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カジュアルワインゼミ・アカデミーコース「ディープ・イタリア3(南部)」

先日はカジュアルワインゼミのアカデミーコース(研究講座)の日曜クラスにて、シーズン4の第6回を開催。シーズン4は前半のメインテーマは「ディープ・スペイン」、後半のメインテーマは「ディープ・イタリア」、今回は最終回で「ディープ・イタリア3」でイタリア南部のワインについての多角的なテイスティング

イタリア南部という事で、カンパーニャ州、プーリア州、バジリカータ州、
カラブリア州、シチリア州、サンルデーニャ州などが対象で、伝統的な見地でのテイスティングならカンパーニャのタウラージあたりがサンプルになるが、今回は北部の資本進出や、グローバルなマーケットへの展開など、変化の著しいシチリア州プーリア州などを選びました。ラインナップは以下の通り。

Sample-1 White Wine
 Colpasso Grillo Sicilia D.O.C. 2022
 コルパッソ グリッロ シチリアD.O.C.
 生産地:イタリア/シチリア州
 品種:グリッロ
Sample-2 White Wine
 Colpasso Grillo Sicilia D.O.C. 2022 Appassimento
 コルパッソ グリッロ シチリアD.O.C. アパッシメント
 生産地:イタリア/シチリア州
 品種:グリッロ
Sample-3 Red Wine
 Mio Passo Primitivo 2022
 ミオ・パッソ プリミティーヴォ
 生産地:イタリア/プーリア州
 品種:プリミティーヴォ
Sample-4 Red Wine
 Preciso Nero d'Avola 2021
 プレシーソ ネロ・ダヴォラ
 生産地:イタリア/シチリア州
 品種:ネロ・ダヴォラ
Sample-5 Red Wine
 Nero Oro Reserva Nero d'Avola 2019
 ネロ・オロ・リセルヴァ ネロ・ダヴォラ
 生産地:イタリア/シチリア州
 品種:ネロ・ダヴォラ

セット1はコルパッソの2種類のグリッロの比較。
スタンダートのグリッロは柑橘系の香りを漂わす、まさに今風なフレッシュ&フルーティーのスタイル。一昔の前の南部イタリアの白ワインにあった、アルコールの強さが目立つ、酸のキレが乏しい野暮ったいワインの印象は何処へやら、とても綺麗な造りを実感。
もう1本はアパッシメントのグリッロ。要は収穫したブドウは陰干しして水分を減らしてブドウの凝縮感を高める手法。ほど良い濃厚さを感じさせる色合いで、シャープな酸の爽快さより旨味の強い濃厚な味わいのスタイル。同じ生産者の同じ品種と言えど、醸造のアプローチでこれだけ違うという良い見本。
最近はイタリア南部のワイン、特に赤ワインでアパッシメントで造るワインをちょくちょく見かけるようになった。本来ワインはブドウの段階で収量を減らしブドウを凝縮させて濃いワインを造るが、後天的に同じような効果を得られるのがこのアパッシメント。収量を減らせば原料代はアップするが、アパッシメントの場合、そこまではコストがかからず濃厚なワインが出来る、まあこの辺が理由だろうと思います。

セット2はプーリアのプリミティーヴォとシチリアのネッロ・ダヴォラの比較。いずれも近年、イタリア国内というよりワールドマーケットへの進出が著しいスタンダートレンジの赤ワイン。
プリミティーヴォはよくカリフォルニアのジンファンデルのルーツと言われるが、実際にはイタリアからクロアチアにかけて生息していたプリミティーヴォの亜種という論文も発表されたり、要は共通のDNAを持っているという事が真相の模様。
赤ワインとしては濃い目の色合いながら、ガツンとくる渋味ではなく、甘さまではいかない、生育の良さを感じさせる上品な果実味が上手くバランスを取っていて、こちらも一昔前のワイルドな印象は何処に行ったかぐらいの上品で綺麗な造り。ラベルのインパクトを考えても見据えてる先がグローバルな感じが伝わる。
ネロ・ダヴォラも一昔前のタンニン盛り盛り系ではなく、旨味とのバランスを考えた少々大人しい印象、ある意味の進化なのかもしれません。ただ、プリミティーヴォに比べるとよりドライ志向な感じであっさりした味わい。基本的に飲みやすいという表現は誉め言葉とは思っていないので、ネロ・ダヴォラとしてはかなり軽快な赤ワイン。

セット3はプレシーソのネロ・ダヴォラを残してのネロ・オロとのネロ・ダヴォラの比較。こちら後者はいわゆるリセルヴァなので、同品種での格の違いを見るテイスティング。
ネロ・オロのネロ・ダヴォラは実はアパッシメントのタイプもリリースしているが、ワインとしての序列はこちらのリセルヴァが上位。要はアパッシメントは後天的なブドウの濃縮であり、収量を制限する事での先天的なブドウの濃縮の方が、ワインとして手間がかかっているという位置づけなんでしょうね。
アタックからグッとくるカベルネのような渋味ではなく、むしろ中盤から余韻にかけて滑らかな渋味が心地よく続く印象。単純な旨味はアパッシメントでも濃く出来るかもしれないが、渋味とのバランスがもたらす長い余韻は、このクラス(普及品)のアパッシメントではなかなか難しいのかもしれない、アパッシメントするとどうしても、らしい甘味が背後にちらつく印象です。

という事で、今回はなかなかディープなテイスティングで、アパッシメントと収量制限での旨味の感じ方の違いなんかも取り入れてみました。

ちなみにカジュアルワインゼミのテイスティングはブラインドでやるのですが、品種や国を当てる事に主眼を置いているんではなく、こういうブドウをこういう生産地で、こういうマーケットに対してこう造っている、というような、そのワインに対する理解に主眼を置いてます。

7月期にスタートする講座も色々ありますので、興味のある方は是非ご検討ください。


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