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ハントマン・ヴァーサス・マンハント

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逆噴射小説大賞に応募にしたパルプ小説と、その続きを思いつくまま書き殴っています。ヘッダー画像もそのうち自前で何とかしたいのですが予定は未定のままであります。
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2019年10月の記事一覧

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第101わ「天秤の均衡は再び」

(承前) 「……別にね?私もですね?ニンゲンの血を啜ることに対して罪悪感なんて毛頭ございませんけどね?」 相棒が何かを言い出そうとして、それを果たせずにいる。俺に何か要求があるのだろうか。それが何なのか皆目見当は付かないが。 「罪だの罰だの、知ったことではございませんけどもね?空気中に散るだけのダンナの体温をですよ?少しでも私に移してくれる間ぐらいはですね?ニンゲンの血を吸うのは我慢できそうな気がしなくもないんですよ、ええ」 相棒が今、さらりととんでもない譲歩を俺に提

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第100わ「氷解」

(承前) 相棒の両手が俺の首に触れた瞬間、それがヒントとなって答えが閃いた。ハントマンの二番目の好物、それは❝熱❞だろう。 「まぁ、正解でいいでしょう。ヒントを出し過ぎたかもしれませんが」 確かにな。相棒と暮らすようになってもうすぐ四日目になるが、いやに俺との距離が近かったり、接触が多かったのも納得がいく。銀玉鉄砲を取り上げる際に全身をまさぐったのも、本当は人間の体温が欲しかったのかもしれないな。 「……さり気なく聞き捨てならないことを言われたような気がしますけど無視

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第99わ「理不尽なスフィンクス」

(承前) 唐突にハントマンの……吸血鬼どもの二番目の好物が何かと訊かれても困る。一番は人間の血液で間違いあるまいが、そもそも二番も三番もあるのだろうか。相棒の口ぶりから察するに、どうもそういうことらしい。……赤ワインかな? 「外れです。ニンゲンの嗜好品を好む同胞も一定数いるのですが……嫌いだという者が大多数ですね」 吸血鬼といえば貴族、そこからワインなど嗜んでいるイメージがあったのだがアルコールを楽しむハントマンは少数派だったか。……トマトジュース! 「それも外れです

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第98わ「血戦前夜、そして当夜」

(承前) そして俺は今夜も雑居ビルの屋上で紅茶を啜り、サンドイッチをぱくつきながら日付が変わる瞬間を待っている。しかし今、俺の隣に相棒は居ない。何故ならば。 「はー……」 さっき俺が相棒の背中に乗り物めいて跨ったことへの意趣返しであろうか。座り込んだ俺に覆い被さるように背後から相棒に抱きすくめられているのだ。それも無言で。吸血鬼の体の冷たさには慣れることが出来ない。奪われた体温を取り戻すべく水筒の熱い紅茶を口に運ぶ頻度が今までになく高まっている。 「……」 日付が変

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第97わ「夜は静かに」

(承前) 俺の話は終わりだ。長々と引き留めて悪かった。リフレッシュとやらに戻って良いぞ。そう言って俺は相棒の背後に回り込んで背中に覆いかぶさった。世界的に有名な配管工が長年の相棒、スーパードラゴンに跨るように。 「つまり、こういうことですね?ダンナは私を一人にはしてくれない、と」 そういうことになる。そして俺は、お前の邪魔はしない。文句を言ったりもしない。好きなように暴れて、好きなだけ俺以外の誰かの血を吸えばいいのだ。 「ええ、私だって最初から血を吸わせてくださらない