プリマイアー

中学生の時から、僕の人生を面白がって殆どその全てを文字にして記録している友人がいる。

それは僕が23歳になっても未だ続いているが、彼と話す度に時折僕より僕の人生に詳しい彼に驚く事がある。

そして僕らは中学生の時から、もっぱら言葉遊びをする事に夢中だった。

どこに公開するでもない小説、ルポルタージュ、エッセイなどを書き連ね、これまでに夥しい文量が積み重なっている。そしてそれらの一貫したテーマが「全て嘘」という所なのだ。登場人物から著者、ルポルタージュであれば取材内容、場所、登場する店など、そこに書かれた事は一言一句「虚構/フィクション」でなければならないのが我々のルールである。その文章の実在性だけが真実なのだ。

そうして連なった一連の創作物群を僕らは「PREMIER」と読んでいる。これは一等の、という意味であるが、つまるところ最もクオリティの高い嘘をつこう、という悪ふざけである。

そんな彼が僕の人生を文字で紡ぐ時、僕は密かに思っている事がある。それは、彼が文字にしてくれる事でたとえ僕が自殺してしまおうと、僕の苦しみを全て「嘘」に昇華してくれるんじゃないか、という所なのだ。

彼がニタリと僕の人生を、苦しみを「嘘」にしてくれる、嘲笑ってくれるのなら、もはや僕は生を手放す事すら怖くないと思う。どうか今抱えるこの苦しみがいつか「嘘」になってくれ、そう思いながら今日も彼に僕の「痛み」を、まるでジョークを語るかのように告白するのだ。

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