見出し画像

ニューヨークで太極拳(Tai-chi)

私は日本にいた時には太極拳をやっていた。旅番組で見た、中国の公園で周りの喧騒に流されず、悠久の風が流れているかのような人々のオーラ。私もあのオーラをまといたいと。…そうしてニューヨークでも太極拳のクラスを探した。以下、私がパンデミック前まで通っていた太極拳をご紹介したい。

私の所属する太極拳の団体はNPO法人である。先生たちはボランティアで教えており、月謝は団体が所有するスタジオの家賃や光熱費に充てられている。その月謝も定額(50ドル/月)ではあるが、NPO法人への「寄付」という形をとるため税金対策にもなる(アメリカには多額の寄付をすると控除される仕組みがある)。ボランティアベースとはいえ、先生たちのレベルはとても高い(先生は白人のアメリカ人が多い)。カナダで中国系の先生が50年ほど前に創設し、世界各地に支部があり、技術向上の講習会も定期的にある。楽しみベースではあるが、基本的には真剣に太極拳に取り組む団体だ。

月謝を払えば、私たちは週に何回来てもよい。日によっては午前・午後・夕方のチョイスがあり、参加しやすい形態だ。クラスは初心者クラスと経験者クラスの2つ。初心者クラスでは、太極拳の流れるような動きを少しずつ教えてくれ、3か月でトータル108の動きを完了するクラス。経験者クラスでは、スクワットのような筋トレ・型のような基礎練習から始め、そうした型が108の動きの中でどう生かされているかなどを解説してくれるクラス。どちらも面白い。初心者クラスを1通りやっただけでは動きも順序も覚えられないのが普通で、初心者クラスだけずっと通う人もいる。経験者クラスでは、休憩(コーヒータイム)の延長で、太極拳・中国文化の話で終わることもあった。面白かったのが、受講生の一人が先生にした質問だ。「先生によっては、教えることが全く正反対のことがある。どっちに従えばいいのか?」先生はこう答えた。「そのクラスにいる先生の言っていることに従うのが正しい。説明の角度が違うだけで、本質的には同じことを言っている。それぞれの先生の言うようにやっていればだんだんと見えてくるものがある。先生を敬いなさい」と。…東洋的というか、日本の剣道や柔道、茶道などの教えと重なるなあ、と思った。そんな言葉をアメリカ人の先生から聞いてとても驚き、感動した。

スタジオにも冒頭の写真のような、中国的思想を説明した額や、孔子(?)か仏の像とお供えの水が置いてあり、型だけでなくその背景にある思想もセットで理解していくことが望まれているようだ。

生徒はシニア世代が多い。医師からリハビリとして勧められてきた人、友達の紹介、公園でやっているのを見て始めた人など様々だ。私にとってニューヨーカーと触れられる貴重な場。また皆と一緒に太極拳をやりたいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?