アートボード_1

『パラサイト』雑感

先日、鑑賞してきた『パラサイト 半地下の家族』。
痛烈な格差社会を描いた映画でした。

以下、ネタバレ満載で感想を書き綴りますので、まだご覧になっていない方は回れ右でお願いします。
(ポン・ジュノ監督がネタバレ禁止令を轢いておりますが、そうでなくても事前情報なしで鑑賞していただきたいです。是非に!)
















だいじょうぶですかね。
未鑑賞の方たち、上手く撒けましたかね。




いやー、しんどい。
なんてしんどい映画なの。

しんどいっていうのは、お腹いっぱいなのに「たんとお食べ」って100%善意でおかずを用意してくれる田舎のお母さん的なしんどさ。
コメディやサスペンス、ホラーなどいろんなジャンルが混在してて、モンタージュを始めとした秀逸な表現技巧が随所に挟まれてて、というか全編通して1枚絵を観ているようで、脚本もおもしろくって。

伝わります?盛り込みすぎなんですよ。
そんでもって上手いこと収斂させるんですよ。

ポン・ジュノ!力(ちから)!!!

って思わず叫びそうになりました。


でもね、やっぱり一番しんどいのは脚本。
韓国人からすると日常に蔓延っているのかもしれない光景が、とても他人事とは思えない。
むしろ心当たりしかないんですよね。
韓国だけじゃない、日本やアメリカ、イギリスなどで問題視されている経済格差が、痛々しいほどリアルに描写されているんです。


半地下に暮らすキム一家が裕福なパク家に侵入するようになったのは、友人ミニョクがギウに家庭教師の代理をしてくれないかと持ちかけたことがきっかけでした。

が、そもそもミニョクは妹ギジョンが美大に「行かない」んじゃなくて「行けない」ことを認知していなかった。
その上で、真剣に交際を考えてる教え子ダヘのことを工学部のやつらには任せられない、とこの誘いを持ちかけてきたんですよね。

失業中の一家の経済状況にはどこか無関心で、ギウとなら恋仲にはならないだろうと見下す友人。
冒頭から(おそらく無意識の)格差構造を絶妙に突きつけてくるんだからポン・ジュノ、恐るべし。


キム一家が侵入していく過程は圧巻ですよね。
だんだん早くなっていくテンポが、最終的に5分間のモンタージュに繋がる。
家の設計から登場人物の導線まで計算し尽くされていて、あれはもう芸術の域でした。


余談ですが、一番堪えたのはセックスシーンかもしれません。
性の描写に関しては唯一貧富の差がないのに(パク社長は「安っぽいパンツがあれば興奮しそう」とか言っちゃう)、ソファの上でセックスに耽るパク夫妻と、テーブルの下でそれを延々聞かされるキム一家。
パラサイトの構造がここでも視覚化されているからこそ、侮辱的なシーンでした。


で、安っぽいパンツで興奮しちゃうパク社長は使用人と一線を引きたがる。
父ギテクがプライベートに踏み込んだ質問をしても2回目は答えなかったように。
その一線を半地下の「独特な臭い」が越えてしまったからこそ悲劇が起こってしまったわけなんですけども。


ギテクが地下に篭った後、亡きパク社長に向かって謝罪するシーンはすべてを物語ってますよね。
はたして悪者は誰なのか。

悲劇の中、キム一家で最も優秀だったギジョンだけが亡くなるのも残酷です。
誰の代わりでもなく唯一自分で就職してみせた、セレブな生活が似合う人だったのに。


と、思いつくままに感想を書き綴ってきましたが、とにかく傑作です。
絵画のような美しさで社会批判をする作品を、リアルタイムに映画館まで観に行けて本当によかった。

お母さん、産んでくれてありがとう。
これからもおかず残さず食べるね。

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