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作り話 〜季節巡り〜拾陸

「真に望んではいない。そうだろう。」

見透かされているようで黙り込む。

「やりきればいい。まだ……だ。」

黙って頷くしかなかった。
しかし、ただ黙って言うことを聞くことも
出来なかった。
だから、……を隠した。
これは自分だけの秘密にして。
しかし、それすらも知っていてあの者は
敢えて知らない振りをしているのかもしれない。
そんな予感が頭を掠めるが、
時が来たときにわかることだから良い、
そう思った瞬間にあの者が口を開く。

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「やりきればわかる。そしてまた、お前は……。」

霧が深くかかり、気付けば姿は見えなくなっていた。

時々、話しかけると返してくる言葉は
柔く響く。
靄がかって見えないところも多い。
そんな時は、社に行き話をする。
これは、小さな抵抗。

「知っている。そんなことは。」

声だけが聴こえる。そうして…
また銀色の場所へ戻っていく。

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「次はどうする。……のか。」

あの者がそう訊く声に迷わず、同じ答えをする。

「いいえ、ヒトです。絶対に……。」

そう答えた瞬間に、あの者がいつか話していた言葉を思い出す。
望むことはただひとつ
望まれたことはただひとつ
2つは似ていて違う。

「どちらかひとつだ」

望むことはただ、今のまま繰り返し続けること。そうしたら…。これは、私の抵抗だ。
望まれたことは、ただ……いい。
だから、私は……を……かった。

「お前は、私を……………。」

あの者はそう呟く。

「だから、次は……を選んだのです。」

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           𑁍܀続く𑁍܀

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