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[読書MEMO]なぜアマゾンは「今日中」にモノが届くのか

<見出し>
1.物流部門をコストセンターでは無く重要部署として据える
2.データを用いたロジカルな意思決定と評価の仕組み
3.ユーザーファーストをもっとも大切にすること
4.システム周りの話
5.徹底した買い叩き
6.感想

https://www.amazon.co.jp/dp/B0788GNWZG/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_Nx17Eb1VS5EPX

1.物流部門をコストセンターでは無く重要部署として据える

アマゾンでは、物流部門をコストセンターと考えず、プロフィットセンターとも対等であると考えている。
物流部門の管理者にはMBA出身社を当てるなど、優秀な人材を置きコストをかけている。
また、システム化、ロボット化などx兆円という投資を惜しまない。
(日本の物流業界は投資は売り上げ高に対して4%程度だが、グローバルの数字になるがアマゾンは13%も投資をしている)
その投資によって、アマゾンの随一のUXが成り立っている。



2.データを用いたロジカルな意思決定と評価の仕組み

アマゾンでは細かな数字を担当者が把握している必要がある。
KPIを週次でレビューする会議があり、全てのKPIについて同じフォーマットで作られ、年対比、目標対比、直近の推移など数値を見ていく。
システムの稼働状況、正しく表示できていたか、ショッピングセッション数。注文数、CVR、新規顧客割合、価格、サードパーティー比率、コスト、不良資産率、在庫欠品率、配送ミス/不良品率、などが設定されており、上流から下流まで全体のビジネスを俯瞰してウォッチできるようにしている。

目標はx.x%単位で設定され、達成できたか、できていないのか、その理由、改善、目標上方修正すべきかなどを話あう。

「(前略)数字というものはコントロールするものだから、目標を達成しようがしまいが、理由を全て理解していなければなんの意味もないんだよ」

理由がわかっていなければ再現性がないということ。

KPIの達成がそのまま評価と密接に関わっている仕組み。
成果は多部署で何らかの理由により歩留まりすると未達で終わる可能性もあるので、多部署からも厳しいウォッチの目が入る。
(リテール部門が、これだけ売れるといった施策に対して、物流は人員稼働を調整するが、もし売れなかった場合、物流はリソースが無駄になり、工場稼働率、効率のKPIを達成できない、逆に売れると言ったのに人員配備が不足していて、発送等ができなかったなどがあった場合はリテールが営業目標未達になる、ということで互いに厳しいウォッチをしあうことで、予測やオペレーションの精度をあげている

3.ユーザーファーストをもっとも大切にすること

アマゾンは顧客至上主義、以下3つが具体的な話。
①ユーザーがECに求める、配達の速さと間違いなく傷のない状態で配送されることを徹底する。
②ECページの作りも同じ商品であれば1ページ内で全ての情報を見ることができる「シングル・ディティール・ページ」
中古品も新品も他の出品者の価格やレビューを並べて比較しやすくする。
(通常だと出品者から手数料を得るために出品者固有のページを作ったりするものだけれど、同じ商品が別のページでいくつもあってもユーザーはわかりずらい)
本来競合である外部の出品者をPF上に入れる。これによりユーザーはアマゾンが在庫を切らしていても外部の出品者から買える可能性がある。

ユーザーの求めることを正確に定義し、ビジネス上の判断基準に使っている。
自社の不利益になるようなことも結果的に顧客のためになるのならば、実行する。
一般の企業の場合、古くからのお付き合い的な商習慣が経済合理性に欠けても選択される、ユーザーよりも業界を見てビジネスの意思決定がなされることもあるが、Amazonはしがらみが無い分、思いっきり顧客の方向を向くことができている。

4.システム周りの話

Amazonのシステムは全て内製。
- 物流周りのシステム
顧客との約束である、到着日を守るため、社外のステークホルダーにも地道にシステム連携を行い、到着日に間に合わせるために何をいつまでにやるのかを管理している。
最も早く届けられるよう、需要予測を行い在庫を切らさないようにするのはもちろんのこと、頼む顧客に近い倉庫に商品を置くようにする。
また、工場の稼働時間や稼働効率もシステムでデータベース化されており、それらを加味してどこの工場から出荷させるのかをシステムで管理指示している。(素敵すぎる)
- 社内エスカレ
これも内製。社内wikiにナレッジを蓄積。
記事をかいた社員の電話番号/メールアドレスもわかりコンタクトを取れるように。
課題管理票システム:起票者がカテゴリを入れていくと自動的に担当チームに振り分けられ、かつ優先順位1位の個人がアサインされメールが飛び、課題解決時間まで分単位でカウントダウンされる。
やりとりのログも残る。
作業が完了したら対応者は解決ステータスにするが、起票者が不十分と感じたらキックして対応中にステータスを戻せる。

5.徹底した買い叩き

過去プチ炎上したヤマト撤退の件。
ユーザーファーストなUXを実現する為に、外注先にも安く、早く、届けさせたり仕入れたり競合同士で競わせていた。
アマゾン経由の売り上げがでかすぎて疲弊するまで競わされてやがて運輸業者はどこも撤退したという話。
アマゾンの下請けで荷物の仕分けをしていた小さな会社が、アマゾンの仕事を受けるうちに上場してしまった例もあるらしい。

本は出版社とリテーラーの間に「取次」という専門商社みたいな会社を通す商習慣なんだけど、基本的に書店は指定の取次業者から本を仕入れる。
アマゾンは取次も仕入れ値で競わせて、最も安い1位の会社から在庫マックスを仕入れ、足りない分は2位の会社から仕入れる、、、みたいなやり方。
配送業者と同じく、1位と2位では売上高が全く変わってしまう為、死にものぐるいで1位を取ろうとする。
がしかし、契約時に取り決めた仕入れ金額を超えたらいくらか払い戻すよ〜というやつ(「リバート」という)でもう少しで規定金額行きそうだったら順位が1位でなくてもその会社との取引を増やして「リバート」を得るようにコントロールしたりする。

面白かった話
アマゾンと取引している、A社が売上高2000億で、利益が100億、B社が売上高500億で利益が90億だったとすると、普通に考えるとB社の方が圧倒的に利益率が高く、1500億分のリソースやコストを考えれば売上高500億に落としてでも利益90億の方が経済合理性があると思うけれども、3期連続売上高2000億だった会社がいきなり500億に落ちてしまうと株価下落の可能性や今まで行なった設備投資が無駄になるなどの理由から、組織としてあるべき理性を失っていく。。らしい。。

6.感想

みんな大好きアマゾン。
アマゾンの方と仕事をした時に思ったのは、すごくロジカルかつUXに強いこだわりを持っているなあということ。
他社のシステムであろうが、分かりにくいものは分かりにくいから改善しろと言ってくる。(最初はちょっと驚いたけれど、ユーザーファーストかどうかを本当の意味で考えられなくなっていたなあと反省した)
そのUXにこだわるという根底にはユーザーファーストであるかどうかが、ビジネスの判断基準になっている文化だったんだと気づき。
5の買い叩きはアマゾンレベルじゃ無いとできないことだけれど、ユーザーファーストかどうか、を真剣に考えることはどの会社でもできることだし本当にそういう会社が選ばれる世の中になっているのはインターネット万歳って話です。
需要予測で、顧客の近くの工場に在庫を置いたり各工場の稼働状況を鑑みてどの工場から出すのが早いかをシステムが算出したり、職人の仕事って感じがして素敵でした。
システム周りの話もすごく良くできていて、こうゆう会社で働けたらいいなあと思うのであった。。

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