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作り話 ~季節巡り~陸

どれほど嘆いたろうか…。
どれほどの時が経ったのかも分からず
そこにいた。
過ぎる時の中、共に嘆いていた美しい者もいつしか姿を消してしまった。
誰かが来ては共に嘆き、いつしか消えていく。
「いつまで…。」
そんなことが頭をよぎる。

「お前は知っているだろう。」

と、あの狼の声が聴こえる。
するとその声に呼応する様に、
誰かが歌うように呼ぶ声が聴こえてくる。
それは、あの鳥居の上のあの方ではなかった。
左巡りに下から円を描き、軽く高く聴こえてくる。
気づけば立ち並ぶ鳥居の前にいる。

「今なら入れる…」

わたしは呟き、自らが望み時が来れば入れるその鳥居の前に立つ。

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一礼し、一つ一つ鳥居をくぐる。
ずっと前から知っているその歌うように呼ぶ
声に合わせ歌い歩きゆく。
自然と左巡りに下から円を描くように
舞いながら進むその先は…

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「ここにたどり着くとは…何を望むのか?」

聴こえた声に

「今少し、ここにこの桜の樹の傍に、
留め置き下さいませ。」

するとその声は

「お前は……の……か。その後ろにいる者は
ここへお前を通した。桜の樹の傍に居るといい。あの池が見えるだろう。その池のことを
お前は知っている。」

と言う。

「はい。存じております。」

それを聞いたその声は、高く小さく笑い

「遠く近い先に………。」

そう言うと、ふわりと目の前に立つ。

「感謝いたします。」

そう言い、顔をあげると…


           𑁍܀続く𑁍܀

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