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モロッコ旅行記④ 3日目「マラケシュの路地散策」その1

「マラケシュの路地散策」その1

マラケシュの自由行動、第2日目。
本日の目的は、前日に予約した高級ハマムと、マラケシュ観光だ。


皿に盛られたたくさんのオリーブ、パン、赤いハム一枚、三角チーズ。ミルクと卵がそばに置いてある
いつもどおりの朝食

5:30に自然と目が覚め、相変わらずオリーブだらけの朝食を食べる。
日本にいたころはそれほどオリーブが好きだったわけでもないのだが、モロッコで食べるオリーブのあまりの美味しさに、帰国後も、安い瓶を見つけては、つい買ってしまうほどのオリーブ好きになってしまった。

赤い壁をした縦長のホテルの外観。六階建て
ホテルの外観はやはり赤い

9:30にホテルを出発。外観はこんな感じ。

ホテルの入り口。アーチ型のガラス玄関
小さいながらに入口の立派なホテル

謎のおじさんとの出会い

道に大きく張りだしたマクドナルドの屋根付きテラス席
広いテラス席つきのマクドナルド

マクドナルド。
外壁はやはり赤く、マラケシュの街並みに溶け込んでいる。

近代的なビルが並んでいるが、その壁もやはり赤い
近代的であか抜けた通り

近代的な店が立ち並ぶ通り。こちらもやっぱり赤い。

青い空の下に真っ赤な古い門があり、アーチ門を黄色いタクシーや車がくぐりぬけていく
目に入るのは空の青と壁の赤

ハマムの予約時間は午後なので、まずは国際通りから「ベン・ユーセフ・マドラサ(コーラン学校)」を目指そうと思っていたのだが、ドゥカーラ門をくぐった途端、現地アラブ人のおじさんに「クッパ・アルモラヴィッドがおすすめだ」と言われ、それがなんなのか良く分からないまま、急きょ予定を変更することに。

両脇に雑貨店が並ぶ狭い路地。おじさんがこちらを振りかえり、なにかを熱心に語っている
おじさんの案内のもと路地裏へと

とはいえ、相変わらず詳細地図を持っていない私たち。
おじさんから「クッパ・アルモラヴッド」の大まかな位置は聞いたものの、足取りは心もとない。
よほどふらふらしていたのか、しばらくすると先ほどのおじさんが後を追ってきて、「英語の練習にもなるから」と案内役を引き受けてくれた。

ここから思いがけず、心が浮き立つようなマラケシュの本当の姿――ごく当たり前に存在する「日常の姿」を堪能することになる。

マラケシュの日常の姿

狭い路地を地元民がいきかう
観光地ではないマラケシュの日常の顔

おじさんは旅行者だけならばまず入らないような路地裏をつきすすむ。
以下、すべてつたないヒアリング能力を駆使して拾った情報のため、真偽は不明。

大きなプラスチック製の容器が三つ並び、中にはねっとりとした液体が入っている。左から、茶色のアルガンオイル、緑色のミント、黄色のカルピス
アルガンオイルなどの量り売りコーナー

地元民の市場らしい路地裏では、さまざまな商店が並んでいる。
こちらは左から「アルガンオイル(太陽から肌を守る)」、「ミント」、「カルピス(洗濯用洗剤)」だという。

店先に並ぶ十六種の袋。すべてに穀物がわんさと詰まっている
袋の絵からしておそらくは穀物類の量り売り
灰色のジュラバを着た人が、鳥肉の吊るされた店の前を通りすぎていく
魔法使いのようなおじさんがとおりすぎたのは鳥肉屋さん

さすがに、自由に写真撮影はできず、残念ながらろくな写真はない。
そのかわりに、記憶を頼りに絵を描いたので、どうぞ天才画伯の芸術的センス抜群な絵をご堪能ください!!

伝われ……!!

鳥肉屋さん

魔法使いのおじさんの奥にある店(写真手前)は、肉屋さん。店の奥にはゲージが置かれ、生きた鶏が押し込められている。ショウウィンドウには切った肉が入れられ、秤によってグラム売りをしている。
店によって売っている部位が違うのだそう。どうしてだろうか?

薬屋さん

銀色の鉱物がザルの上に山盛りにされている
おじさんいわく「マスカラ」

こちらの鉱物はアイライン。
鉱物を粒状に細かく砕き、可愛い木製の容器に入れて使う。容器の蓋には木の軸がついており、その軸に粉を乗せ、目の縁にラインを描いていくのだという。
おじさんは「マスカラ」と言っていたが、説明を聞くと、アイラインのような用途のように思える。

壁の棚一面にぎっしりとプラスチック製の瓶が並んでいる
瓶のなかには漢方薬のようなものや鉱物が入っている

咳止めや、鼻がすーっとする薬などが売られている。
他にも体を丈夫にする薬や鉱物なども並び、化粧品、ハンドクリームも一緒に売られている。
「アルガンオイル」は、食べても、塗ってもオッケー。地元のお店で買物をしてみたかったので、このアルガンオイルを70DH(約670円)で、ヘナの粉、ヘナアートの型を50DH(約480円)で購入。おまけに、アイラインの鉱物や、鼻がすーっとする薬をもらった。

【鼻がすーっとする薬の使い方】
粉状になった薬をティッシュに擦りつけ、片鼻に突っこむ。もう片鼻を指で閉じて、ふんっと思いきりよく空気を吸う。すると薬が鼻に入り、眠気冷ましのガムを食べたような爽快感を味わうことができる。
挑戦したが、吸い過ぎてしまったようで、目玉が飛び出るほどの衝撃を味わった。き、効くぅ。

不動産屋さん

不動産屋の外観。シャッターのおりかけた店の前で、白いジュラバに黒髪(黒い帽子?)の男性、黒いジュラバに白髪の男性が立ち話している
不動産屋さんの前でお話をするモノトーンのふたり
不動産屋の看板。黒い板に、白い文字で、アラビア語と、鍵の絵が三本描かれている
鍵の絵が描かれた看板

こちらは不動産屋さんだそう。良く見ると看板に鍵のマークが描かれているが、これが「家の賃貸・販売」を意味するのだという。

黒魔術のひみつ

陰影のくっきりとした人気のない狭い路地の様子
狭い路地に光が差し込み、黒くパキッとした影が落ちる

おじさんは歩きながら、次々と口早な英語で説明をしていく。

「アラブ人の女性と、サハラ砂漠から来たベルベル人の女性を見分ける方法は簡単だ。アラブ人は頭に布を巻くだけで、顔は隠さない。だがベルベル人は、頭と額、口元を布で覆い、目だけを外に晒している。見ているとすぐに分かるよ」

「あの店の軒先、動物の頭蓋骨が吊るされているだろう? あれは黒魔術用の道具だ。憎い相手を呪うときに使う。口を封じたりね。昔の話だけれど……」

とりあえず心から楽しんでいたことだけは伝わってくる絵

頭蓋骨の写真はぜひ撮りたかったのだが、残念ながら撮影はできなかった。
大きさは猿の頭ほど。モロッコならば、狐かなにかの頭だろうか?

緑色の窓枠の中に、アーチ型の窓があり、格子がはまっている。格子には南京錠がいくつもかけられている
よく見ると格子にはいくつもの南京錠がかけられている

「昔の話だけれど」と言いながら、地元のモスクには今でも黒魔術が使われているのではと思わせるものがあった。

「モスクの入り口にある格子に、南京錠がかけられているだろ? あれは、自分にふりかかった呪いを祓うためのものなんだ。「鍵をかける」という行為で、呪いを封じてしまうんだよ」

ひときわ歴史の古い地区

狭い路地。家の入り口には、壺のような大きな鉢がふたつ置いてあり、植木がうわっている
石畳が美しい歴史ある路地

古い家々が立ち並ぶ狭い路地。マラケシュの中でも特に歴史が古い地域。
マラケシュは、もともとこうした小さな家から発展していったのだという。商売により拡大し、やがて豊かになった人々は、大きな家を建てるようになっていった。

隧道状の道をふたりの男性が歩いている
家かなにかの立派な門。木製の門扉と、水色の装飾が施された白い壁、屋根瓦は緑色
細かな装飾が施された門
狭い路地を人が歩いている
歩きつづけていると、観光客らしき人の姿も見られるようになってきた

マラケシュの門

車両通行禁止の隧道タイプの門。入り口のアーチ門には花弁を思わせる装飾がほどこされている

路地のあちこちにはアーチ型の門が点在している。
門扉は午前5時に開かれ、午後6時に閉められる。そうして砂漠から来た隊商と住人とを、内と外とに分けるのだという。
路地には、隊商のための無料休憩所がいくつもある。昔で言う隊商宿というやつだろうか。扉が閉じていたため、中を見ることはできなかったが、今も現役で使われているとか。
動物用、人間用と別れており、人間用はさらに人種・民族によって異なる建物を持っている。

Arabbian Telephone

石壁の中に木枠と、木製の二重になった門があり、それぞれにドアノッカーがついている
二重になった家の門扉

おじさんが嬉しそうに、家の扉に近づいていく。

「これはArabbian Telephoneだ。いくつかノッカーがあるだろう? ノッカーによって音が異なる。家の中にいても、ノックの音で、やってきた人の地位が分かるんだ。たとえば女性か、男性か。独身者か既婚者か。扉の中に扉があるが、身分の低い人は、小さい扉を使って中に入る。小さい扉を使うと、自然と頭を下げることになるね。それが家の主人への礼儀になるんだ」

飴色の木製の門扉。二重になっていて、それぞれにドアノッカーがついている
二重になった家の門扉

「ドアの左上部に模様があるけど、あれで住んでいる人の人種が分かる。黒人、ベルベル人、アラブ人……3つの人種・部族が見分けられるようになっている。ちなみに、ハーフにはハーフの模様があるんだよ。自分はベルベル人とアラブ人のハーフだから、扉にはハーフ用の模様がくっついている」

木製のドアのアップ写真。ファティマの手の形をしたドアノッカー、装飾の鋲、郵便受け
ファティマの手の形をしたドアノッカー

こちらは「ファティマ(預言者ムハンマドの娘)の手」の形をしたドアノッカー。
後で調べても情報が出てこなかったので、聴き取りが間違っていたのではと思うのだが、「指輪をしていると、未婚の女性がいる家。早く良い男性が来ますように、と手招きしている」という説明をしていた。

扉ひとつをとっても、こんなにも奥深い。

次回予告

3日目・赤の街マラケシュ「路地散策」その2

天井から無数に吊るされた形もさまざまなアラビアンランプ
次回は魅惑的なランプの工房へ

知れば知るほど面白い、マラケシュ文化。
気付けば最初の目的地がどこだったかも忘れて、夢中で路地裏散策に明け暮れた……。

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