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乗換駅の中華料理屋

サムネが昨日と同じなのは、お詫びします

薄汚れた街には、小汚い場所がよく似合う

高校時代、土曜の午後とか、友人とよく行った店がある…。今日はそこのお話

その駅には、駅を降りると大きなメインストリートがあった
メインストリートは比較的綺麗で、洋品店や喫茶店、イトーヨーカ堂とか、あるいはマクドナルドとか、雑多ながらも明るい店が建ち並んでいた

そこから脇道に入って、商店街を抜けた通りに、その店はあった…

その通りは、通り全体がなんというか小汚く、駅に近い割には取り締まりが甘いのか、道の両側のあちこちに自転車が駐輪されている。そんな通り

道を1本こっち側に来ると「よくもまぁここまで小汚い街が作れるものだ」と感心できるような通りで、そこに飲み屋やら大衆食堂、レコード屋に雑居ビル…と言う中に、その中華料理屋は、あった

外側から見ると3階建て、そこそこ大きなお店で、店内入口の脇では厨房に面する窓が開け放されていて、いつも美味しそうな匂いを外に放出していた…

自分と高校時代の友人たちは、そこをお気に入りにしていたのだ…
そして、土曜日は、よくそこに寄ってから、遊んで帰ったりした…

昼過ぎに店内に入ると、ちょっと奥の座敷に案内される
が、奥に行くと、足下に違和感を感じる
そう、軽く滑るのだ…。油が床にまで回っている

ハイヒールなど履いて入店しよう物なら、滑った挙げ句に側頭部を強打して耳から血をドクドク流して死ねそうな滑り具合なのだ…

油はさらに色々なところに回っているらしく、座布団を触ると一瞬「革製かな?」と錯覚させられるが、普通の布の座布団
そう、そこまで油が回っているのだ…

そして、奥の壁には謎の扉が2つある
1つはトイレ、もう1つは野菜室なのだ
そして、看板など無いのだ
「トイレどこです?」
と聞くと
「奥の扉がそれだよ~」
などと返される。
そして、間違えた方に入ると、店員が来て注意を受ける

そんな店なのだ…

また、ある時は2階に案内される
急な階段を上って2階に行くと、2階は比較的殺風景な、コンクリート打ちっ放しの壁のような灰色の壁。

隣の席の別の高校の生徒達が
「とりあえず灰皿、ビール。後は餃子」
などという注文をしても、それをそのまま実行してしまうお店。

そして、外から見ると、窓があったはずなのに、2階に窓は、無いのだ…

本来、外から見ると、窓のあったところには、打ちっ放しのコンクリート風の壁しかない。
不思議に思って近くに行くと、謎が解ける

ベニヤに白ペンキを塗っているのだ。それで窓の部分も、壁に仕上げてしまっているのだ
現在なら消防法で絶対に行政指導が入るであろう状態なのだ。

と言うか、床が油でヌメってる時点で、昼時に火災など起きたら、大勢の人間の丸焼きが作れる。そんな店内構造なのだ

そして、ベニヤ板に白ペンキを塗っているだけなら、真っ白なはず
それが「コンクリート打ちっ放し」色になる理由も、近くに寄ると解るのだ…

落書き。それも無数の。そして内容が便所の落書きレベルという、低俗な耳なし芳一がそこには展開されているのだ

それの結果、白かった壁は遠くから見ると灰色に見える壁になっているのだ…

・○○高校の3年4組の××は誰とでもやらせてくれる女→ベル番(ポケベルの番号)○○ー○○○○
・う○こち○こま○こ(と、延々とズラズラ書いてある)
・○○の彼女の××は、1発5000円で…
・天上天下唯我独尊

……と、見るに耐えない落書きが天井近くまでびっしりと書き込まれている
それで灰色に染まってしまっているのだ

ここからは友人談なのだが、伝説はまだある
と言うか、ある意味その友人は「持ってる」友人で、その店での謎トラブルがやたらと多い。

・注文すると返事が「やーだよ!」
・五目ラーメン頼むと、出てきたのは六目ラーメン(今流行のコオロギじゃないですが、その手のタンパク源)文句言うと「作り直す」と言いながら数十秒後に「そっくりな盛りつけの五目ラーメン」再登場
・指入り
店員「だいじょーぶだよ!慣れてっから」→友人「そっちを心配してねーよ!」

そう、そんな店なのだ

一人で入ると相席にさせられて、知らない人と食べさせられるのも、この店の特徴

相席したオッサンと似たタイミングで「ラーメンと餃子」を注文したら、こっちの餃子は注文してお冷やと同時、1分以内に届いて、オッサンの餃子はラーメン届いて、そのラーメンが半分くらい減ったところで届くという、不可思議なお店。

決して衛生的でマトモとは言えない、そんなお店
けど、安くて「結構食える味」だったので、よく使っていた…

そこは、今も実は、ある
けど、再開発やら何やらで、キチンとした店になってしまった
「高校生への灰皿、酒の提供はいたしません」などと、貼り紙が出されている

2階席は、きっちりと窓があって、外が見える。あのベニヤ板も、灰色の壁も、もう存在をしていない。
もう、側頭部を強打して死ぬような床は、無い。
あのラバーのような感覚を持っていた布の座布団も、もうない。

ただ、味だけは、当時のまま。
味だけが、自分を昔に戻してくれる…

雑多な街がきれいになり、小汚い通りも再開発され…
けど、ここのラーメンみたいに、本質ってのは、実はそんなに変わらないのかもしれない。

そんな雑記

もし、気が向いたなら…