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【許してくれ】おれはnote推薦文に託けて自分の考えを開陳する【あのときのとき=サン】

死んだ女より もっと哀れなのは
忘れられた女です。
―マリー・ローランサン―

今回は挨拶は省いて本題に入る。この記事は「私設note推薦祭り」という名の私設賞に挑む為のものだ。ここまではいいか?

およそ2000文字の推薦文を書けばいいそうだ。主催者の主観に於いて「最も優れた推薦文を書いた者」と「推薦された者」の両者に1000円ずつのサポートが発生するらしい。つまり1文字あたり約1円の価値が発生することになる。途方もない大金だな。おれが推薦するのは、あのときのとき=サンの逆噴射小説大賞2020の応募作品「死んでくれ松五郎」だ。

(これを書いている時点で「スキ数」は90とある。おれの最もスキ数を稼いだ記事でさえ、この半分にも及ばないのだ……)

「エッ?『死んでくれ松五郎』だって?その記事なら、とっくに読んでスキも押してるよ」

……という方も多いのではないかと思う。だが、待て。俺だって凡庸な感想文を読ませる気はこれっぽっちも無い。おれが思うに、このパルプ小説の冒頭800文字の本当の美点は急転直下の衝撃的な展開でもなく、はたまた精神寄生体とやらを殺す為に記憶から消し去る、そして記憶から消し去る為に殺すというジゴクめいた歯車が噛み合って動き出す悲鳴のような物語でもなく、「SFのように空中に画像が浮かび上がる。」の一文から繰り出された、まるでSFというジャンルを離れた場所から冷めた目で見るかのような乾きに乾いた世界観でもなく(この作品はSFではないという何よりも雄弁な主張ではあるまいか)主人公とヒロインと、彼らのターゲットである犬(?)のネーミングにあると主張したい。

田啓司、林アンナ、そして五郎。
そう、「松竹梅」なのである。

この作者から登場人物への執着を感じさせない素っ気なさ、ある種の透明性こそが素晴らしいのだということをおれは主張したくて、おれは今まさにキーボードを叩いている。限りなく一般名詞に近い固有名詞だ。恐らくは海外で翻訳されても、その土地その土地の文化に馴染んだ「三点セットである何か」に因んだ名前にローカライズされてもおかしくない名前だ。それがいいのだ。ごちゃごちゃと凝った名前で読み手の注意力を損なわせる愚を犯していない。本を読むのに慣れていない手合いにも(この名前、ちゃんと覚えてないといけないな……)という無駄な圧を与えない親切設計だ。主人公は、ヒロインが、ターゲットが。それだけ把握していればいいのだから、これこそ真の意味で読者に寄り添ったパルプ小説ではあるまいか。

リアルとフィクションの狭間で

確かに名前は大事だ。おれだって重要な人物には重厚そうな、凝った名前を付けたいと思う。パルプ小説は言ってしまえばキャラクター小説でもあるのだから。だが冷静に考えて欲しい。リアルならば知らない人への自己紹介は大事だ。しかしフィクションでは、どうだ?……こんな情報に溢れた時代だ。まだ何も知らない、現状どうでもいいヤツの名前なんか覚えてやろうという気になるのも難しいと思わないか?そう思うからこそ、おれは自分の作品でも可能な限り固有名詞となるものを排して一般的で、平易で読みやすい言葉を選んで物語の冒頭800文字を繰り出したつもりだし、その考えは今も変わらない。意味ありげな名前はダメだ。いや、ダメじゃないが冒頭で出すのはダメだと思う。どうでもいいヤツの名前なんてどうでもいいからだ。そして読者スクロールバーを止めてしまえば、お前の渾身のネーミングに込められた意味も由来も伏線さえも永遠に、どうでもいいままだ……。

パルプ小説とライトノベルの狭間で

勇者だろうが英雄だろうがスーパーヒーローだろうが、興味が無い時期ならば何の魅力にもなりはしない。しかし興味が湧いた後の登場人物ならば、冴えない冒険者どものくだらない会話の応酬さえも微笑ましいと、もっと続きを読みたいと思ってしまう。実務経験が無いと採用されないが、まずは採用されないと実務経験が積めない現実のデッドロックに酷似していると思わないだろうか。俺は、こいつを『一線』と呼びたい。『一線』を越えさえすればいいのだ。そうすればトンチキな名前でも、間延びしたやり取りさえも、全てがプラスに働くようになるのだ……。作者渾身の「魅力的なヒロイン」とやらの魅力を読者に提供できるのも、言ってしまえば『一線』を越えた後の話だと思っていいだろう。その『一線』を越える為の修行が……少ないチャンスで読者の心を掴むテクニックを、アティチュードを会得する為に我々が励んでいるのが逆噴射プラクティスなのだ。

Practise Everyday.....。

結論

Twitterには慧眼の持ち主がおられた。おれの言いたいことを140文字以内で簡潔に要約してくださっている方がいるので、その引用を以って記事の締めくくりとさせていただきたい。

(オワリ)

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