模型店 ~消えた町の風景~

模型店

文字通りである。といったらそこまでなのだけど、プラモデルを主に売っているお店
入口の横のショーウインドウには、誰かが作ったプラモデルが飾られていたりする

そのプラモデルが、妙に出来がよいのだ

今だと数千円するガンダムのプラモデル。当時は300円程度で、もっともっと作りが簡単で、色も1色のプラスチック。接着剤を使いながらそのまま組むと、何ともいえない不格好な玩具感丸出しの物が出来た…

が、そのショーウインドウの中には、それを使った物なのに、現代の数千円の物以上の物が飾られているのだ…

例えばガンダムのザクなら、肩の部分の塗装が少しハゲて、その下から黒鉄色の下地が出ている感じ
黒鉄色の下地の中には、赤茶けた塗装なども行われて「錆」を表現してあったりも、する

なぜか、そんなのが飾られている模型店があったのだ

店に入ると、薄暗い店内の壁際に、びっしりプラモデルの箱が置いてある
他にもエアガンや、各種塗料に接着剤、その手のプラモデル制作用に必要なニッパーや筆、スプレーなども置いてある

「あの外の展示されてるの、誰が作ったの?」と子供心に聞くと

「いつもおなじみのお客さんがねぇ、定期的に持ってきて、入れ換えていったりするんだよ。私には作れないからね」と、お婆さんという感じのおばさんは答えてくれる

壁際にびっしり置かれている(積まれている)プラモデルを見ると、ガンダム系と軍艦系、ミリタリー系は1カ所に纏められているが、その他の物は本当に雑多に置かれている。ジャンルとかも全く関係なく…だ

軍艦系は大和や武蔵、比叡や霧島などの戦艦、赤城や加賀みたいな航空母艦、妙高や利根などの巡洋艦、雪風などの駆逐艦、潜水艦など、箱の大きさで大まかに分けられている

ミリタリー系も同じで、箱の大きさで纏められているが、こっちは国籍などは気にしていない感じ
いわゆるドイツの4号戦車の下に、日本の九七式中戦車が置いてあったり、ドイツ兵キットの横に、日本陸軍歩兵セット(南方戦線)などが置いてある

戦闘機なども同じで、各種各国各時代の物が、乱雑に置いてある

まぁ、ここまではよいのだ

「その他の物」
これが、実に雑多に、実に多種多様な物が置いてある

「ガンダムと同時期に放映されていたであろうロボットアニメ」の模型、その下には「日本の名城」と書いて「大阪城」だの「姫路城」の天守閣のプラモデル

さらには「美しい日本の風景シリーズ」とでも言えばいいのか「ラーメン屋台」「風鈴屋台」「駄菓子屋」「船宿」やら、置いてある

果てには「Nゲージと同じサイズですので、そちらと併用して楽しめます」と箱に書かれた「山奥の温泉宿」「日本の農家」「田舎の駅」などがある

「果てには」というのは、これらには「植物の種」が付いている
「日本の農家」というプラモデルなら、完成後に水田にその種をまくと、芽が出てきて、いかにも米が育ってます…という感じになるのだ。

こんな物買う人いるのかな?などと思っていると、ショーウインドウの中に飾られていたりする
これも、普通に組んだだけでは決して出来ないであろう出来の良さで…だ

駄菓子屋のキットなら、外の壁にホウロウ看板の「オロナミンC」や「ボンカレー」の看板が張られて、いい感じに錆びていたり…
実際に作っても、そんな看板はキットに組み込まれてないのに、プロはオリジナルで作るらしい。

さらに訳が分からないのが「家電製品」のプラモ

扇風機や冷蔵庫のプラモだ
これもショーウインドウに飾ってあり、冷蔵庫にはシールやら貼られたり、妙な使用感がある
扇風機は扇風機の裏側の部分に埃が再現されて、いかにも掃除はしてません感がある

全部「作って、こうやって飾らせてくれって来るのよ」とのことだ

世の中、広いものだな…と感嘆しながら、ミニ四駆を買って帰る
小学校の頃は、ミニ四駆が流行っていたので、その辺は気にしていなかった…

そして高校、大学…

そう、その店は続いていたのだ
そして、たまにショーウインドウのプラモが入れ替えられている
無論、店には用がないので、素通りしていたが…

と言うことは、ずっと持ち込んでいた常連がいたのだろうか?
Googleマップを見ると、2012年あたりで閉店してしまったので、今となっては解らない

けど、閉店直前まで、ショーウインドウにはいろいろ飾られていた
誰かが、閉店まで持ち込んでいたのであろうか…

それは、同一人物だったのだろうか…?

全ては謎の、闇の中…だ。

もし、気が向いたなら…