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作り話 ~季節巡り~玖

「お前は、怖くないのか。この世から去ることが。」

答える。

「怖い…いいえ。それが来るのならば、そう言うことなのだと…。抗うことに何の意味がありましょう。朝があれば、昼、夜もあるように、ヒトの魂も巡るものと…。」

そう言うと、白狼は笑う。

「無粋な問いだったな。」

その言葉に返す。

「いいえ、私などのようなものに勿体無い…。」

鳥居の上の者はまたも問う。

「お前は、知らぬことは罪と思うか。」

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「知らぬことも、知っているということも
同じと思います。
各々が知ろうとすれば良いこと。
知ろうとせぬことも、そのヒトに判断は
委ねられていること。
相手の気持ちも口にする言葉だけでなく、
知ろうとすれば知ることは出来ると思って
おります。
自分には、知ることは出来ぬと、限界を思えば、そこまでにございます。」

軽く笑い遠くを見て、もう一度こちらを
見てその者は言う。

「ヒトは…思いひとつで…ということか。
やはり、よく分からんが、お前は…」

その言葉を遮るように

「只の、ヒトにございます。」

と話す。
夏から秋へ季節は変わろうとしている。
その者は笑い、社を見る。

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「鳥居からの眺めは良いのですか。」

と問うと、その者は答える。

「上から見ていると、ヒトの感情というものは
、どうにも分からぬ。だから、こうして
お前のように見えるようなものと話している。子どもはよく気づいているようだが。」

その言葉に返す。

「ヒトの感情とは、計り知れぬものと…。
憎しみでいっぱいになった時にヒトは、邪と
なるのでしょう。
社と言えど、誰かの幸せを願いに来るもの
ばかりとは、限りませぬ。
欲…線引きし、区切り、自分だけが良いというものになった時に誰かを不幸せにしようとするものになってしまうのでしょう。」

その者は言う。

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           𑁍܀続く𑁍܀

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