社会科準備室の幽霊
放課後の、旧校舎の一室で、僕が人形とチェスを指すようになったのは最近のことだ。
その人形が言うには、自分は18世紀に生まれたチェス・オートマトンなのだという。
博物館で晒し者にされていたところを火事に乗じて逃げ出し、自らの「あっぷでーと」を繰り返しながらどこまでも、どこまでも旅を続けた先が、この極東の島国なのだという。
ちなみにこのチェス人形、先週までは自分のことを「旧校舎に巣食う幽霊」とか言ってたような気がする。「生まれつき重い病気を患っていて……この学校にも殆ど通えないまま卒業を間際に私は……ウウッ」などと言いながらゴホゴホとワザとらしく咳き込むなどした。
ちなみに初めて会ったときは「私は悪魔だ」とかほざいていたけど。悪魔だから人間の望む姿形で現れるらしい。なるほど、それで僕が好きな───、副部長の姿で現れたのか。どう見ても、我らが新聞部の副部長その人にしか見えないが、そういう悪魔の魔法なのか。(続く)
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