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ワインの細道 ~その一~

格付けは 進行形とは さにあらず

現在でもそれを頼りにワインを買われる方が少なくない、ボルドー地方のメドック地区の格付けですが、これあくまで150年以上前の商工会議所での取引価格を元にしているのであって、今の実力の物差しになるかというと少々疑問。

だって150年あったら代替わりするでしょ?

代替わりするってことは、オーナーや醸造家が変わり、ワインに対するスタンスがガラッと変わる可能性が非常に高いという事。ましてや150年以上前と現在では消費者の味の嗜好も変わります。

フランス料理だって、バターやクリームをふんだんに使った古典フレンチと、素材の味を生かすヌーヴェル・キュイジーヌでは方向性が異なる訳で、それに呼応するかのように、ワインのスタイルも必然的に変化するものです。

ちなみに代替わりしたり醸造家が変わるとすぐにわかります。

「へ~!すごいな、そんなに味でわかるんだ?さすがシニアソムリエ!」なんて思わないでください。もっと簡単にそれも飲む前にわかります。

何故なら...ラベルが変わるから!

往々にして、オーナーが代わったりするとラベルが変わったりします。なので、好きだったワインがいきなりラベルが変わった時は要注意です!

話を格付けに戻しますが、ラトゥールやラフィットなどの1級シャトーはプライドとプレッシャーの中、やはりどの時代にあっても相応のものを世に出してきました。(金儲けに走って大量生産して味が落ちた所もありましたが…)

しかし、2級以下のシャトーの価値は様々。レオヴィル・ラス・カーズやコス・デストゥルネル、モンローズのような、1級に迫るスーパー・セカンド的なものもあれば、投げ売りされてしまうような、過去の栄光がむしろ哀れな格付けシャトーがあるのも事実。

なのでメドックの格付けは、あくまで150年前の実力であって、現在進行形とは限らないという事、グラーヴの格付けなども入れ替えがない以上、同じ背景があるという事をお忘れなく。

「だったらサンテミリオンの格付けのほうがすごいじゃん!」という方がいるかもしれませんが、そんな簡単な話じゃありません。

ほぼ10年ごとにに見直しが行われるサンテミリオンですが、だからこそ、本来のスタイルを放棄し、話題性を追求するような、センセーショナルなワイン造りを目指す生産者もいるのも事実。なので自分の好みと合えばいいですが、合わないときは箸にも棒にもなりません…

ましてオーゾンヌとシュヴァル・ブランが脱退した今回のサンテミリオンの格付けが、果たしてどれだけ意味のあるものなのか。

どちらが良い悪いではなく、たとえ格付けであっても、パーカーポイント98点を取っていても、それはワインを選ぶうえでの、あくまで情報の一つでしかないと思います。

自分が生業とする業界の格の高い方と、夕食をご一緒する事があったとしても、その方との時間が楽しい時間とは限りませんし、そこで供出されたマルゴーがたいして美味しく感じられないかもしれません。

逆に居酒屋でご一緒した、お互いの仕事も知らないサラリーマンの方と、ものすごく楽しい時間を過ごせる時もありますし、その時飲んだ名もないグラスワインがとても美味しく感じられるかもしれません。

要は世間的な格付けは、自分に何かを与えてくれるかどうかとは次元が異なるという事、結局は自分の物差しで選ばなければならないし、自分が美味しいと思った物は、たとえワイン専門紙がボロクソに書いても、知ったこっちゃないという事で良いんじゃないでしょうか。


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