇りに思っているようで、「どんどん撮影してくれ」と言わんばかりに嬉しそうな笑顔をしていた。

こちらを振りむく白い子犬
ご飯目当てで、客や鉄道員に付きまとうワン
女性の鉄道員が立つホームに、新たな青い貨物列車が入ってくる
女性の鉄道員も中国では珍しくない
客車を外から見た様子

これは観光用ではなく、普通の客車。
観光用の客車はもう少し上等で、外をよく見れるように窓を大きくとってある。運賃も少し高めらしい。
けど、古いモノ好きにしてみると、やっぱり心惹かれるのはこのボロボロな客車の方。

客車を外から見た様子
赤と緑の手旗が、ホームの隅に用意されている
手旗式の信号に心がきゅんとなる
駅までの階段脇には、とたん屋根の家々

線路の脇には、鉄道員のものだろうか、いくつかの家が並んでいる。
私がかつて留学した中国雲南省では、線路脇は貧しい人たちの生活の場だったが、芭石鉄路ではどうなのだろう?

ボロボロの錆びた列車が停車している。おそらくは廃車
錆びた列車を見るとワクワクしてしまうのはなぜだろう

いよいよ机務段の中に潜入取材だ!

次回予告

中国四川省の鉄道「芭石鉄路」②

蒸気機関車が線路を走ってくる。蒸気機関の前部ステップには、青い作業着を着た男性が立ちのりしている

「机務段(機関区)」の仕事の風景を見学させてもらう。


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