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海底熟成ワインについての考察

横浜上大岡の京急百貨店COTONOWAでの「海底熟成ワインを楽しむ会」に、9/10と9/23の両日にアテンドとして登壇させて頂きました。

いつものCOTONOWAでのワイン講座とは違う、いわゆるイベントなのであまり喋らなくていいのかなと思っていたら、質問やよもや話もあって結局いつもと同じトークの量でした(苦笑)。

さてさて本題へ、今回は小網代湾でのボルドー・ブランとボルドー・ルージュを6か月間海に沈めて熟成させたものと、通常保存の同じワインとの比較。

実は最初にこのイベントのアテンドを依頼された時には「樽熟成の6か月でもあるまいし、たいして変化ないんじゃないのかな...」と自分自身懐疑的でした。

結果として、外観は白は変わらず、赤は淵にほんの少し熟成が見える程度、味わいは白は若干酸味が弱くなって、赤は渋味がまろやかになった印象。これは両日とも同様の結果なので、ボトル差的な味わいの違いではないと考えられます。

実はこのイベントの前に深川ワイナリーさんの海中熟成ワインのオンラインツアーに参加したのですが、その際の結果は今回の結果と違い、白は外観も味わいも変わらず、赤は外観も明るい色合いに変わり、味わいもかなり渋味がまろやかになったというのがナビゲーター方たちのコメントでした。オンラインツアーの為、私自身は試飲していないのが悔やまれます。

ここで改めてワインの熟成について考えると、ワインの熟成に絶対「必要」な物は何か、これは「時間」です。

酸素が無ければ熟成しないんじゃないのと思われる方もいるかもしれませんが、酸素は熟成に「必要」な物ではなく、熟成を「促進」させるものです。

同様に「促進」させる物が適度な「振動」です。よく日本酒に演歌聞かせたり、クラシック聞かせたり的な物がありますが、これも同様な効果を狙ったものです。

今回、瓶熟での6か月という短期間なので「時間」による熟成はミニマムだと考えられますので、酸素と振動による熟成の「促進」が原因の中心と考えられます。

つまり白ワインの変化は、ボトル内の少量の酸素が潮流の振動で攪拌された事で酸化熟成がわずかながら進み酸味が弱くなった、赤ワインの変化は、白ワイン同様、ボトル内の少量の酸素が潮流の振動で攪拌された事で酸化熟成がわずかながら進んだ事と、タンニンの重合により渋味がまろやかになったと推測できます。

では、なぜ今回の海底熟成ワインと深川ワイナリーさんの海中熟成ワインが異なる結果となったのか。

まず白ワインについては深川ワイナリーさんの物が微発泡のスパークリングだったために、ボトル内に酸素よりも二酸化炭素が多く、酸化熟成が進みにくかったから、赤ワインについては今回のボルドー・ルージュの方が元々のタンニンの量が多く、色合いにも味わいにも、そこまでの変化が現れなかったのかと。

実は深川ワイナリーさんの海中熟成ワインについては東京海洋大学との共同プロジェクトという事もあり成分分析も行われていました。

その結果は、

海底熟成も通常熟成も成分の数値は変わらない

との事。

では、なぜ深川ワイナリーさんの赤は色が明るく、渋味が柔らかくなったのか、これはタンニンの「量」は変わらず「質」が変化した故、要はタンニンの「重合」により色は薄まり、渋味が柔らかくなったと考えるのが妥当かなと。

つまり1のタンニンが10個ある状態から、重合して2のタンニンが5個ある状態に変化、タンニンは重合することで渋味は柔らかく、色合いは薄くなるという事です。

これ実は深川ワイナリーさんのオンラインツアーでも話したのですが、そうかもしれませんねぐらいの反応だったので、ワイナリーサイドとしても答えが出てないのかもしれませんね。

結論としては海底での熟成でも変化はあるが、沈めるワインによってその差は変わってくるという事です。

いやいや久しぶりにアカデミックに語ってしまった。


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