砂糖漬けにしていた夢

VETEMENSのボトムスを履いてユニコーンを抱える男の子、NCTのテヨンくんだ。

彼のことは顔がすごくて、ラップとダンスが上手いことしか知らない。
だけどファンシーな格好をしている残像がまぶたの裏に焼きついてしまって、あれからずっと彼に夢を見ている。


わたしはZipper時代のAMOちゃんに憧れていた。
当時高校生だったわたしはAMOちゃん行きつけの美容院に通ってピンク髪にしたし、映画『The Virgin Suicides』から影響を受けたというガーリーカルチャーの文脈を理解するためにソフィアコッポラ監督作品を漁ったし、SATURDAYSっていうグループを作ってアフタヌーンティーもした。

彼女の、甘さの中に毒っ気を孕んだ女の子像に惹かれていた。
と同時に、色白でもなければクレームブリュレの甘い香りを纏ってるわけでもないわたしに、そのスタイルが似合わないことも自覚していた。

「好きな世界観」が「似合わない」というのは、想像以上の葛藤がある。
わたしは自分に似合うスタイルを追求していくことにした。


大学生になって渋谷のアパレルショップでバイトをした。
毎週のように着用コーデを考えてるうちに、ざっくり胸元が開いたトップスにペンシルスカートを合わせたシルエットに落ち着いていった気がする。
全体的な色味も、淡いカラーは避けた。

高校生の頃に描いていた女の子像とはかけ離れていく。
だけどこれでいい。
似合ってるのが一番いいんだと自分に言い聞かせてきた。


先日LAに飛ぶ前、パッキングをしていた。
旅行の中でもわくわくする大好きな時間なのに、スーツケースにどんな服を詰め込もうかと考えても気分が上がらない。

気づいたらファッションに対して保守的になっていて、そんな悲劇を突きつけてくるようなスーツケースだった。


だからVETEMENSのボトムスを履いてユニコーンを抱えるテヨンくんを見たとき、彼を取り巻く雰囲気すべてがかわいくて泣きそうになった。

CHANELのバッグにもバズライトイヤーのピンバッジを付けちゃうらしいテヨンくんのファンシーなスタイルは、かつて夢に描いていた女の子像を思い起こさせてくれたのだ。


アイドルって夢を見させてくれる存在なんだと思う。

わたしは足取りが軽くなったようにペールトーンの服を買いに走った。
おかげで2020S/Sが楽しみでしょうがない。

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