[読書メモ]AI vs 教科書が読めない子どもたち

読了後感想

ロジカルに文章だてられているけれど、筆者の方の親しみやすい文体でとても読みやすい本です。
AIが人間を超える存在になるという意味での「シンギュラリティ」は来ないということをAIとは何かから紐解きわかりやすく教えてくれる。
また、現状の子供たちの読解力を独自の調査で明らかにし、AIにできないゆえに、人間が身につけてはいなくてはならない「読解力」に警笛を鳴らす本。
お子様がいる方は、読んだら結構身に染みて感じることができるので、読んで良かったと思う人もいるかもしれません。(少なくとも、1,500円以上の価値はある)

AIの前提

AIとは、計算機であり、0,1の組み合わせで処理する機械でしかない。
問題に対して答を出したとしてもそれは「確率」「統計」「画像解析」で出しているように見えているだけで、答を理解して答えていない。
その為、「常識」や「読解」をAIができないという状況であり、AI技術者は、それを理解した上でAIが答えを理解して出したかのように見せているものである。

YOLO(You only look once)の衝撃

ワシントン大学の大学院生だったジョセフ・レドモンが開発したリアルタイム物体検知システム。
映ったものを即座にアノテーションし、それが何かを答えるもの。
その動画や細かい仕組みを説明しているわかりやすいブログがあったのでリンクを貼らせていただきます。
ブログ内にYOLOが動いている動画があるで。


Siriの例

「美味しいイタリアン」と検索して出る店と「まずいイタリアン」で検索して出る店が同じである。
これはイタリアンでよく検索されるものを統計的に出しているだけで、AIは意味を理解していないということを表す。
「美味しい」と「まずい」を論理的に教えることが難しく、統計的に作ったシステムに中途半端に論理を持ち込むと、精度がかえって下がってしまう
絶対のフレームがなく、柔軟な判断や読解が必要なものになってくると途端に精度が出なくなることを「フレーム問題」といいAI研究者の中では、フレーム内でなんとか解を出させるという方向で問題解決をしている。

AIが得意なこと

論理:問いに対して答えが明らかなもの
確率:計算機なので
統計:上に同じ

上記3つしか使わない仕事はAIに代替え可能である。(不動産登記の審査・調査、コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析など)

AIが発展しても残る仕事

共通点は、コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事、介護や畔の草抜きのような柔軟な判断力が求められる肉体労働。

高度な読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断が要求される分野。

学生の読解力調査から出た読解力の無さ

AIが苦手とされる「係り受け」「照応」「同義文判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定」で学年によっては確率よりも低い正答率となった。
また、読解力は何歳からでも訓練で伸ばすことが可能と思われる。

おわりに

GoogleやYOLOなどを無償で提供していることから、マイクロソフトのOSのようにAIシステム自体をパッケージ化して事業化することは難しいのでは、、と著者の方が書いていてこれからAIをビジネスのタネとしてやっていく身としては身が引き締まる思いでした。

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