見出し画像

立ち食いそば屋

これは、高校の時のお話
今から30年近く前の話になるのかな?

自分は家から比較的遠い学校に通っており、電車通学
30分乗った後、1回乗り換えをして、さらに30分電車に乗るという通学

その、乗り換えをした先の30分のお話…

その路線は、基本的に本数が少なく、15分に1本という割合
だから、1本乗り過ごすと、必然15分~待たされるという状況

そして、それだけ待たされる路線というのは、基本的にローカル線に近いわけで、駅前とかはひたすらに寂れている。

時間潰しする場所など、存在するわけもない訳で、1本乗り過ごすと、駅のホームで、ひたすら待たされる事になる。

当時はタバコが安く(250円とかそんな)その気になれば、駅のホームでタバコでも吸って時間を潰す(当時は駅のホームでタバコが吸えた)というやり方もあっただろうが、未成年&その駅は教員も使う駅で、見つかると停学というリスクあふれる行為になるので、そんな行為を行う訳もない。

そして、当時はタバコの味も知らなかった

となると、別の時間の潰し方を考えるしかない。
相手は食べ盛りの高校生…

そこで重宝したのが「立ち食いそば屋」だ

駅のホームの中に展開されている立ち食いそば屋
小さなメニュー票が壁に貼られている

そば・うどん
・かけ…230円
・たぬき…250円
・たまご…280円
・きつね…290円
・天ぷら…310円
・持ち込み容器…30円

とか、こんな感じで
ここで時間を潰すのだ…

「おばちゃん!たまごそばで!」
と注文すると、店内のおばさんは、チルドのそばを、大鍋に沸かした熱湯にくぐらせ始める

チルドのそば

丼にも熱湯で湯通しを行い、茹で上がったそばを、ザッ、ザッ…と湯切りし、丼に入れる
次に生卵をそばの真ん中に落とし、上から汁をかける。

「お待ちどうさま!」
時間にして1分掛からないくらいの時間で出てくる。
それと一緒に、ネギの入ったタッパーと、揚げ玉の入ったタッパーを出される

そう、この店は、たぬきそばは、メニューにあって、実際には存在しない店なのだ

今となっては、おばさんのサービスだったのか、店の経営方針だったかは、解らない
どのおばさんが店番をしているときも両方出てきたから、店の経営方針かと思われるが、真相は闇の中だ。
学生向けのサービスだったのかもしれない。

ここの揚げ玉は、天ぷらを作ったときの端切れという感じで、不格好ながらも、1個1個が大きく、ガリッとしている
サクッという感じではないのだ
後半になると汁を吸って、柔らかく、汁全体が揚げ玉に汁を吸われ、急ぎの時は食べやすくなる。
それを食べると、次の電車が来る…という案配だ

次の電車が来るまでの間が短いときは、揚げ玉に汁を吸わせて、そばも揚げ玉もまとめてかき込む…なんて芸当も、出来る。

つゆは関東風に黒いつゆで、やっぱり大鍋で一定の温度に保たれている
ふと見ると、洗濯用ネットが中に入っており、ネットの中には、厚めに削られた鰹節、昆布などが入っている

そう、何気に出汁までこだわっているお店なのだ
麺はチルドでありながら、つゆは妥協しない。そんな店なのだ…

ちなみに、定期券で通っていたので、いくつかの駅で食べ比べをしたことも、ある
数店舗食べ比べた結果、やはりこの店が一番うまい。そんな味だった…

さらにちなみに、自分は元々生卵を食べられない人だった…
ひょんな事から間違えてたまごそばを注文して、我慢して食べているうちに、食べられるようになったりもした…

そして、先ほどのメニュー票にあって、気付かれた方も多いと思う

・持ち込み容器…30円

そう、車内に持ち込めたのだ
電車がホームに入ってきた…!でも、そばが食べたい。という時に、持ち込み容器で注文すると、持ち込めるのだ

電車内でマクドナルドを食べるのはマナー違反?とか、そういう話はよく聞くが、レベルが違う
「そば・うどん」である

電車に乗ってボックス席に座っていると(通勤型車両ではない)向こうからそれを持った部活の先輩がやってきたりする。

ボックス席

「おう!ちょっと横座るぞ!。間に合いそうになかったから、持ち込んだんだよ」
と、横に座る

先輩は下車駅までに全てを食べ尽くし
「じゃあ、また明日な!」と去ってゆく
そんなのが許された電車なのだ…

高校の最寄りの駅、路線、電車は、そんな感じだったのだ

そして、乗換駅になると、規模が大きく、また違う店が出ている
ここは正直そばは美味くない。業務用感が出てしまっていた

が、ここは「かき揚げ丼」が美味いのだ

かき揚げ丼を注文すると、飯を丼によそり、うどんやそばに乗せる天ぷらを持ってきて、なにやら秘伝っぽいつゆに潜らせて、飯に乗せる。ただそれだけ

これが、また美味いのである
ウナギのたれに系統が近いのか、甘辛く、それをたっぷりと飯にかけてくれるので、飯が進む。

この店でうどんやそばを頼むのは素人よ…などと、密かに悦に入る

……が、これらも、いつの間にか姿を消してしまった…
JRの方針か何か知らないが、全部同じチェーン店になってしまった
味に関しては、話にならない。

乗換駅のそば屋に関しては、お洒落なハンバーガー屋→無印良品のお店に変わってしまった

今も残っているのは「いくつか食べ比べ」をした1件だけだ
そこは、ちょいと有名になって、今も生き残っている
それ以外のお店は、今は全くない。

閉店時期が2000年代の少し前、98年とかそこら辺だったので、写真もなければ、店名も今となっては解らない。

けど、自分の青春の1ページには、確実に存在した…
そう、確実に存在したお店なのだ…

もし、気が向いたなら…