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ニューヨーカーとクレーム文化

ニューヨークに来る前から、アメリカ人は何かとクレームを言うイメージがあった。…実際にもそうだ。”Customer is always right."というフレーズもある。何でも返品できるアメリカ社会だが、アマゾンの返品システム然りだ。サイズが合わず返品した時、返品理由を「間違って購入した」を選んだら送料は自己負担となってしまったが、「何かしらの欠陥があった」を選んで、ちょろっとコメントを書けば送料が相手負担になる。…つまり、(自分の非をさておいて)言った者勝ち、ということだ。

先日、ニューヨーカーの友達と話をしていて衝撃の事実を聞いた。「ニューヨーカーは高いレストランであればあるほど、クレームをする」ということだ。…むしろ、日本人の私からすると、高いお店であればあるほど、そのお店の味を謹んで味わう(大好きな味でないとしても、こういう味付けもあるのだなあというような)スタンスでいたので、文字通り衝撃的だった。

友人の論理はこうだ。「安いお店は安いんだから何も文句を言えない。でも、高級なレストランは高いお金を払わないといけない。チップも高額になる。だからこそ、払う金額に見合う満足を提供してもらうべき。だから気に入らなければ、はっきり伝える。」「サーブをする人間としても、はっきり言ってもらった方がありがたいはず。何も言わずに不満を持ったまま、結局チップが少ないとかわいそう。こちらの気持ちを伝えて、彼らに挽回のチャンスを与えて、最後にお互いハッピーな方がいい。」つまり、建設的・合理的なコミュニケーションの一環として、クレームをするということだ。…実際、そういう時は、周りの雰囲気を壊すような感じで物申すのではなく、あくまでサーバーの心証を害さないよう、ソフトに表現するのだそうだ。

例えば、頼んだカクテルが全く口に合わず、全然進まない場合、ちゃんとしたサーバーであれば、お客さんに飲み物のことを聞いてくるものだし、こちらから申し出て、別のに替えてもらうのはアリだ、そうだ。…素人の私は聞いた。「それで2杯分チャージされたりしないの??」友人の答えは「確実にとは言えないけれども、普通は1杯分しか請求されない」ということだった。友人は、カクテルに限らず、「50ドルの(=とても高額な)魚料理が口に合わなかったら、それは確実に言う」そうだ。…素人の私でもできそうなこととすると、スープの温かさ、塩加減、といったあたりだろうか。「塩加減は普通、最初に言うべきだと思うけど、…そうだね、言ってみたらいいよ。」とさらっとアドバイスされた。(笑)

ちなみにその友人はカリフォルニアにも住んでいたので、カリフォルニアの場合はどうかと訊いてみた。すると、カリフォルニアだと控えめになるかな、とのことだった。「ニューヨークだと沢山の、様々な人たちの中の1人になっちゃうから、口に出さないと自分の思いは埋もれちゃうからね」…たしかに。…深い。。。

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