モロッコ旅行記⑫ 8日目「青の街シェフシャウエン」
青の街シェフシャウエン
本日の目的地は、友人に「どうしても行きたい」と頼んで、オプションで増やしてもらった場所「シェフシャウエン(以下、シャウエン)」だ。
マラケシュが「赤の街」なら、シャウエンは「青の街」。
この日、私はまた、新たなモロッコの顔を見ることになる。
北部のロバは友達じゃない
8:30にホテルを出発。
フェズの都から北上した山奥にあるシャウエンまでは、車で3時間。
フェズを離れると、一気に世界が変わる。緑の大地が広がり、豊富な水をたくわえた湖が姿を見せる。
運転手のオマルは、ロバを見ると「ダンケシェン!」とあいさつの言葉をかける。ロバはみんなオマルの友達なのだ。
ところが、この日もロバを見かけた私と友人が「ダンケシェン」とあいさつをすると、なぜかオマルは沈黙を保ったまま。
「北部のロバは幸せそうだから、友達じゃないんだよ」
確かに、これまで南部で見かけてきたロバよりも、北部のロバはのんびりとしていて、幸せそうだ。
オマルは、南部の過酷な地で、いっしょうけんめい働くロバに敬意を表して「ダンケシェン」とあいさつをしていたのだ。
途中、どこかの町で休憩をとる。
山の角を見よ!
緑豊かな山道を車で走ること3時間。
大きな山をひとつ回りこむと、突然、山の斜面にシャウエンの町並みが現れた。
シェフは「見ろ」、シャウエンは「角(山の角)」。
「山の角」というのは、角のようにそびえる山頂のことで、「角のようにそびえた山の斜面を見れば、そこに我らの町がある」といった意味になる。
昔、スペイン領だったシャウエンは、モロッコに帰属するよりも、独立国家になる道を選ぼうとした。結局、モロッコの王様の人柄を認め、モロッコに帰属することになるのだが、そういった歴史もあり、シャウエンの民は誇り高く、気位も高いと言われている。
シャウエンに着くなり、モハさんも「どこから来た」と鋭く質問をされ、「シャウエンのひとは怖いよ」と言っていた。とても強い民族のようだ。
幻想的な青の街シャウエン
町に一歩足を踏み入れると、真っ青な世界が出迎えてくれる。
砂漠や、アラビアンな景色とはまったく異なる、メルヘンな町並み。なんて可愛いのだろう!
と、その前に、お昼ごはん。
はやる気持ちをおさえ、町の入口にあるレストランで、ハンバーグのような肉料理をいただく。
窓からは「山の角」を見ることができた。
昼ごはんを終え、いよいよシャウエンの町を散策。
迷宮のように入り組んだ小さな町で、人がすれ違うのがやっとの狭い道が、くねくねと続いている。
山の斜面に築かれた町なため、坂道や階段がとても多い。
壁に塗られた青と白の塗料は、虫よけと、日差しの反射を弱める効果があるらしい。とんでもなく美しい町だけれど、この色は、あくまで実用性を重視した色なのだ。
町の入口付近には、お土産屋さんが連なっている。
といっても、観光客はあまりいない。シーズンオフなのだろうか。時おり、地元の子どもたちが路地を駆けずりまわるのみだ。
どこを撮っても飽きないのだけれど、なにしろ時間がないので、シャウエンのガイドに従いながら、足早に町を散策する。
時間が許すならば、一泊したいほどに素敵な町だ。
死んでいるのかと焦ったけど、ちゃんと息をしていました(笑)。
階段を登ったり、坂道を登ったり……気づけば、ずいぶん高くまで登ってきている。
日々の生活を守る豊富な水
シャウエンは水に恵まれている。
町の共有水場では、絨毯や衣服を洗ったりする女性が大勢いた。
轟々と水路を流れおちる水。
青の世界を散策
町の「青」は、この塗料から作られる。
定期的に塗り直しをしているという。
どこを見ても絵になる。
そして、いよいよカメラの調子がおかしくなってきた。あとちょっとだから、がんばって……!
街の中央広場へ
1時間のシェフシャウエン見学はあっという間に終わってしまった。
短い時間ではあったけれど、オプションで追加して、本当に良かったと思える場所だった。
坂道や階段を通って、山の頂きから町の中央広場へと下りていく。
町の広場には、イスラム教のミナレットや、お土産屋さん、お洒落なカフェなどが軒を連ねる。
山側を見ると、町をぐるりと囲う、万里の長城のような外壁を見ることができる。
お土産屋さんまで真っ青。
可愛いグッズがいっぱい売られている。
楽しかったシャウエンを後にし、麓の町へと移動する。
シャウエンの周辺ではタクシーまでが青かった。
旅の仲間との涙の別れ
この日、マラケシュからずっと旅の頼もしい同行者になってくれた、ガイドのモハさんと、運転手のオマルとお別れすることになる。
本当に毎日楽しくて、旅の仲間に恵まれたことにひたすら感謝。
帰り道、モハさんがお茶を奢ってくれた。
モロッコ伝統のミントティ……ではなく、椰子の葉茶。今の時期(1月)のミントは美味しくないらしく、椰子や、他の葉の茶がおすすめなのだそう。
●ミントティの飲み方マナー
・急須に入れたミントティーを、高い位置から、グラスへと注ぎいれる。
・飲むときは、「ズズズ」と音をたてて飲み、「プハァッ」と満足そうに息を吐く。遠くにいる人まで、美味しさをアピールするためだそう!
楽しかった日々を振り返りながら、モハさんと、オマルと、四人で歓談。
オマルの奥さんの話をしたり、モハさんの彼女の話をしたり……。
最後、夜になってホテルに到着すると、オマルさん、モハさんと涙のお別れ。
本当に楽しくて安全な旅を、ありがとうございました! シュクラン!!
しょんぼりと寂しい気分で、友人とふたり、ホテルで食事。
モロッコのワインはさっぱりしていて美味しい。
ワインの効果もあって、早々に就寝。
さあ、明日は世界遺産になっている迷宮都市「フェズ」を探索だ!
次回予告
モロッコ旅行記⑬ 9日目「世界遺産・迷宮都市フェズ」
世界遺産の古都フェズは、9世紀に成立した、モロッコ初のイスラム王朝の都が置かれた場所。
今日は、迷宮のように路地が入り組んだ都市フェズを、ガイドなしで散策する。