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世界は複雑 『真実VS本能』橘玲

PIAACという先進国の学習到達度調査によれば、 日本はトップです。(PIAACとは、PISAの大人版)

 

それでも、日本社会の中心が高学歴層で構成されるので、 偏差値60が標準とされる社会だといいます。 無意識で自分を基準にすると、平均が歪むからです。


著者は社会問題や事件を、 一般化することは慎まなければならないと前置きしながら、 目を背向けたい事実の理由を探ります。


世の中は、そう簡単には語れないのも真実でしょう。 私も難病を患い、痛切に感じます。もちろん、著者自身も「 人間は複雑」と語っている部分もあり、自覚的です。


それでも、本書は興味深く読み進めることができました。


幼児の男女にクレヨンで絵を描かせると、女の子は「暖かい色」 で人物を、男の子は「冷たい色」でロケットや車を、描きます。 男女の網膜と視神経の構造的差異を指摘しています。


話はそれるかもしれませんが、 アカウンタブルでないものについて思いを巡らすと、 SFやホラー、ファンタジーに辿り着くような気がします。


人間がこれらを欲したり、 創造あるいは嗜好するのは自然なことかもしれません。 本書のようなエビデンスではなく、感覚的な個人の感想ですが。


「甘いものを食べながら聞いた言葉は甘く感じる」P102
脳科学の実験から、「初対面の人には温かい飲み物」「 交渉の際は、 柔らかな感触のソファに座らせると相手の態度が柔軟になる」「 相手より物理的に高い位置に座ると、交渉が有利」 など示唆に富みます。


中盤からは、政治的な話が多くなり、前半と毛色が異なってきました。


初版ということもあり、誤植が数箇所ありました。

 

 

 

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