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テレビのやらせを子供心に知った話

そういえば、テレビ=やらせがある。というのは、今や当然の認識だと思う。

インタビューを受けている人が役者で、局によって似たようなインタビューでも、その立場とかがコロコロ変わったりしているのがインターネットで検証されていたり、ご存じであろう。

就職活動なのか、通勤なのか、あるいはエキストラなのか、ハッキリして欲しいものである

テレビに言わせれば「演出の範囲でやらせではない」と言うだろうが、視聴者は甘くない

思い出せば、小学校の頃、そういう物があるというのを、実際に目にしたことがある
今と違って「やらせ」など無いとみんなが信じていた時代に…だ

小学校の頃に、学校の前に文具屋があった
そこで、登校前にノートとか鉛筆とか、ちょいとした物を購入して、学校に向かうのだ

その店が、テレビに出ることになった…

話を聞くと「今でも活躍するおじいちゃん・おばあちゃん特集」とのことで、100歳を超えてもお店に出ていたり、まだ現役でいるご老人を特集する。と言う話

そこに、その文具屋のじいさんが出演することが決まったのだ…

とまぁ、ここまでは現代でも「よくある話」なのだ

だが、よくよく考えると、そのじいさんが店頭に立っていたのを見たことがある人は、いないのだ。

そう、結構な頻度でその文具店には通っていたが、そのじいさんが店頭に立っていた事など、一度もないのだ…

クラスメイトに聞いても「あそこ、じいさんなんていたんだ。初めて知ったよ」とか、そんな状況

それが、テレビに出たのだ…
その日の夕方のニュースを見ると、やっている。見覚えのあるいつものお店に
「いつも元気なおじいちゃん。100歳を超えても店頭に立っています。ただ、最近はお釣りの計算が苦手になってきたみたいで、お客さんである小学生が計算しています」
とのこと…

母親に聞いてみても
「あそこのお店におじいちゃんいるのは、昔から知ってたけど、ボケちゃってるから店番はやってないって言う話だよ」
と返事が返ってきた…。

次の日
「お釣りの計算できないんじゃ、俺らが計算ミスしたら、好き放題にお金を持って行かれるって事だよな~?」
「そもそもあのじいちゃん、見たことある?あそこは、おばさんとおじさんの2人でやっている店だと思ってた」
とか、そんな話で持ちきり

結局その後何回行っても、おじいちゃんの店番に出会うことは、なかった

そして数年後、その文具屋で葬式が行われているのを見たときに、そのじいちゃんは亡くなったのだ…と言うことを知った。

思えば、あれはテレビのやらせだったのであろう
お釣りの計算も出来ないようなじいさんを店頭に出して、何かあったら店としても責任がとれる話でも、ない。

あれが、テレビのやらせと言うのを初めて知った、そんな出来事だったのだと思う。

その文具屋も、今はない。
自分が高校に入る頃に閉店してしまって、そこから四半世紀、もはや、文具店の関係者は存命か存命じゃないか、微妙なところであろう。
だから、真相は知りようがない。

けど、あの日、いわゆるテレビのやらせを知った。個人的には、そんな日に感じた…

もし、気が向いたなら…