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Vivienne Westwood冒険記(前編)

服の専門学校を卒業してから、イギリスのラグジュアリーブランド「VivienneWestwood」本社アトリエで服作りの方の仕事をしていました。

学校時代は賞とは無縁で特に才能もありませんでしたが、無鉄砲・前向きという武器と「デザイナーVivienneWestwoodの服作りを見たい」という気持ちだけで、本社のあるロンドンへ行ってポートフォリオ(学生時代の作品)と手紙を片手に「仕事させてください」と直談判して、それから色々あって仕事できることになりました。

貴重な体験だったので、体験そのものが他の人にも響くのかなと思い書きました。

前編は、何の実績もない僕が本社へ直談判〜挫折・挫折・挫折〜Vivienneでの仕事が決まるまでの短くも長い冒険の話を書いています。

(後編は実際にVivienneで仕事をして体験したことの話)

何もない若い人間がラッキーを起こそうとするので、やることなすこと驚くほど効率悪いしバカだな〜と思うところ多いと思いますが、そんな無鉄砲も含めて温かい目でみていただけると嬉しいです。

(ロンドンを横切るテムズ川)

Vivienne Westwoodに惹かれて

乗り継ぎでドバイを経て、ロンドンのGatwick空港に到着。

キッカケは何となく「DO IT YOURSELF!」というVivienneWestwoodのドキュメンタリーDVDを見たことでした。

見るまではVivienneWestwoodという人を全然知らず、
DVDを通して初めて見た時は
「何てパワフルな人がいるんだ」って印象。

それからVivienneに興味が湧き、彼女の本を読んだりして
彼女の生い立ち・服作り・性格・生活色んなことが突飛というか、
より惹きつけられて、

Vivienne Westwood本人の服作りを直に見たい。知りたい

一番理解できないファッション、だけどパワーがあって、ヨーロッパでも評価されているファッションを生で体感して知りたい

そんな気持ちが強くなって、
すぐに渡英の為の貯金をして、直談判しにロンドンに行きました。

イギリスで仕事の経験を持つ前の職場のデザイナーからは
「イギリスでトップのブランドだから、直接ポートフォリオを持ち込んでも無理だから絶対にやめた方がいい」
と釘を刺されての渡英でした。

メールを送っても返事なんかこない。待ってる時間も嫌。

だったらリスクは大きいけど、直接アプローチして、熱意を最大限伝えたい。
駄目なら駄目な理由をその場で聞いて、
どうすればVivienneで仕事できるかできるだけ早く知って対策を打ちたい。

そんな考えるより行き当たりばったりな人間なので、
もともとVivienneで仕事する為に海外の学校へ行こうと準備してましたが、
無謀にも学校をパスしてすぐに渡英しました。

到着〜取り調べ〜不運な初日

話は戻って、成田から12時間かけてロンドンのGatwick空港に到着。

そこで早速の問題発生。

全く入国の準備をしてなく、英語も聞き取れないので会話にならず、
税関で4時間止められ奥の方で取り調べ。笑

取り調べ中は刑務所の面会室の大部屋版みたいなところで、監視されながら見た目危なさそうな人たち7人くらいと一緒に待機して過ごす。
そんな状況でお菓子やら出してくれるのは有難いが、そんな気持ちの時に食べる気になれない。

4時間の取り調べの末、
結局誠実に受け答えたら、ただのものを知らない若い馬鹿者と伝わって解放されました。

で、空港を出たのは夜。

そんな時間でも当日予約で泊まれるような平日1泊700円のホステルに予約して、初日はそこを寝床にしました。

そして待ちに待った初日。

Viviennneへの気持ちは並々ならなくあったけど、
言っても持ち込みアプローチなんて
相当気合入れないと身体が動かないようなこと。

ポートフォリオを持って、
バスの中で何より身体を動かすことを何度も心に言い聞かせ追い込みつつ、
気持ちを入れつつ、
ドキドキしながら本社のアトリエへ。

(目の前の家がその住所にあった閉鎖的な建物)

調べていた住所に行ったけど、
予想だにしていなかったことに
そこにあるのはドアすら無い
駐車するところが鉄格子で囲まれたいかにも閉鎖的な建物だけ。

周りを見渡してもそれっぽい建物が全く見つからない。

右往左往するにも気配すら感じられず、
何度もGoogleMapを確認しながら探し回ること30分。

さすがにと軽く勇気を振り絞って、近くで何やら植木を切ってるおじさんに英語で聞いてみる。

すると、まさかのそのとてつもなく閉鎖的な建物が本社だそう。
だけど土・日(その日は土曜日)は休みなので、今は閉まっていて、月曜日になったら空くよ、と。

なるほどと理解しつつも、あまりの無計画さにちょっと反省。

勝負の2日目。本社のマネージャーと対峙して。。

とりあえず戦場は分かって、月曜日までは待つしかないとも分かったので、
こもって反省しててももったいないので、
土日は同じホステルに泊まりつつ、美術館をとりあえずいくつも巡る。

ちなみにロンドンの美術館は、ほぼどこも無料で観れる。

子供のうちからアートに触れることが、国にとって大きな利益に繋がると考えのもとの大胆な政策。

フランスもそうだけど、アートがどれだけ社会に価値を与えているか、そこの理解度が高いというか、多くが子供の頃からアートに日常的に触れてるから、アートの価値が日本よりも高い。
アートは答えが一つにならない自分自身の受け取り方ができる、科学や数学みたいな型に当てはめて全員が同じ解を持つのとは違うジャンル。

だから集団主義よりも個人主義の方が強い地域柄もあってだと思うけど、そういう日本にいると気づかないアートに対する考え方は勉強になる。

今回の主題ではないのでアートと美術館の話はこの辺にしつつ、

初日と同じルーチンで気合いを入れ直しつつ、キャリーバッグを片手にいざ2度目の出陣。

また驚いたことに、土曜日と変わらず鉄格子があったままの、
いかにも外部の者は一切禁止とばかりの状態。

入れそうな場所すら一切なし。

なので、アプローチしようがない。さすがに立ち尽くす。

すると、かなり狭い道沿いにある建物の一辺に、本当に少しだけ人がそろそろしてて
近づいてみると、
牢屋のドアみたいなドアが鉄格子に馴染むようにあって、
そこから建物へ人が出入りしている。

この入り口、外部を嫌ってる感がで過ぎです。笑

大企業のような大きいビルに感じる敷居の高さじゃない、
小ぢんまりしてて常連以外入店禁止の高級レストランのような建物。

それに負けじと気合い入れ直して、
とてつもないアウェイ感を振り切って建物の中まで入って、
エントランスの女性に何しに来たか想いをまず伝える。

その女性は優しそうな口調の人で、
じゃあそれならと担当の人を呼んでくれました。

そして背の高いいかにもできそうな女性が出てきて、
その人インターンも含めた現場のマネージャーだそう。

それに物怖じつつ、全ての旨と気持ちを伝える。

すると、30%驚き、30%呆れ、40%誠実に、

「次のインターンは半年後だから今は無理。それにインターンをしたいのなら、このメールにポートフォリオを送って。審査してOKなら、次に英語で面接審査して、それでOKならインターンに参加できる」

と説明される。

とにかく無理だよ、だから早く帰って、と暗に言われたような対応。

そりゃそうだよと思いつつ、
若かった僕は失礼ながら「それでもやりたい、何か他に方法はない?」と相手まかせのことを言ってとにかく可能性を探りつつ粘る。

さすがにそのマネージャーは相手にできないと、
捨て台詞のように言って帰ってしまう。

その場にエントランスの女性も、何とかしたいけど私にはどうしようもできない。。と。

ここにい続けるのは失礼だし何も思い浮かばなかったので、
半ばどんな形でも少しくらいなら進展できるだろうと思い込んでいたので、こんな結果になってすごい凹みながら帰る。

背水の陣。藁にもすがって

それから4時間くらい呆然とするが、
今はイギリスにいるし半年分の貯金と時間を費やしてるので、
本当に小さくて何に繋がるわからないことでもイギリスでできることは何でもやろうと、決断する。

そこで、さっきマネージャーとエントランスで話してた時に偶然Vivienneが出勤してきて挨拶したのを思い出して、
出待ちして本人に会えるのなら本人に直接手紙とポートフォリオを渡そう、と考える。

カフェで多分ゲイの人に絡まれつつも(別に偏見は全くないけど)、
すぐさま英文を作る。

それから添削をしてもらおうと、
専門学校の時に一度顔を合わせただけのロンドン出身のマイケルに連絡をして助けを乞い、
現地で直接会ってディナーがてらに添削をしてもらい笑、
断られてから2日後に今度は外でVivienne本人待ち。

(添削のマイケル)

だけど、出勤と退勤時間らへん合わせて1日5時間くらい待つも3日間全く会わない。

仕事時間中はお店へ行き、
何か起きればと店員の人にただ気持ちを伝えるという迷惑極まりないことをし、
Vivienne Westwoodのお店だけでなく息子がデザイナーをしているChild of the Jagoというブランドのお店にも同じことをして、、、

進展してるか分からないほど微力ながら手助けをしてくれたこともあったけど、
一向に変わらない日が続き、土日になる。

土日も同じくお店へ行きつつも進展せず、
何も起きるわけないだろうけど何かあればと、
これは本当に藁にもすがる思いでさっき書いた植木のおじさんにもう一度会いたいとメールをする。

そして、仕事中だけど職場に来ていいよ、と有難い返事をもらい会うが、
職場の皆にどうしようもできないと言われたのち、
伐採の手伝いをすることに何故かなり、
何してるんだろうと思いつつ伐採をする。

しかもその機会はそれっきりでさよならをして終わり。

待つのも苦手だし、高いお金減らしながらダラダラ待つくらいなら、
捨てられる可能性が高いけど別の人にVivienneに手紙とポートフォリオを渡してもらうようお願いして渡して、
自分なりのけじめをつけて帰ろうと思い、
3日後に帰国する飛行機の航空券を買う。

そして、帰国まで残り2日間。

1日は同じく本人を待って、
2日目は本人に会えなくても、上っぽい人(Vivienneに渡る可能性が高いと思ったので。3日間観察しててこの人って目処があった笑)に声をかけて渡す。

そんな気持ちで最後の週に入る。

1日目。相変わらず会えない。
キャリーバッグ片手に変わらず途方に暮れている。

そんな時、1人の40超えくらいの男の人が向かって来た。
何日も会社の前にいたので、職場のみんなにもジロジロ見られてたし、さすがに何か注意されると思い、、

ビビりながら立ち上がって、構えた。

険しい顔で「そんなところで何日も何をしてる?」と聞かれる。

もう想いを正直に伝える武器しか持っていなかったので、
正直に事の顛末を伝え、Vivienneに渡そうと思っていた手紙を読んでもらう。

それから2分間マジマジと読み、緊張した時間が流れる。

読み終えるとその男の人は、
「わかった。俺がVivienneにこれらを渡す。ただ今からイタリアに2週間出張するから2週間後帰って来た時に渡すよ。」
と僕に言って、初めて笑って、その後淡々とさよならを言って職場に行こうとした。

それを聞いて、正直な気持ちはやっとわかる形で進展しそうな気がして、
帰っても後悔しない形で終われそうな気になって嬉しくなりました。

この男の人は、Vivienneを待ってる間バイクで出入りしてるところを何度も見たことがあって、
多分アトリエの中で上の人だろうなと感じてた人だったので、
余計にこの人に渡せた幸運に嬉しい気持ちでした。

だけど手紙を捨てられる怖さが不意に湧き上がってきたので、
最後に大きな声で行くのを引き止めて、
その男の人の連絡先を聞いて自分のも伝え、、

そして快く受け応えてくれて、
もう一度さよならの挨拶をして、
たった1週間半だけど長い長い戦いが幕を閉じました。

それから帰国して、
3週間後にその男の人、テディからメールで返事がきて、
「Vivienneがメールを読んで、直々に色々教えたいから特別に今からインターンに参加していいよ」と。

ただ僕は帰国していたので(テディには伝わってなかったらしい笑)、
Vivienneが一番職場にいる2ヶ月後からインターンに参加することが決まりました。

それまでまた渡英費用を稼ぐ為の仕事を始めて、
待ち遠しく長かった2ヶ月が経ちました。

VivienneWestwoodでの仕事編へ続く)

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