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コミュ障で社会に適応していない私が今までの人生を振り返る壮大な自分史(14)

前回の記事で、「大阪の堂島米会所~」の問題の解答を書き忘れていましたので、書き足します。
問題の答えは「先物取引」で、将来の売買に対してあらかじめ数量や値段を約束して取引することです。値動きの激しい農作物や石油などで用いられます。

上位チームの発表

昼食を終えて会場に戻ると、予選ラウンドの結果が発表されます。
2日目の朝に行われた筆記試験、プレゼン、3日目の午前中に行われた早押しとチーム戦の点数が加算されて順位が決定します。上位18チームが次のラウンドに進めます。
私たちのチームは44チーム中30位台前半でした。そのため次のラウンドには進めません。

しかし、ここで大会は終わりではありません。
過去の大会の傾向から、敗者復活戦が行われることを予想していました。このことを多くのチームが理解しているためか、上位に入れなかったチームにも悲壮感はあまり感じませんでした。

上位18チームによって行われたラウンドは、6チームずつ3グループに分けての団体戦で上位1グループ(6チーム)が勝ち進めるというものです。
詳細は書きませんが、観客席でレベルの高い戦いを楽しむとともに、問題レベルや傾向の分析をしていました。

グループ戦のラウンドが終わり、小休止をはさんで舞台にスポットライトが当たる。
勝ち進んだ6チームが紹介され、次に進みそうな雰囲気になった。
もしかして今回の大会では敗者復活戦は存在しないのか?        一瞬不安になったが、6チームを紹介した後スクリーン上には敗者復活戦の文字が躍る。盛り上がる観客席。

私ははやる気持ちを抑えるために呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がった。

いよいよ敗者復活戦

敗者復活戦の内容は、2人でとんがり帽子を被って予選ラウンドの順位通りに列を作り、下位のチームから順に問題に解答していく。正解すればそのまま列の最後尾に並びなおし、間違えたら帽子を一つ脱いで列の最後尾に並びなおします。
2回誤答して帽子がなくなったら失格になります。
例年の傾向通り、知識の差が出やすいルールなので、チャンスがあると感じていました。
しかし、問題はどこかのチームが正解するまで続くため、運悪く難問に当たってしまったら答えられません。また、直前のチームに正解されると、出題されてからすぐに答えなくてはならないため、シンキングタイムが短くなります。ポーカーで言うUTG(アンダー・ザ・ガン)になってしまい、ポジション不利を受けます。

敗者復活を勝ち抜けることができるのはわずか2チームのみ。とんがり帽子の数が同じだった場合、予選ラウンドでの順位が上のチームが勝ち抜けとなります。

1問目と2問目は比較的簡単な問題で、すぐに正解が出ました。まだ解答順は列の前には10チームほどいます。
3問目。「株式や債券などの取引において、買いたい人と売りたい人の条件が一致して取引が成立した状態のことを、特に漢字2文字で何というでしょう?」

見せ場が訪れる

何だこれ。確信の持てる答えが出ません。その間にも誤答が続き、刻一刻と解答権が近づいてきます。
他チームの誤答をヒントに、これではないかと思う答えは浮かんだのですが、自信はありません。答えられるチームはなかなか現れず、とうとう自分の2つ前のチームに解答権が移りました。
「やくてい」
やや自身をもった解答をします。
惜しい、もう一回。
司会に促され、困惑した表情の解答者。もう一度同じ解答を繰り返します。
この瞬間、自分の想定解が確信に変わりました。

しかし、自分たちの解答権に至るまでもう1チームあります。
ここで解答を出されてしまえば、問読み直後に答えなくてはいけない不利なポジションに立たされます。

「確定」

よし!この瞬間、我々の正解が正しく「確定」しました。

はやる気持ちを抑えて、ステージ中央の解答用マイクに向かって歩きます。

やくじょう

正解の効果音が流れ、やや大きめの拍手に包まれます。
よっしゃ嬉しい、という感情を押し殺しながら列の後ろに戻ります。
勢いがついたなと思うと同時に、緊張感がさらに高まりました。

約定と書いてやくじょうと読みます。やくていと答えたチームはさぞ悔しかっただろうなと当時の映像を見返して改めて思いました。

その後、自分には分からない問題が何問か出ましたが、運よく自分の番に回ってくることはありませんでした。

次に回ってきた問題にも正解し、精神的にも少し余裕が出てきました。この後、かなりの難問が出題されなかなか正答が出ません。2個の帽子を失い、失格になるチームも出始めます。
このまま不正解が続き自分の所まで回ってきたらどうしようか不安になりますが、運の良いことに数チーム前で正解が出てほっとします。

次に私たちのチームに回ってきたのは、証券会社の業務に関する問題で、問題を聞いて2チーム目という不利なポジションでしたが、対策していたため答えることができました。
その次が最終問題。この時点で十数チームが残っていることに一抹の不安を感じました。
その不安は見事的中し、最終問題終了時点でまだ10チームほどがステージに残っていました。
帽子を2つ残しているチームが前に呼ばれたので出ていくと、私たちのほかにあと2チーム残っていました。

予選順位で決まるため、頼むから次に進ませてくれと心の中で祈りました。
しかし結果は残酷なもので、自分たち以外の2チームが次のラウンドに進むことが聞かされました。
その瞬間、優勝の可能性が断ち切られたことで涙が溢れてきました。泣きながらも心の中はなぜか冷静で、司会の人にコメントを求められたときは気の利いたコメントを考える余裕がありました。

「悔しいですがここまでたどり着けたので、○高校に入ってよかった」

正直なところ、渋幕や早慶、灘といったクイズ研究会と違い、自分の出身校ではクイズのサポートなんてありませんでした。正式な部活動ではないため、全国大会に出場する交通費すら自腹です。それでも、クイズ界では無名の高校にいながらここまでたどり着けたことを誇示したかったのです。

当時は、もっと問題が用意されていれば勝ち抜けられたのにとやり切れない思いを抱いていました。しかし当時の映像を改めてみると、自分の分からない問題は結構ありました。運よくそういった問題が回ってこなかったため帽子を2つ残せましたが、めぐりあわせが悪ければ帽子を2つとも失っていてもおかしくない状況であり、むしろ最後の3チームに残って見せ場を作れたことが奇跡だったのかもしれません。

客席に戻ってからは、ステージ上で繰り広げられるレベルの高い戦いを楽しむ余裕もありました。

ちなみに、同室だった広島のチームは2位に入りました。
大会が終わった後、カープのグッズを送ってくれたことは良い思い出です。
広島県代表のお二方にはこの場を借りてお礼申し上げます。

今回でようやくエコノミクス甲子園編が終わりました。運が良かっただけですが、敗者復活で帽子を二つ残したので、エコノミクス甲子園全国大会9位を名乗っても問題ないと思います。これは、灘、早稲田、栄東よりも上の順位ということになるため、自分の出身校からすれば奇跡中の奇跡です。
クイズ研究会もなく、早押しボタンやクイズ技術の蓄積もない中でこれだけの活躍ができたのですから出来過ぎと言ってもよいでしょう。

後日談にはなりますが、年度が替わってから学校内にエコノミクス甲子園の関係者の方が取材みたいな感じで訪れたらしいです。そして、誰も答えられる人がいなかったとか……。

ここまで詳細に書いてしまったため、私が誰なのか特定できた方もいるかもしれません。もしどこかで私と接点を持ったことがある人がいれば、ぜひコメントを送ってください。可能な限り近況を報告させていただきたいと思います。

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