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決闘なら❝銀❞曜日にしてくれ

朝が来た。陽光が俺の瞼を刺すよりも早く、部屋に近付く足音で一日の始まりを知覚する。

ノックもせずに遠慮がちにドアを開けてメイドが部屋に入ってくる。
いつものことだ。メイドの手には一目で業物と知れる打刀が妖しく輝いている。
これもいつものことだ。メイドは打刀を何の躊躇もなく振り上げ、振り下ろそうとし、布団から飛び出した飛翔体───、その正体は俺が抱いて寝ている大太刀───の柄頭の直撃を喉笛に受け、もんどりうって倒れている。

「おはよう、マリヤ。今日も良い朝だね」

俺はアトウダ。隠居した親父殿に代わってアトウダをやっている。
そこで倒れているのは俺の首を獲る為に、身分を隠して使用人として潜入しているメイドのマリヤ。俺の首が獲れなければ彼女の家は取り潰しの運命にあるらしい。大変だな。

ぱりん。
こっちも大変だ。窓硝子が割れて見知った顔の女剣士が乱入してきた。

「大丈夫!?あたし以外の誰かに倒されたりしてない!?」(続く)

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